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第76話 商都ロンドール

「……立派な門ですね」


 圧倒的な大きさの外壁と鉄製の大きな門、それに落とし格子もあります。それを見てつい言葉が出てしまいました。

 重厚な外壁にこの立派な門、まさに難攻不落の街ですね。


「そうでしょう。我々自慢の門なのです」


 するとそれを聞かれたようで誰かが私の呟きに答えました。声のした方を見ると門兵の姿があります。ロンドールに入るために並んでいたのですがどうやら私たちの番がやって来たようですね。


「今日はどのような用でこちらに?」


 兵士は私たちがロンドールに来た理由を尋ねてきます。


「エデンスより参りました冒険者です。こちらで仕事をしようと思いまして」


 兄様がロンドールに来た理由を説明すると、冒険者証を見せました。それに習って私も冒険者証を見せます。それを見た兵士の方は納得したように頷いて口を開きました。


「確認しました。ようこそロンドールへ。どうぞお通り下さい」


 礼儀正しく街への入ることを許可してくれる門兵、どこかお客さんを相手する商売人のようにも感じます。商王国ならではなのでしょうか。


 商王国は帝国やエルドラン王国と比べて兵士の練度が低いと言われていますが、こういった点では優れているのかもしれません。

 どちらが良いのかは判断出来ないですね。


 街の中へと進んで行くと道は左右に広がっています。中心街への続く大きな道は少し歩いたらあるみたいです。戦争になった場合に敵兵が街に侵入した場合を想定して城に直接来させないような作りになっているようです。


「さてと、先ずは良さそうな宿を見つけるとしようか」


「そうですね。エデンスの時のように良い宿があれば良いのですが」


 馬車は収納したのでユキたちを預けることの出来る場所がある宿を探さないと、幸いこれだけ大きな街なので宿屋はたくさんあるようですが人が多いので良い宿があればいいのですが、とりあえずどのような宿が良いかを聞いてみることにします。


「美味しい魚料理が出る宿が良いにゃ」


「俺はよく寝れそうな場所なら」


 ネイナさんは魚料理が出る宿、マクスウェルさんはよく寝れるところ、兄様はどこでも構わないそうです。メアはどうでしょうか?


「メアは何か希望はありませんか?」


「私は、安全が確保されていればどこでも構いません」


 ということは人通りが全くない場所を除けば大丈夫ですね。あとはこれだけ人がいるので良い宿が空いていればいいのですが。



「中々見つからないな」


「そうですね」


 やはりめぼしい宿は埋まってしまっているようです。馬小屋が用意されている宿が見つかりません。


「さてどうしたもんかね」


「直ぐに見つかると思ったがな」


 今は広場で休憩しています。

 ここにも屋台はあるので昼ご飯をここで食べる予定、美味しそうな料理を売っている屋台を見つけたので並んでいます。

 早く宿が見つかるといいのですが。思いもしないところで足止めをくらってしまいました。直ぐにギルドに行こうと思っていたのですが、


「おや、どうしたのかねお嬢ちゃん」


 大きく溜息をつくとそれが気になったのか後ろに並んでいたお爺さんが声をかけてくれました。白髪の優しそうなお爺さんです。


「今日この街にやって来たのですが馬小屋がある宿が中々見つからなくて」


「そうか、近々建国祭があるからな。観光客や冒険者たち、それに商人も集まって来ておる」


 お爺さんがいつもよりも人が多いと教えてくれました。建国祭が近いのですか、それなら他国からも人が来るでしょうから、良さそうな宿が見つからないのも無理はないのかもしれません。


「やっぱり、宿を見つけるのは難しいですかね?」


「そうじゃな……儂の家に泊まってはどうじゃろう?」


「お爺さんの家に?」


 私たちは五人もいますし、馬も四頭いるので普通の家に私たちが泊まるのは無理ではないでしょうか。


「ああ、儂の家は少し前まで宿屋をやっていてな、部屋は十分にあるし馬小屋もある。大きな通りに面している訳ではないが、人通りもあるから変な奴らも集まらんしな」


 普通の民家ではなかったのですね。

 確かにそれなら泊まることが出来るかもしれませんが、


「ですがご迷惑では?」


「いやいや、長年宿屋をやっておったから最近張り合いがなくてな、お嬢ちゃんたちが来てくれると嬉しい」


「どうですか兄様」


「ああ、お世話になろう。宿代はしっかり払わせていただきます。宜しくお願いします」


 思わぬところで宿が決まりました。お爺さんは最近美味しいと話題のこの屋台の料理をお婆さんと食べるためにたまたま買いに来ていたそうです。運が良かったです。


「ここじゃ」


 大きな通りから一本横道に入った場所にお爺さんの家はありました。立派な宿ですね。馬小屋もしっかりしているようです。

 ユキたちを馬小屋に連れて行き背を撫でてしっかりと休んでねと声をかけます。

 あとでユキたちの食事を買ってこないと、流石に馬用の餌は用意されていないようです。


「婆さん、昼食を買ってきたぞ。それと宿に泊まるお客さんを連れて来た」


 お爺さんが家の中に入ると奥さんに声をかけました。すると奥から優しそうな顔をしたお婆さんが返事をして出て来ました。

 そして私たちを見て不思議そうな顔をしました。


「お帰りなさい。ヨハンうちは宿屋をやめたじゃないの、ボケたのかい?」


 私たちに頭をさげるとお爺さんを心配そうに見て言いました。するとお爺さんはショックを受けたような顔をして直ぐに否定しました。


「ボケとらんわ。宿が取れなくて困っとったから連れて来たんじゃ」


「そうなんですか、驚きましたよ。ついにこの時が来てしまったのかと覚悟してしまいました。そういう事ならどうぞ、部屋の掃除もいつもしているので綺麗ですから」


「ありがとうございます。お世話になります。食事などは自分たちで用意しますし、私たちに何かお手伝いできる事があれば何でも言ってください」


 兄様がそう言うと嬉しそうな顔をしたお婆さん。最近張り合いがなかったから嬉しいと言っています。お爺さんと同じ気持ちだったようですね。


 二人とも久しぶりの客だからと張り切っているようです。お爺さんは食材があったかと厨房に行きました。昔は料理人として厨房に立っていたそうです。

 お婆さんは私たちを二階に案内してくれて好きな部屋を使って構わないと言ってくれました。


 一人部屋なんて豪勢な、お婆さんは宿代は別にいらないと言ってくれています。兄様がお金は払わせてもらうからと言っていますがお婆さんもなかなか折れませんが流石にその言葉に甘えるわけにはいきません。

 あとで話し合って決めようという事になりした。


「お爺さんとお婆さんはとても優しそうですがもうご高齢なので、私が役に立ちそうな仕事が沢山ありそうですね」


 メアは自分に沢山の仕事がありそうだと張り切っています。本職はメイドなので血が騒いでいるようです。早速お婆さんと色々と話を始めました。



 さてと、宿も決まったのでギルドに向かいましょうか、ついでに食材やユキたちの食べ物などを買ってきましょう。


「お婆さん、冒険者ギルドは何処にありますかね?」


「ああ、大通りを真っ直ぐ進んでいけば大きな建物があるから直ぐに分かると思うよ」


「ありがとうございます。食材なんかを買って来ますね」


「 お客さんにそんな事をさせる訳にはいかないんだけどね」


 渋い顔をしたお婆さん、


「良いんですよ。私たちはどちらかと言うと居候させてもらうんですから」


 マクスウェルさんは早速寝てしまったので他の皆んなで早速ギルドへ向かいます。

 今回はパーティ登録をしないといけません。そう言えばお母様からギルドマスター宛の手紙を預かりましたが、あれはもしもの時にと言っていたので今回はしまっておきましょう。

 しかし屋台や露店などが多いですね。見た事のない商品や料理も沢山あるようです。流石は世界に名だたる商都市ですね。

 世界中から様々な商品が集まるのでしょう。大きな港もこの国にはあるので他の大陸からも人や物がやってくるそうですから。


「あっ、あの魚は見たことがないにゃ」


 ネイナさんは道中にあった魚屋さんに駆け込んで行きました。目を輝かせて水槽を泳ぐ魚を見ています。港でもないのに生きた魚を運んで来るなんて中々大変そうですね。

 名残惜しそうなネイナさんを連れて先に進みます。


 上流、中流、下流、どのような方でも商売が出来るようです。街の中心に近付くにつれて店構えや商品が変わっていきます。


「あれが冒険者ギルドみたいだな」


 兄様が指差す方向を見るとエルドラン王国の王都にあったような立派な建物があります。冒険者が沢山出入りしていますね。

 建国祭が近いと言っていたのでそれに関連した依頼も多いんでしょうか。


お読みいただきありがとうございます。

ここ最近新しい物語を書きたい衝動に駆られます。でも投稿して暫くすると消したくなるという悪循環が∈(´Д`)∋

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