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【旧版】ストーカー竜娘と復讐鬼の王子様  作者: 逢月 悠希
第2章 ストーカー、始めました。
17/69

17.ストーカー、王子様と会話する。

(何はともあれ、この人達に許可されてるのは大きいよね!!)


 情報屋とロゼッタ間で、ある種の共闘契約が結ばれてしまった――この契約における被害者ラザラスの同意はないままで。


「良いのかなぁ……」


 比較的この手の感覚がまともだったクィールは「置いていかれてます」と言わんばかりの、困惑全開な表情を浮かべている。

 普通の感覚なら「常に背後に誰かがいる」などという状況は地獄である。しかし、残念ながら最初から全てがおかしいロゼッタはともかく、『ラザラスのプライバシー』よりも『情報屋のプライド』を優先してしまったエマを止めてくれる人はいなかった。クィールは事実上の情報屋トップであるエマの決定に逆らえないのである。あとは彼女の中で悪魔が「面白いからほっとこうぜ!」と主張しているためでもある。


「……」


「おっ、ラザラスが起きた」


(ラズさん!!!!)


 ここで漸くラザラスが意識を取り戻したらしく、静かに目を開いた。何も言わず、ぼんやりと天井を眺めている彼を見て思うところがあったらしい。エマは彼の眼前でひらひらと手を振ってみせる。それに対しラザラスは少し反応が遅れたものの、気を悪くすることなくクスリと笑った。


「大丈夫ですよ、見えてはいます。眼鏡無いとちょっとしんどいレベルですけれど」


「ああ、良かった……って、良くはないな。分かってると思うが、片目腫れててしばらく使えないからな。希少な魔力は傷の回復に総動員されてるみたいだから、しばらくは【視力強化】使えないし」


「目が悪いのは元々ですから、お気になさらず……すみません、ご迷惑をお掛けしました」


 ラザラスは身体を起こし、ベッドに腰掛けた状態できょろきょろと周囲を見回している。殴られたのは顔と胸元辺りだったため、この手の動作には特に問題がないようだ。ただ、明らかに視界が悪そうである。


(よし……【感覚共有】!)


 当たり前のようにロゼッタはラザラスに魔法を使用する。

 余程魔力が足りていないようで、感覚を繋げたロゼッタの魔力まで吸われているのだが、彼女の魔力は底なし沼状態なので特に問題は無かった。どちらかというと、共有している視界の方に問題があった。


(うわぁ……ぼやけまくってる上に、何か明らかに視界が狭いんだけど……)


 視界がぼやけてしまうのはまだ良いとして、視野がかなり欠けてしまっている。ラザラスが過去に受けたという暴行により眼球が損傷し、視野狭窄を起こしているのだろう。

 両目が揃えばまだ良いのかもしれないが、今の時点では五分の一くらいしか見えていない。そして、その五分の一の視界も完全には程遠いのである。


(付与掛けまくったらまともになるかな……?)


 物は試しだとロゼッタは感覚共有を解除し、上級付与魔法の【視力超強化】と【空間把握】をラザラスに掛けてみた。


「あ……これは、例の如く守護神さんでしょうか。感覚的に、付与掛けてくれたんですよね? 散々【肉体強化】使って頂いたんで、それだけは分かります」


(! 効いてない!!)


 嬉しそうにしてくれているのだが、視界の悪さは変わらないらしい。付与魔法が掛かったことが分かっている辺り、ロゼッタが飛ばす場所を間違えたわけでは無さそうだ。


「守護神、ねぇ……コイツは身体が弱ると魔力が全部治療に総動員される体質なんだ。どうも外から魔力が入ってきても残念ながら『ご飯』にされるみたいだな。まあ、怪我の治療には役立ったと思うぞ」


(ご飯になっちゃうかぁ……まあ、それはそれで良いんですけども)


 それならそれで、「付与魔法を手当たり次第ラザラスにぶつけてしまえば彼の回復を早めることが出来るのではないか」と気付いたロゼッタは、上級付与魔法の練習と称して思いついたものを片っ端からラザラスにぶつけていくことにした。


「ラズ君? 調子はどう?」


「めっちゃ付与魔法が来てる」


「あー、うん……大丈夫そうだ。良かった」


「……ありがとう、クィール。ごめん、迷惑掛けたな」


「いや、ラズ君が無事なら良いよ。そんなことより君……プライバシーが死滅する危機に直面してるよ」


 誰も何も言わなかったのだが、ここで漸くクィールの口から『ロゼッタがずっと張り付いていて、今後も張り付き続けることになったから頑張ってね』という(プライバシーの)死刑宣告が発された。


「え……」


 ラザラスは驚き、目を丸くする。

 そして少し俯き、どこか寂しそうに笑みを浮かべた。


「守護神さん……ロゼッタ、だったか。そうか」


(あああああああ!!! これ絶対『違う誰かだったら良いな』って思われてた奴じゃんうわあああああああ!!!!)


 ラザラスの境遇を思えば、無理もない。

 何かが憑いていることを知った時、彼は「死んだ家族の誰かが自分を守ってくれているのではないか?」と考えてしまったのだろう。そんな彼に「死んですらない他人の竜娘がずっとストーキングしていました」という現実を突き付けるのは、いくらなんでも残酷過ぎたのだ。


(ぐう……っ、ま、まだ家族だったら良いんだけども! ジュリーさんだったらどうしよう、死んだ元カノ強すぎるって!!)


 ついでに「自分ではない誰かであることを望まれていた」ことに気付いてしまったロゼッタの心もかなり抉られた。こちらに関しては自業自得なところもあるので仕方がない。

 そしてジュリー氏は彼女の中で完全に死者にされてしまっていた。失礼にも程がある。


「そっかそっか、ありがとな……でも、色々物騒なところ連れ回してごめんな。辛くなかったか?」


(それに関しては全く問題ないですね)


「あ、そうか……アンジェが反応してたのは、君だったのか。悪い感情は無さそうって言ってたな……つまり、嫌われてはいないのか。良かった」


(むしろ大好きなんですけど!?)


「ははっ、君から殺意の波動を感じたら、流石に悲しくなるからな」


(殺意の波動はあなたの過去の関係者達にぶっ飛ばしましたのでご安心下さい!!)


 守護神の正体を知った瞬間、明らかにショックを受けていたラザラスであったが、別にロゼッタが嫌だというわけでは無かったらしい。これはこれで楽しそうである。



(そういえば、ラズさんテレパシーの受信は出来るんだっけ。送ってもただのご飯になるかもしれないけど……)


 ご飯になるのも覚悟の上で、ロゼッタはラザラスにテレパシーを送ってみることにした。やはり吸収されてしまうようで、通常のテレパシーに比べると魔力の消費は激しい。しかし、ロゼッタの場合は「使う魔力量を上げて物理で流す」という力技が可能なので何も問題は無かった。


『ロゼですよ。こんばんは』


 とりあえず、短文を送ってみる。届いた感覚はあったが、ご飯になるかもしれない。だが、ラザラスは嬉しそうに「おおっ!」と声を漏らした。


「テレパシーはちゃんと受け取れるな! 良かった、これでアンジェと会話不能になる事態は避けられる!」


『違う女の話しないで下さい!!』


「なんでだよ。そもそもアンジェはただの仕事仲間だよ。俺のこと見てたんだから、君も分かってるだろ?」


 いけない、うっかり嫉妬心を剥き出しにしてしまった。嫉妬心剥き出しの女は嫌われるって聞いたことある。話を変えよう。

 何故か影の中で姿勢を正し、ロゼッタは心の中で咳払いをしてからテレパシーを送る。


『わたし、リアンさんのファンになります。敬語ラズさん格好良かったです』


「え……っ、嬉しいな。そう言われるのは慣れていないから、素直に嬉しい。ありがとな」


『ラズさん、歌わないんですか?』


「いやいや、喋りだけでも素人丸出しなのに、歌とか絶対浮くから嫌だよ。大体、アンジェの歌唱に着いていけるのはジュ……おっと、アリスだけだって」


 ラザラスは大人しい印象が強かったのだが、話し掛けると意外と喋ってくれる人だったらしい。

 彼の場合は隠すべき事柄が少なくなったことも理由の一つだろうが、心から会話を楽しんでいる様子である。恐らく、嘘偽りなく色々な事を話せる存在がそう多くは無いのだろう。


……そんなことよりも、ロゼッタは大変なことに気が付いてしまった。


(今、明らかに『ジュリー』って言いかけたよね!! 元カノ!!!)


 うっかりテレパシーで送信しかけたが、嫉妬深い女は嫌われてしまうかもしれないので理性的になって心の中で叫ぶだけに留めた。しかし、彼女の情報は全力で仕入れておきたい。元カノ情報は得ておかないと後々しんどい。

 そう思い、ロゼッタがテレパシーを送ろうと――した瞬間に、ドアが勢いよく開いてユウが飛び込んできた。


「さっきからラズ君なんで楽しそうなの!?」


「あ、うるさかったですか、すみません」


 現れたユウに、ラザラスはペコリと頭を下げる。

 その何だかおかしな反応に、近くにいたクィールとエマが勢いよく吹き出した。この変な状況を見ておきながら何も言わない彼女らも、ある意味『共犯』である。


「えー……何でそうなるんだよ、おかしいだろ……」


 早々に目を覚まさせないと、色んな意味でラザラスがやばい。

 ユウはどうにかこうにか、ロゼッタの存在がどれだけ危ないかをオブラートに包んでラザラスに理解させようとする。


「いや……だからな、そうじゃねーんだよ……俺が、言いたいのは……!」


「素のユウさんだ。珍しいですね」


 言うまでもないが、ラザラスの感覚も色々と麻痺していたようである。ここでユウの我慢の限界が来てしまった。


「ちげーよ!! お前ちゃんと状況分かってんのか!? 相手は君を延々ストーキングしてた『ド変態』だからな!?!?」


オブラートは爆発四散したようだ。

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