表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/118

第71話 出立

 先ずはこの辺り一帯の領主ゼレンさんに街を出ることを伝えることになりました。マクスウェルさんが試験の前日に商人を大体見終えたと報告があったので、試験に受かったら街を出ようと決まったんです。

 本人に会う約束はしていないのですが、言付けだけでもしておこうということになりました。


 侯爵邸の門を守る兵士の方にその旨を伝えるようにお願いしました。どうやら私たちのことを知っていたようで、すぐに伝えてくれることになり、暫く待っていると、


「ゼレン様がお会いになられるそうです。どうぞお入り下さい」


 執事の方がやって来て私たちを邸へと案内してくれました。



「突然の訪問、申し訳ありません」


「いや、我が民の恩人だからな、伝えくれて良かった。私も挨拶をしたかったからな」


 会議室で待っているとゼレスさんが現れ、ネポロ村の人たちを救ってくれたと再びお礼を言ってくれました。


「そういえば最速でDランクになったとか、おめでとう」


「ありがとうございます」


 私たちがDランクになったことを知っていたようです。この街で起きた出来事は把握しているのでしょう。街を出ることを残念そうにしていましたが、また来ると言うと笑顔になりその時はまた歓迎すると言ってくれました。


 次はギルドマスターのボイドさんの所へ、お世話になったギルド員さんたちにも挨拶をしておきましょう。何かと迷惑をかけてしまったので。


「そうですか……残念です。ギルドマスターに伝えてくるので少々お待ち下さい」


 ちょうど受付にはアニスさんがいたので明日、街を出る旨を伝えると凄く残念そうに大きなため息をついて、兄様の方を見てからボイドさんに話を伝えに行きました。


「お会いになられるそうです」


 ボイドさんも会ってくれるそうなのでギルド長室へ、沢山の書類が置かれた机にボイドさんが座っていました。


「明日、街を出るそうだな」


「はい、短い間でしたがお世話になりました」


「ああ、だが随分と濃い時間だったがな、この街のDランク最速到達者たちが街を出て行くのは惜しいが、それが冒険者だ。気をつけて行くんだぞ」


「あ、あの、アレクさん、頑張ってください」


「ありがとうアニスさん、三ヶ月くらいしたらまたこの街に来ると思うのでまたお会いましょう」


 兄様がそう言うと悲しそうな顔をしていたアニスさんは途端に笑顔になり、嬉しそうに返事をしました。何故かその後ろでボイドさんが安堵したように息を吐きました。


 さて、次はネポロ村の皆さんのところです。

 昨日も会いましたが、挨拶はしておかないと、三か月ぐらいで戻ってくる予定なので、お別れという感じではありませんがね。


「あっ、お姉ちゃんたちだ!」

「だ!」


 扉を開けノックするとポコナちゃんとココロちゃんがひょこっと顔を出しました。

 そしてその声を聞いて他の皆さんも集まって来ました。


「昨夜も言いましたが明日、ロンドールへ行くことになったのでご挨拶に来ました」


「皆さんなら大丈夫だと思いますが、お気をつけて行って来てください」


 兄様たちがマールさんや他の方と話している間に私は子供たちの相手をしています。


「いつかえってくるの?」


 小さな犬人族の男の子が質問してきました。


「三か月ほどですかね」


「ふーん……なんかい、ねたらあえるの?」


 ウンウンと頷いたので納得してくれたと思ったら、そうではなかったようです。

 ポコナちゃんとココロちゃんたちのように言っていることをある程度理解出来る年齢の子供たちは昨日の説明で納得してくれたようで、寂しそうではありますが昨日ほど悲しそうではありません。

 ですがもっと小さな子たちはあまり理解出来ていないようですね。他の数人の幼い子供たちも不思議そうな表情をしてこちらを見ています。


「沢山寝たら会えるよ」

「会えるよ」


 二人が説明しています。

 小さい子がより小さな子の世話をしているのは見ていてほんわかしてしまいますね。


「よし、じゃあそろそろお暇しよう」


 皆さんへのご挨拶も済んだのでネポロ村の皆さんが住んでいる家を後にしました。明日の見送りをしたいと言ってくれましたが、朝早くに街を出るので見送りは大丈夫だと遠慮してきました。



「さて、あとはそれぞれ挨拶をしておきたい人に声をかけておくように、また宿で」


 皆さん、それぞれ別れていきます。

 さて、私が親しくなった人と言えば、やはり串焼き屋のおじさん。ついでに沢山の串焼きを注文しましょう。次元収納(ディメンションルーム)にしまっておけば長期間腐ることはありませんから。


「こんにちは!」


「おう、嬢ちゃん。昨日の今日でまた来てくれたのか?」


「はい、それもあるのですが明日ロンドールに行くことになりまして」


 私がそう言うと表情を曇らせました。


「そうか……寂しくなるな」


「キュイーン」


 俺のことを忘れていないだろうなとでも言うようにルルが声を出しました。


「もちろんお前に会えなくなるのも寂しいぞ」


 ルルとすっかり仲良くなったおじさんはまるでルルの言葉が分かるように自然に会話をするようになりました。まあ分かりやすい表情をするということもあるんですが。


「ということで串焼きを百本お願いします」


「あいよ! 絶妙な焼き加減で美味しく作ってやるから待ってな」


 良い匂いがしてきました。

 他にもお客さんがいますね。ついこの間、私たちが買い始めてから客が増えたと感謝されてしまいました。串焼きを頼む冒険者が増えたらしいです。あとは子供が美味しそうに串焼きを食べるルルを見て食べたくなったとかで子連れの家族が良く買いに来てくれるようになったそうです。

 串焼き屋さんのマスコットといったところでしょうか。


「嬢ちゃん、ルルがよだれを垂らしているから、これでも食っていてくれ」


 おじさんが二本串焼きをくれたのでルルと一緒に食べながらゆっくりと待ちます。今日もこの街は活気に満ち溢れていますね。



「ほら、出来たぞ。またこの街に来ることがあったら買いに来てくれよな」


「はい」


 それから門番さんなど親しくしていた人たちに別れの挨拶をして宿に戻ります。

 部屋に帰ると他の皆さんは戻ってきていました。


「買い物も済ませておいたから、あとは明日が来るのを待つだけだ。ロンドールについてもやることはあまり変わらないが、本格的に良い商人を探すことになるからそのつもりで」


「向こうでもギルドの依頼は受けるんですか?」


 本来の目的を果たすためにロンドールへと向かうわけですから。


「パーティとして活動しよう、そうすれば全員で依頼を受けなくても評価は上がる。出来たら早い段階でCランクにはなっておきたいからな」


 Cランク、そういえば依頼を受けなけらばならない義務が免除されるんでしたね。そのうち村に戻ることになる私たちは早くCランクになっておきたいところですね。


 とういうことは……


「ミレイとメアは依頼中心で頼むぞ」


 やはり、商人の見極めは難しいでしょうから、まだ若い私とメアには中々難しいのでしょう。

 正直、その方がありがたいですが。



 翌日、人通りが多くなる前に街を出ることになったので朝早くに起きて、装備を整えて一階にいきます。

 すると兄様とマクスウェルさんはすでにいて食事をしていました。あれ、朝早いから食事は作らなくても良いとダントさんに伝えてあったはずですが。


「ミレイさん。おはようございます」


 アンナちゃんの奥さんのアユマさんが挨拶をしてくれました。大きなアンナちゃんといった感じの美人さん、明るくて宿屋の女将さんという感じです。


「おはようございますアユマさん。あれは?」


「主人が作りたいって言うんで、食べてあげてください」


 美味しいダントさんの料理が街を出る前に食べられるなんて幸せです。お礼を言って席について朝食を頂きます。美味しそうな焼き魚が、ネイナさんが目を輝かせています。ルルの朝食は肉、同じく目を輝かせて食べ始めました。


 朝食を食べ終え、ユキたちを馬小屋から連れ出すると宿の前に出てきてくれたダントさん、アユマさん、そして先ほど起こされてきて眠そうなアンナちゃん。


「お世話になりました」


 それぞれ挨拶をして私は眠そうなアンナちゃんの頭を撫でてお別れを言います。


「またこの街に来たら泊まりに来るからね」


「うん、待ってる」


 手を振りながら街の外へと向かいます。

 冒険者としても様々な経験が出来ました。

 ロンドールではどのような経験が出来るのか楽しみですね。


お読みいただきありがとうございますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ