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第57話 別れと新たな生活へ

 亡くなった方の家族である若い女性達や子供達が自分の家族に別れを告げています。


「お父しゃん、お母しゃん!」

「パパ、ママ!」


 ポコナちゃんとココロちゃんも大きな声で泣いて亡くなった両親に抱きついています。

 ご遺体はすでに棺の中に移し終え、これから墓地に埋葬されます。


 神殿の神官も盗賊に殺されてしまったため、領主であるゼレンさんが手向けの言葉を言うようです。


「亡くなった彼等は良き人だった。優しく親切で、何よりもそなた達を愛していた。そんな彼等を神は喜んで迎えてくれるだろう、そして彼等はずっとそなた達を見守ってくれるはずだ」


 亡くなった方、そして助かった女性や子供達を思いやった言葉を話していきます。


 棺から離れられない方も多くいましたが、徐々に棺を運べるように離れます。



「離れないもん」

「やだもん」


 ですがポコナちゃんとココロちゃんは両親の棺から離れようとはしません。

 今まで気丈に振る舞っていたのでしょう。

 あまり涙を見せる事なく自分より小さな子供達の面倒もよく見ていましたし、魔法の練習も頑張っていました。


 ですが、いざ別れが来ると気持ちを抑えられなかったのでしょう。




「ポコナちゃん、ココロちゃん、お父さんとお母さんを眠らせてあげましょう。心配してしまいますよ」


「でも……」


「お父さんとお母さんに魔法を見せてあげましょうか、そうすれば安心してくれるはずですよ」


「「うん」」


「「ひかりよ、きたれ、われが、ゆくさきをてらせ『ライト』」」


 二人は小さな手に現れた光をそれぞれの両親に見せてます。


「わたし、まほうつかえるよ」


「ココロも、ほめて」


 二人が両親に話しかける姿を見て、辺りから聞こえる泣き声が大きくなりました。

 すると、二人の手の上で輝いていた光はだんだんとその数を増やし、ご遺体すべての上で光り始めました。


 これは……二人にはまだこんな事は出来ないはずなのに……



 ポコナちゃんとココロちゃんも自分達が使った魔法がそんな動きをするとは思わなかったのでしょうか、口と目を大きく開けてその光景を眺めています。


 やがて光はそれぞれの家族や親しい人の側へ行き、しばらく漂うと、ゆっくりと登っていって静かに消えました。

 その幻想的な光景に周りの人達は声をなくしています。


 まるで村の方達が家族や親しい人達に挨拶をしてから天へと登っていったように見えました。



「ポコナちゃんとココロちゃんのおかげで皆んな天国に行けたみたいね」


 そういうと二人は私の方を向いて肩を震わせながら私に抱きついてきました。

 優しく頭を撫でてあげます。



「ミレイ、この子達にあんな魔法をおしえたのか?」


「いえ、ただのライトを教えました。この子達もあんな魔法を使った事はないようです」


「そうか……」



 その後、棺は家族や親しかった知り合いと兵士の手で埋葬されました。

 


 ◇



 あれは、何だったんでしょうか?


 魔法に詳しいマクスウェルさんに聞いてみましたが本人が意図していない動きをする魔法なんて暴走以外には見たことがないと言っていましたし、村にいる中で一番物知りだと思われるゼレンさんも初めて見たと言っていました。


 何かは分かりませんが家族を亡くした方の気持ちが少しは楽になってくれたらと思います。


 もしかしたらポコナちゃんとココロちゃんの純粋な気持ちを神様が汲み取ってくれて起こった奇跡だったのかもしれません。



 ◇



 葬儀から一日経ち、これから隣街のエデンスへ行くので準備をしています。


「ポコナちゃん、ココロちゃん、準備は出来た?」


「うん、だいじょうぶ」

「ばっちり」


 ポコナちゃんはタヌキがモチーフの可愛らしいカバン、ココロちゃんはキツネがモチーフの可愛らしいカバンを背負っています。

 お母さんの手作りみたいですね。


 よく似合っています。



 村の方達の荷物は私とマクスウェルさんで収納してあげたので、あとはゼレンさんと兵士さん達と一緒に隣街まで移動するだけです。

 隣街は商王国トルネイの首都ロンドールへ行くための通り道なので私達も一緒に向かう事にしました。

 ゼレンさんにもぜひ礼をしたいから寄っていって欲しいと言われてしまいましたから。


 商王国の貴族の方と親しくする良い機会だと兄様が言っていました。




 昨日のうちに盗賊は隣街に移送されたので、村の方が目にする事もないでしょうし、何事もなくロンドールまで行けると思います。


「ご両親のお墓に挨拶をしに行きましょうか?」


「「うん」」


 二人と一緒にお墓への行きます。

 他の方たちもご家族に挨拶をしているようです。兵士さん達が村を守ってくれるそうなので荒らされる事もないでしょう。




「お姉ちゃん達の馬車に乗りたい!」

「乗りたい!」


「わがままを言っちゃダメよ?」


 そんな事を言う二人にマールさんが優しく声をかけます。ですが二人は諦めようとはしません。


「二人ぐらいなら構いませんよ」


 中々言う事を聞かない二人を見かねた兄様が二人を乗せても構わないと声をかけました。


「そうですか、では、お言葉に甘えさせていただいてお願いします」


「はい」


 わーいと声をあげながら私達の馬車に乗り込んで行く二人、ゼレンさんの号令を聞いて村を離れて行きます。


 私はユキに乗って馬車の隣を進んで行きます。二人は、いえ、村の人達は村が見えなくなるまでずっと村を見ていました。




「良いか、魔法はイメージが重要だ。どんなに魔力が強くてもイメージがしっかりしていなと宝の持ち腐れだぞ」


「もちぐされー」

「されー」


 移動中はマクスウェルさんやメア、ネイナさんが二人の面倒を見てくれています。

 今はマクスウェルさんが魔法を教えているようですが言葉が難しいみたいで理解出来ていないようですね。


 ユキの頭に乗っているルルも時折二人の様子を伺っています。



 辺りが暗くなってきたので兵士の皆さんが周りを取り囲む形で休みます。


「むにゃむにゃ」


 二人はゴハンを食べると初めての旅で疲れたのか直ぐに眠ってしまいました。

 他の子供達や女性達も疲れたようです。



 ◇



 その後も何事も起きる事なく進み、村を出てから二日後、大きな街が見えてきました。


「凄く大きな街ですね」


「侯爵閣下が住む街だからな、栄えているのだろう」



「こら、止めろって、前が見えないぞ」


「すごいー」

「おおきいー」


 ポコナちゃんとココロちゃんも初めてエデンスの街を見たのか御者の席に乗って興奮しています。

 今はマクスウェルさんが御者をしているのですが背に乗られたりして少し大変そうです。


「もう着きますから、二人ともそんなに興奮すると落ちちゃいますよ」


「「はーい」」


 しばらくすると街に到着しました。

 街を囲う外壁も大きな門も立派でまるで王都のようです。


 流石は商王国の侯爵が住む街と言うべきなのでしょう。活気があり、お客さんを呼ぶ大きな声が聞こえてきます。

 料理店、宿屋、武器屋、防具屋など様々な店が立ち並び、それを見る様々な種族の人達が行き交っています。


 私達は街の中心へと向かって行きます。

 様々な商店がある場所を通り過ぎると、大きな家が立ち並ぶ場所へとやって来ました。貴族やお金持ちが住んでいる通りみたいですね、何らかの身分があると思われる人達の姿が見えます。


 そこを通り過ぎて街の中心の方へと向かっていくと一際大きな屋敷がありました。

 そこに入って行きます。


 庭が広くて草花が綺麗に手入れされ、彫刻なども飾られています。

 庭の真ん中には噴水があり、それを見て子供達が声をあげています。




「皆、疲れたであろう、とりあえず中に入ってくれ」


 私達が屋敷に着くとゼレンさんを待っていた執事などの方達が村の人達を屋敷へと案内します。

 私達も行っていいのか迷いますが、ゼレンさんが手招きしているので大丈夫なようです。


「食事を摂って英気を養ってくれ、そのあとはとりあえず皆が住む場所に案内する」


 広い部屋には沢山の食事が用意されていました。見た事もない美味しそうな料理が沢山あります。



「キュイキュ」


 ルルの声を聞いて肩を見ればヨダレを垂らしています。見た事もない肉料理が沢山あるようなので目が輝いていますね。

 その隣でポコナちゃんとココロちゃんも同じように目を輝やかせてヨダレを垂らしています。



 ……ネイナさんも魚料理を見てヨダレを垂らしていますね。



 マクスウェルさんは早速、料理を食べに行きました。ネイナさん、ポコナちゃん、ココロちゃんもそれを見て走って行きました。

 兄様はゼレンさんと何かをはなしているようです。



 ふと隣を見るとメアが鋭い目つきで何かを見ているようです。


「メア、どうかしましたか?」


「中々の執事やメイド達がいるようですね。村の人達は食事のマナーを知らないのが当然ですが、それを見て嫌な顔一つしません」


 同じ仕事をしている方達の仕事が気になったみたいですね。



 さてと、私も美味しそうな食事をいただきましょうか、ルルも我慢の限界のようなので。

お読みいただきありがとうございます。

商王国の首都をネポロからロンドールに変更しました。ネポロは村の名前にしました。

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