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第86話 影討

 どうすればクリープマンティスを地上に降ろすことが出来るのでしょうか……いや、その前に全身を見えるようにしなければ……、今見えているのは泥のついた脚、しかしこれ以上空中を飛ばれていると泥が乾いてまた姿が見えなくなってしまうかもしれません。何とか体中に泥をつけることが出来れば戦いはこちらに有利に動くはず……




 ——そうだ!



「メア、ルル、少し時間を稼いで下さい」


「分かりました」


「キュウ!」


 メアとルルが飛び回るクリープマンティスの注意を引いてくれている間に魔法のイメージを固めていきます。

 今まで使ったことはありませんが、泥沼を使ったおかげで辺りには泥が沢山あります。初めてでも何とか想像通りの魔法が使えるはずです。普段使う石壁と似た魔法、辺りにある泥を使って壁を創り出そうと思います。クリープマンティスがそれに激突してくれれば——


 クリープマンティスがメアとルルを狙って攻撃するために地上近くを飛んで来た時を狙います。



「【泥壁】」


 メアとルルがクリープマンティスの攻撃に備えあと少しで互いが激突するという時を見計らって両者の間に十メートル程の泥で出来た壁を創り出しました。メアとルルは泥壁が発現したと同時に私の方へと移動してきます。


 これほどの大きさならばクリープマンティスにも避けようがないでしょう。



「やった!」


 すると狙い通りに泥で出来た壁を通ってクリープマンティスが現れました。

 私たちが足場としていた岩を壊すように鎌で両断しようとしたようですが壁は泥、破壊には至らずに飛んでいる勢いのまま泥に塗れて先ほどまで脚しか見えなかった体全体が見えるようになりました。


「やりましたねミレイ」


「ええ、これなら……ん?」


「キュイ?」


 意図していなかったのですが飛んでいたクリープマンティスは何故かフラフラとし始めて地面に降りてしまいました。羽に泥がついたことが原因なのでしょうか?



「ギロロロロ!」


 全身に泥を被ったことを怒っているのか大きな声を上げたクリープマンティスは体を振るい泥を落とそうとしていますが私の魔力で創った魔法なので自然の泥より粘度があり簡単には落ちません。背中の羽は泥まみれで上手く動かすことも出来ないようです。



「これで敵の長所はなくなりましたね」


「こんなに上手くいくとは思いませんでしたが」


「あとは仕留めるだけですね」


「キュイ!」


 未だ泥を払おうと暴れているクリープマンティスを尻目に話していると泥が取ることをようやく諦めたのかクリープマンティスはそのままの状態で辺りの木々や岩を破壊してこちらに放ってきました。すぐさま石壁を創り出して攻撃を防ぎますがクリープマンティスが直ぐに近づいて来て石壁ごと真横に斬り裂きました。

 しかしこれも狙い通り、攻撃を防ぐ役割もありますが壊された石壁で足場が増えました。



「姿が見えればこちらのものです」


 相手の長所であった擬態と飛行の能力を防ぐことが出来たのです。それさえなくなれば今までに戦ってきた魔物と大差ありません。

 メアとルルと連携してクリープマンティスに攻撃を加えていきます。

 心なしか先ほどまでより動きが鈍くなっているようです。どうやら泥は予想外に効果を発揮してくれています。


 動きの鈍くなったクリープマンティスは私たちの攻撃によって身体中に傷が増えていきます。硬い攻殻も幾度となく繰り返される攻撃によってその強度の限界を迎えようとしているようです。脚ももう一本奪いクリープマンティスは満身創痍。


 壊された石壁を足場に大きく跳躍します。

 メアとルルが気を引いてくれているおかげでクリープマンティスは未だ空中にいる私に気付いてはいません。槍を構えて頭から降下していきます。狙いは泥がついたことで上手く羽をしまうことの出来ていない背中、直前になってクリープマンティスは私の存在に気付いたようですがもはや手遅れです。

 槍は私の目的通りに柔らかい背を突き抜け硬い攻殻の腹部を突き抜けました。



「ギャロロロ!」


 苦しそうな声を上げるクリープマンティス、身をよじらせて暴れているので距離をおきます。


「致命傷を与えたと思うのですが」


「ええかなりの、次は私たちの番ですよルル」


「キュイ」


 メアがそう言うとルルは任せとけと胸を叩いてクリープマンティスに駆けて行きました。ルルは風魔法と武装化魔法を使い確実にダメージを与えて行き、メアは鎌による攻撃を楽々と避けながら攻殻の隙間を狙って攻撃を繰り返しています。クリープマンティスは先ほどの私の攻撃によってさらに動きが鈍くなっているので速度が持ち味のメアとルルにその攻撃が当たることはありません。


 するとルルが私が落とした方の脚をもう一本落としました。それによってバランスを崩したクリープマンティスは鎌でバランスを取ろうとして鎌による攻防一体の攻撃が止みました。メアはその時を狙っていたかのようにクリープマンティスの首元へと近付き、攻殻の隙間をそうように短剣を振るい、その大きな頭部を撥ね飛ばしました。


 やっと終わった。


 そう思ったのですがクリープマンティスは頭部を失ったにも関わらず未だに鎌を振り回して暴れています。




「まだ倒れないのですか!?」


「……いえ、もう終わりです。首を失ったことにまだ気づいていないのでしょう」


 メアの言う通り次第に動きが鈍くなり大きな音を立てて倒れ、動かなくなりました。


「キュイーン!」


 ルルがクリープマンティスの上に乗って勝利の雄叫びをあげて小躍りをしています。その姿を見てやっと体の力を抜くことが出来ました。



「——!?」


 すると頭部を失い倒れていたクリープマンティスの体がビクッと大きく動いて立ち上がりました。抜いていた力を槍に込めて構えます。背中に乗っていたルルは動くとは思っていなかったのでしょう、「キュイ!?」っと声をあげてコロコロと転がり泥沼にベチャッと落ちてしまいました。

 しかしクリープマンティスの動きはそこまでで再びゆっくりと倒れました。


 少しの間、槍を構えたままで警戒していましてが今度こそもう動かないようです。ルルは泥だらけになったことを怒っているようでクリープマンティスの亡骸を小さな足で蹴っています。



「……何とか倒すことが出来ましたね」


「ええ、強敵でした。ミレイの魔法がなければどうなっていたことか……それに髪が……」


「ああ、髪のことなら構いません。そろそろ切ろうと思っていたところだったので丁度良かったです。魔物に切られるとは思っていませんでした」


 それにしても、もう少し早く泥壁を使っていればこんなに手こずることはなかったかもしれません。泥壁を使ったのは初めてでしたが練習していた泥沼を使ったのでそれをもっと早く利用することは出来たはずです。応用が利くようにしないと……まだまだ戦闘の経験が足りませんね。



「……キュイ」


 先ほどまで嬉しそうにしていたルルは泥だらけの姿でとぼとぼと肩を落として戻って来ました。


「泥だらけになってしまいましたね」


「油断しては駄目ですよルル、普段の貴方ならすぐに反応出来たはず、強敵を倒して嬉しいのは分かりますが油断は死を招きます」


「……キュイ」


 メアはルルに注意をしました。ルルも油断していたと反省しているのか頷いています。このままでは可哀想なので魔法で体の泥を綺麗にしてあげます。


「でも良く頑張ってくれましたねルル、今回も大活躍でしたよ」


「キュイ!」


 私がそう言うとルルは嬉しそうに声を上げました。


「目的の魔物も討伐することが出来たことですしそろそろ帰りましょうか? 兄様たちも心配しているでしょうから」


「ええ、そうしましょう。それにしても今回の戦いでこの辺りは荒れてしまいましたね」


「そうですね。地面は元に戻しておきましょうか、動物たちが沼にはまると大変ですから」


 クリープマンティスを次元収納にしまい泥沼を元の状態に戻していきます。


「さてと、街に帰りましょう」


 今回の戦いは中々厳しいものでしたがいい経験になりました。しかしこれで商人の方が被害に遭うこともないでしょう。

 これからの魔物との戦いは厳しいものになりそうですね。クリープマンティスはCランクの魔物、さらに上を目指すならばもっと強くならなければ。




投稿遅れて申し訳ありません。忙しいのでこれからの投稿の頻度は落ちると思いますm(_ _)m

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