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第62話 依頼完了

 依頼人が薬草を直接持って来て欲しいとのことだったので街に戻ってきた私は依頼人の元を訪れました。


 ここが薬屋ミスティですか。

 なんとなく怪しい雰囲気のする店かと思ったら白を基調としていて凄く綺麗な店ですね。


「すいません、依頼を受けたんですが」


 中もオシャレなお店みたいな感じになっています。女性がイスに座りながらお茶を飲んでいるし、ここは本当に薬屋さんなんでしょうか?



「あら、よく来たわね」


 そこにいたのは二十代くらいの綺麗な女性、お婆さんがフォッフォッフォッって出迎えてくれると思っていました。


「私について来てくれるかしら、こっちはカフェになっているのよ」


 カフェですか……通りでオシャレだと思いました。薬膳茶と薬草を練り込んだお菓子を出しているそうです。体に言いそうだ若い女性に人気があるそうです。


 流石商王国トルネイの侯爵が治める街ですね。

 そんなものは私が住んでいたアラドヴァルにはありませんでしたし、王都にも薬屋が出すカフェなんてありませんでした。彼女は店の名前の通りミスティさんと言うらしいです。



「じゃあ薬草を見せてくれるかしら」


「はい、これです。二つに分けているので別々に評価していただけるとありがたいのですが」


 背負っていたカゴに入れた下ろしてミスティさんに薬草を見てもらいます。

 私とルルで薬草を探していたのですが、途中でルルがどっちが多く薬草を探せるか競争をしようと言ってきたので二つに分けています。



「分かったわ。随分と集めて来たようね」


 一つ一つ確認していくミスティさん。


「ええ、頑張りましたから」


「先ずは、依頼していたチユシ草は十束たしかにありますね」


「良かったです。あとはどうですか?」


「先ずはこちらから評価するわね」


 最初はルルが探してきた薬草から評価してくれるようです。ルルは自信有り気な表情をしていますね。



「こちらの薬草は七割が薬草で、三割は食用の野草でした。中にはウーマンドレイクといった珍しい薬草も混ざっていましたので評価額は銀貨一枚と銅貨五枚ですね」


「キュイーン!」


 バク転をして喜ぶルル、こちらを見てドヤ顔をしています。そんなルルを見てミスティさんが「この子が見つけた薬草なの?」と聞いてきたので、「はい」と答えるとミスティさんはルルを褒めました。するとルルは胸を張って反り返りドヤ顔をしました。


 むむむ……まだ負けてはいませんよ。



「ではもう一方の評価をしますね。こちらは九割が毒草、一割が薬草でした」


 き、九割が毒草……そんな馬鹿な。

 それを聞いたルルは勝ち誇るでもなく哀れんだような視線を私に向けてきます。


 ま、負けた……


「ですがこの毒草の中にとても珍しいものが一種類混ざっていました」


「トリクワガタという名前で一般的には致死性の猛毒を持つ植物として認識されているんだけど、凄く貴重な薬の材料になるの、しかも綺麗な状態で五束もあるわ」


 おお、意外な高評価、これはもしかしたらもしかするかも?


「全部で銀貨二枚と銅貨一枚ね」


 銀貨二枚!? やりました、勝ちました。

 ルルの方を見ると、顔を両手で挟み吃驚した表情をして固まっていました。


「他の毒草は廃棄だけどね」


 あうっ、純粋に薬草を採取した数はルルの方が多いです。私はたまたま見つけた毒草が高かっただけ……


 これは……


「ルル、今回は引き分けです」


「キュイ?」


 そう言うとまだ驚愕の表情を浮かべて固まっていたルルはピクッと動き出し、腕を組み首を傾げて何を言っているのだろうと不思議な顔をしました。



「次はちゃんと薬草を採って勝ってみせますよ」


「キュイキュ!」


 次の言葉で何を言っているのか分かったのでしょう。俺だって負けないとパンチを繰り返し放つ動作をしてやる気満々、次は薬草探し以外で勝負しましょう。



「ふふ、面白い子達ね」


 そんな私達を面白そうな顔をして見ていたミスティさんは微笑んで依頼書を差し出してきます。


「はい、じゃあサインしておいたから、ギルドに持って行ってね。また何か見つけたら持ってきてくれたら嬉しいわ」


「はい! では失礼します」


 ちなみにミスティさんに年齢を聞いてみたところ、お母様と同じような反応をしました。

 お母様と同じ年齢不詳タイプの女性のようです。やはりイメージ通り、薬屋の店主だけあって謎はあったようですね。


 それとウーマンドレイクは採取する際に花を触ったり傷付けたりすると甲高い叫び声をあげるそうで、それを聞いた者は気絶したりする場合があるから気を付けてと言われました。ティナさんに薬草は採取は丁寧にと教えられていて良かったです。



 ◇



「依頼終了しました」


 アニスさんが受付にいたので依頼書を持って彼女の元へ行くと笑顔で迎えてくれました。


「初依頼お疲れ様です。……はい、依頼人のサイン確認が出来ました。それにしても初めての依頼なのに報酬が凄いですね」


 報酬の額を見て驚いた顔をするアニスさん、初めての依頼で銀貨を稼ぐ方は中々いないそうです。私の場合はたまたまですがね。


「たまたま珍しい薬草?を見つけまして」


「そうですか、良かったですね」


「ありがとうございます。兄様達は依頼を終えましたか?」


「はい、アレクさんとメアさん直ぐに次の依頼に、ネイナさんは魚を食べに行くと足早に去って行きました」


「そうですか、ではそろそろ失礼します」


 ギルドを出た私達は料理屋や屋台が並ぶ通りにやって来ました。予想以上に稼げたので頑張ってくれたルルに好きな物を食べさせてあげましょう。


「ルル、何を食べましょうか?」


「キュ……キュイ!」


 私の頭の上に立って唸りながら辺りを見渡すルル、何か食べたい物を発見したのか声をあげました。

 肩まで降りてきたルルが小さな指で指し示したのは一つの屋台でした。



「へいらっしゃい! 今日のオススメは秘伝のタレを使った一角豚(イノブル)の串焼きだよ」


 イノブルと言えば猪型の魔物ですね。

 血抜きをするのが早いほど美味しくなるとキールさんから聞きました。

 香ばしい香りが辺りに広がっていて確かに美味しそう。野菜が入っている物もありますし、ルルが食べたいのならこれにしましょう。



「オジさん、その野菜も入っているのを四本下さい」


「あいよ! 銅貨二枚だよ」


 銅貨二枚を渡すとハチマキを巻いた犬人族のオジさんは手慣れた様子でイノブルの串焼きをタレにつけてから紙袋に入れてくれました。近くに座れる場所があってのでそこで食べましょう。


「はい、ルル、貴方のぶんよ。野菜もしっかりと食べてね」


「キュイ」


 ルルが串から食べるのは難しそうなのでお皿を出して肉と野菜を取り外して食べやすくしてあげます。屋台のオジさんが嫌がるかなと思って見るとグッと親指を立ててくれたので大丈夫みたい。


 私も食べてみます。


 これは……美味しいです。

 お肉も柔らかくて癖がないですし、タレがこのお肉の味を殺すことなく引き立てているようで次々と食べてしまいます。


 流石ルル、美味しいものを探すのはお手の物ですね。


「あっ、お姉ちゃんだ!」


「ルルもいる!」


 聞き覚えのある可愛らしい声に振り向いて見ると、ポコナちゃんとココロちゃんの姿がこちらに向かって走ってきました。その後ろにマールさんの姿もあります。



「お買い物ですか?」


「そうなの」


「なの」


 質問するといつも通りポコナちゃんが返事をしてくれたあとにココロちゃんが返事をしてくれました。


「ミレイさんこんにちは、昨日は新しい家の整理を手伝っていただいてありがとう御座います」


 後ろから二人を追いかけてきたマールさんは昨日のお礼を言ってくれました。新しい家に住むことになったので何人かに分かれて必要になる物の買い出しに来ていたようです。


 マールさんと話しているとポコナちゃんとココロちゃんが静かなのが気になって視線を向けてみると、ルルが食べている串焼きを見て指をくわえてヨダレを垂らしていました。串焼きに夢中になっていたルルもその視線に気付いたようで二人と串焼きを交互に見ています。


 あげようかどうか迷っているようですね。


「ルルは食べていいですよ。二人には買ってあげますから、いいですかマールさん?」


「それは……申し訳ないです」


「今日は臨時収入が入ったんで大丈夫です。お土産に他の人達の分も買ってあげましょう。二人だけズルいってならないように」


「ですが……」


「店主さんが太っ腹でお安く提供してくれているので大丈夫ですよ」


 今日の依頼で意外と稼ぐことが出来ましたからね。無駄遣いをするつもりはありませんが、村の方のために使うのなら構わないでしょう。


「オジさん、野菜が入ったやつを三本目下さい。あと同じのを四十本包んで下さい」


「あいよ、ちょっと時間がかかるから待っていてくれ嬢ちゃん。話を聞いちまったんだが、嬢ちゃんたちは見慣れない顔だが最近この街に越して来たのかい?」


「えっと、はい……その……」


 この犬人族のオジさんはこの辺に長く住んでいるようですね。先ほどの引っ越しという言葉を聞いてどこから来たのか気になったようです。

 ですがマールさんも答えにくいですよね。村が盗賊に襲われたので、なんて言い難いですから。


「ん? どうした?」


「……」


「……ああ、スマン。答えなくていい、だが新しくこの街の住人になったんならお祝いをしないとな、タダと言いたいところだが割引で勘弁してくれ」


 黙るマールさんにオジさんは何かを感じたのか、それともネポロ村のことをすでに知っていたのか、申し訳なさそうな顔をしたオジさんはマールさん達の引っ越し祝いだと割引をしてくれるそうです。



「美味しいねココロ」


「うん、凄く美味しいね」


 美味しそうに食べる二人、それを見るオジさんも嬉しそうです。自分の作ったものを美味しそうに食べてもらえると嬉しいですからね。

 私もまた皆んなが美味しいと言ってくれたあのスープを作ろうかしら。


「キュ!?」


 そんな事を考えるていると急にルルがブルッと身体を震わせて声を上げました。


 何でしょうか?



「焼きあがったぞ嬢ちゃん、大銅貨一枚でいい」


「半額じゃないですか、大丈夫ですか?」


「儲けはないが、構わんさ」


 優しいオジさんに大銅貨一枚を支払います。



「ポコナ、ココロ、ミレイさんと店主さんにお礼を言いなさい」


「「ありがとう」」


 ポコナちゃんとココロちゃんが頭を下げて丁寧にお礼を言うとオジさんは照れて頭を掻きました。


「マールさん、今度また伺いますので」


「はい、ぜひ来て下さい」


 串焼きの入った袋をポコナちゃんとココロちゃんの二人で持って三人は家に帰っていきました。

 二人は魔法の練習をしっかりと行っているそうです。今度また新しい魔法を教えてと言われました。

 生活魔法ならまだまだあるので今度教えてあげましょう。私の初めての弟子ですからね。

お読みいただきありがとうございます。予想通りの展開になってしまったかと思いますがお許しをm(_ _)m

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