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第64話 閑話 マクスウェル働く

マクスウェル視点の話です。

「はあ、良い商人いないかな」


 冒険者ギルドでアレクたちと別れてから商人が多い場所で、一人ひとり商人を見て回っている。


 結構デカイ街だから一人ぐらい良さそうな商人が見つかっても良さそうなもんだけどな、こんだけ商人がいるんだからよ。

 村のためだから手を抜くわけにもいかないしな、ああ、ディオンかシスイと交代したい。寝て過ごすのが俺のスタイルなんだ。


 ああ、村が恋しい。



「あっ、おじちゃんだ!」

「おじちゃんだ!」


 二人の幼女が俺を指差して駆け寄ってきた。

 ネポロ村のポコナとココロか、俺はまだオジサンって歳じゃないぞ全く。


「お兄ちゃんと呼びなさい」


「なんでー?」


「なのー?」


 しゃがんで呼び方を訂正しろと注意したのだが、この幼女たちには気遣いというものがまだ出来ないようだ。


 ……気遣い? まるで自分でオッサンだと認めているような言い方になってしまったが、俺は断じてオッサンではない。


 シドさん以上の年齢がオッサンだ。


 しかし、盗賊を懲らしめて人を救うなんて、本当にエルザ様に似てやがるなミレイは。まあ俺がエルザ様に助けてもらった時の盗賊はエルザ様の手で全員吹き飛んであの世に逝っちまったが、苛烈さはちと違うが聞いた話だと殆どの盗賊の心を砕いたそうだからあまり変わらないか。



「お前たちは何してんだ?」


「お肉食べてたー!」


「たー!」


 肉が刺さってたであろう串を振り上げる二人、元気よく俺に見せようとしてきたから危なく突き刺さる所だった。肉か、ああ、確かに良い匂いのする袋を持っているな。


 そこら辺の屋台で買ったのか、しかし、こいつらも中々心が強いよな、俺がエルザ様に助けられた時は一ヶ月以上黙りっぱなしだった。

 まあ俺の場合は俺以外は全滅してしまったから、その差があるかもしれないけどな。



「あっ、マクスウェルさんこんにちは」


「ああ、マールさん、どうですか屋敷は?」


「おかげさまで住み心地は良いです。ですが、いつまで領主様に甘えていられるか……いや、すいません。今する話ではなかったですね」


 村長の孫娘として色々と思うところがあるんだろうな。まあ小さい村の住人は全員が家族みたいなものだし、血の繋がった家族以外の人達も同時に亡くすのは辛いわな、それに村に帰れるかもわからない。帰ったとしてもかつての村ではないしな。


「うちの村に来るのも一つの手だが」


「マクスウェルさん達の住む村に?」


「まあ、まだ先の話だから、今は少しでも気持ちを落ち着かせて、よく考えて結論を出すと良い」


「はい……ありがとうございます。先ほどもミレイさんに良くしていただいて」


「お嬢に?」


 ミレイ様は依頼を終えて帰って来ているということか、まだ時間は早いしもう一件ぐらい依頼を受けてきそうだな。しかし、何をしてあげたんだ?


「ええ、串焼きを買って頂きました」


 初依頼の報酬でネポロ村の人たちに串焼きをね。

 人が良いというか何というか、まあだからこそ大勢の者達に慕われているんだろうがな。


「そうか、美味しく食べてくれればお嬢も喜ぶだろう」


「はい、ありがとうございます。ではそろそろ失礼しますね。ポコナ、ココロ行くわよ」


「「はーい!」」


 マールに連れられた二人は手を繋いで歩いて行く。

 しばらく歩いてから二人は思い出したように俺に手を振ってきたのはご愛嬌。


 全く、世知辛い世の中だ。

 チカラ無き者は強き者に屈するしかないからな、まあエルザ様やミレイ様達のようにそれを許さない人もいるからプラマイゼロってところか。




 さてと、俺も仕事をするか……


 レオン様の求める商人、大商人でなくとも良さそうなことを言っていたからな、信用出来る商人、人柄の良い商人。商人は人を騙すのが一つの手段だからな、ただのお人好しがこの商王国で生きていけるとは思えない。

 駆け出しの商人でも良いかもな、才能に恵まれているがきっかけを掴めずにいる商人。


 人の足元を見るような商売をしない奴……



「お兄さん、見ていってくれよ」


 考え事をして歩いていると、露店を出していた若い商人が話しかけてきた。しらみ潰しにやっていくか、どれどれ、こいつはどうかな?


「ここは何を売っているんだ?」


「ここは、骨董品を扱っているんだ。どうだお兄さん、俺が直々に買い集めた品の数々だ。良い品が揃っているだろう?」


 身なりはしっかりしている。だが話し方が商人としては甘いな、年上の人に物を買わせたいならそれ相応の態度をとらないとな。


 どうやら自分の目利きに自信のあるタイプの行商人みたいだ。どれどれ、古びた壺、古びた剣、欠けた皿、ガラクタばかりじゃねえか、こいつはダメだな。


「また今度な」


「チッ、またのお越しを」


 態度も悪い、人を上手く乗せて買わせようとするタイプの奴だな。あれはその道でも大成しそうにはない、最後まで笑顔は絶やさないようにしないとな。



「俺の商品も見ねえか兄ちゃん」


 見ねえよ。

 話しかけてきたのは隣にいたオッサン小汚いし、何より臭い。商売人なんだから身だしなみを整えてから出直せ。


 しかし、露店を出している連中は大したことのない奴らばかりだな、怪しいジジイに小汚いオッサン、露天の種類は多くて見ていて楽しいが才能を感じて信頼出来そうな奴は今の所いない。


 行き交う人々の間を縫って左右にいる露天の店主、商品をよく見て歩いて行く。



「兄ちゃんこれ何?」


「これかい、これはこうやって紐を巻きつけて回して遊ぶんだよ」


 子供の声が聞こえてきたから見てみると横への脇道に入ってすぐの所で小さな露天が開かれている。

 一人の子供が並べられている商品を見て興味津々と言った感じで目を輝かせている。

 露天の店主はアレクと同い年ぐらいの青年、子供相手でも丁寧な言葉遣いで説明しているな。


 悪くない。



「凄いね、これいくらなの?」


「これは銭貨三枚だよ」


「そっか……銭貨一枚しかないや」


 ポケットから銭貨一枚を取り出して残念そうな顔をして玩具を見て物欲しそうな顔をする子供、すると店主の青年が「そろそろ店じまいだ」と言って露天の片付けを始めた。


 何かしそうだと見ていると……


「こんなに売れ残っていると困るな……そうだ! これは売れ残りだから銭貨一枚で売ろうかな? どうする?」


「本当? 買うよ! やったー!」


 子供は銭貨一枚を支払い店主に礼を言って去って行った。嬉しそうに駆けていく子供の背中を店主は笑顔で見送っている。


 悪くない、悪くないな。


「兄ちゃん、こんなに早く片付けをしてどこかに行くつもりなのかい?」


「ええ、これからロンドールに向かおうと思ってましてね」


 ロンドールか、もう少しこの兄ちゃんを観察しておきたかったが俺たちはもう少しこの街に留まるからな、縁がなかったか。


「珍しく良い商人にあったから、名前を聞いてもいいか?」


「嬉しいことを言ってくださる。私の名はシュガーと申します」


「そうか、無事につけるよう願ってるよ」


「ありがとうございます」


 さてと、そろそろ帰るとするか、そろそろ依頼を終えて帰ってきているかもしれないしな。それにミレイが何かに巻き込まれていないか心配だ。



 ◇



 部屋に帰るとアレクの姿はまだない。

 やはり何件か依頼を受けているようだ。


 冒険者はCランクを超えていくと貴族と関わる事も増えるから礼儀作法も覚えなきゃだが、ウチの連中には必要ない。アレクはBランク、ネイナはCランクから始めても良さそうなもんだが。

 ミレイとメアは経験を積ませるためにDランクってとこか。まあ直ぐにランクは上がるだろうがな。


 女性陣が帰って来ているかの確認のために部屋に向かい声をかける。


「マクスウェルだ、帰ってきているか?」


「はーい、どうぞ」


 中に入るとメアとネイナの姿がある。

 ミレイの姿は見当たらない。


「ミレイはまだみたいだな?」


「ええ、受付嬢のアニスさんの話だとお昼頃に依頼をこなして次の依頼は受けなかったそうですが」


 って事は串焼きを奢ってあげてから何をしているんだ? まあ街の中なら大した危険はないかもしれないが……嫌な予感がするな。


 とりあえずアレク様を待つことにして、メア達に初依頼はどうだったのかを聞いてみる。


「お魚釣りは大成功だったにゃ」


「家の掃除は簡単でした」


 まあこいつらにとってEランクの依頼なんてそんなもんだろ、冒険者か、新人では最強のメンバーだろうな。ギルドのDランク以下の奴も今日の騒動で手を出そうとする奴なんてまずいないだろう。居たらいたで楽しめるが。


「皆もう帰ってきているか」


 アレクのお帰りだ。やっぱり最後はミレイか、ルルの奴もいるし、迷子ってことはないだろうけど。


「ミレイの姿がないな」


「まだ帰って来ていません」


 それを聞いたアレクは俺に視線を向けた。

 言いたいことは直ぐに分かったので頷く。

 ちと探してきましょうかね、我々のお姫様を「ただいま戻りましたー」っと思ったら無事に帰ってきた。



「……で、ギルドで一つ依頼をこなした後はどこに?」


 ミレイに何かなかったと聞いてみるとネポロ村の人たちの話をし始めた。まあ間違いではないわな、アレクがその後には何かなかったのかと聞くと、少し言いづらいことがあるような顔をした。

 聞いてみれば街の探索中に絡まれて倒したらしい。

 やっぱり何かに巻き込まれていたか。



「ほら見ろ、俺の言った通りだ。エルザ様もそんな感じだった」


 流石は我らがお嬢、殲滅姫の血とフリーデンの血を色濃く受け継いだだけあって何かを起こすな。

 聞けば絡んできたのはただのチンピラだったようだ。小娘だと侮って近付いた結果返り討ちか、ついてない奴らだな。



「で? 今日の依頼はどうだった?」


「ルルと一緒に薬草を探して、銀貨三枚と大銅貨一枚、銅貨一枚になりました」


 初依頼で銀貨三枚もらった奴の話なんて聞いたことないぞ。しかも依頼一つで、アレクの大銅貨五枚でも良い方だ。



「やっぱりエルザ様と理不尽なところがそっくりだな……将来が恐ろしい」


 俺がそう呟くとミレイが何やらおかしな目で俺の方を見ている。何か良からぬことを考えていると俺の第六感が反応した。



「あっ、駄目だぞ、エルザ様に何か告げ口しようと思っただろう?」


「えっ?」


 やっぱりさっきの話を告げ口しようとしていたな、危ない危ない、エルザ様に聞かれたら間違いなく俺は爆破されてしまう。

 しかしあれだな、会話をするたびに誰かに弱みを握られているような気がするのは気のせいか?


お読みいただきありがとうございますm(__)m

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