機械仕掛けの天使が飛翔する瞬間の一部考察
私たちに感情はない
あるのは作り物の心と翼
今は飛べるのかすらわからない
けど
飛ぶしか道はない
この青空を駆ける自分より
海の水面に咲く一輪の花となる自分の方が
容易に想像できる
例え作り物でも
心は心
翼は翼
私は私
動くはず。
ただ正常に動くかどうかの問題
今まで殺してきた自分を
背負うのか
背を向けるのか
全ては私
私の答え
この空からもらったのは
嬉しさ、楽しさ
苦しさ、悔しさ
それだけじゃない
私の全てをこの空に教えてもらった
科学者よりも
大切なことを
私は作り物
玩具なのに希望
私に向けられた視線は
鋭かった
痛かった
怖かった
死にたくなった
私には希望なんてないのに
わかってもらえない
誰にも理解されない
そう
私は作り物
玩具
親が子供の玩具を捨てる時に
思うことがあるのだ
ただそれが私に向けられないだけで
私は欲しかった
例え作り物でも
愛情を受けたかった
温もりを感じたかった
それだけなのに
落ちていく私を
哀れむものはいない
私は花となり
藻屑となるのだ
この海で
機能停止を待つのだ
サルベージされることも無い
あるのは
いや、あってしまった
心
心さえなければどれたげ良かったことか
ただ、機能停止を待つだけで良かった
動くかわからない右手を届かない空へ
向けてしまうほど
悔しい
もしも、叶うことがあるとするなら
もう一度
もう一度
この私を見捨てたこの空を
自由に飛んでみたい
誰にも縛られず
誰にも邪魔されず
風が強く私を阻むけど
そんなもので
私を止められはしない
私が止まるのは
飛び続けて壊れ
また堕ちる時
結末は同じ
それでも
もう一度この憎たらしいほど澄んだ青空を
私で汚したい
こんな皮肉が叶うわけない
そんなことはとっくに知ってる
だけど、飛び、駆けたい
私の翼がこの空を横切って、あの人の心まで横切るまで
私の生き様を見せつける
その時まで
私は生きたかった
私の心や体は作り物でも
私という存在は
私だけだから
...
私は誰
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