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第55話 二人の弟子

 兄様と合流して今度は荒らされてしまった家々の掃除をする事にしました。


 今皆さんが住んでいる家は中で人が亡くなっていなかった場所です。

 荒らされてしまい血だらけになってしまった家に入ると、家族を殺されたところを思い出してしまう方がいるそうなので許可をもらって一軒一軒綺麗にしようと思います。



「兄様、壊れてしまったテーブルなどを外に出して下さい。私は魔法で血の跡を消していきます」


「ああ、分かった」


 生活魔法で掃除をしていきます。

 あまり綺麗にし過ぎると皆さんが幸せに暮らしていた時の暮らしの跡も亡くなってしまうので慎重に血の跡や盗賊達の足跡と思われる泥をなどを綺麗にしていきます。


「よし、綺麗になりましたね」


「次行こうか」


 次々と家を綺麗にしていき、最後の家の掃除をしていると玄関の方から視線を感じました。


 見てみるとそこには顔だけを出したポコナちゃんとココロちゃんの姿があります。

 どうやらお昼寝から目が覚めたようです。


 私が見ている事に気付くと二人は隠れ、また暫くすると静かに覗いてきます。


「あの子達は何をしているんだ?」


「遊びなのではないでしょうか」


 兄様が二人について聞いてきました。

 懐いてくれているので隠れる必要もないので、何故隠れているのだろうと疑問に思いますが、二人の遊びなのかもしれないと考えてそっとしておいてあげます。



 生活魔法を使い家を綺麗にし終えると二人はまだこちらを眺めていました。

 心なしか目が輝いている気がします。


「何しているの?」


 しゃがんで二人に目線を合わせて聞いてみます。すると二人はもじもじしながら口を開きました。


「お姉ちゃんまほう使ってたから」

「まほう」


 魔法?


 ああ、生活魔法を使っていたのが珍しかったということですか、子供からしたら確かに見ていて面白いかもしれませんね。


「魔法初めて見たの?」


「ううん、お母さんが使ってた」

「ココロのママも使ってた」


 獣人の方は魔法が使えない人が多いはずですが、二人のお母さんは魔法が使えたのですか珍しいですね。


「狸人族と狐人族は獣人の中では珍しく魔法が得意な種族だからな」


 そんな事を考えていると兄様が狸人族と狐人族について教えてくれました。


 そうなんですか、ネイナさんも魔法は使えませんし、私の知り合いの獣人の方は魔法が使える方がいないので知りませんでした。


 そういえばフリーデン領、いや、今はオルドル領でした。あそこには狸人族の方と狐人族の方は住んでいませんでしたね。

 王都で狸人族の方と狐人族の方を見た事があったので知ってはいましたがその能力については今知りました。


「わたし達にまほうを教えて」

「教えて」


「魔法を?」


 理由を聞いてみると二人はこれから母親に魔法を教えてもらう予定だったようです。

 それに魔法が使えれば自分達の母親を助ける事が出来たのではないかと思っているようですね。



「んん、どうしましょう?」


 真剣な目をしている二人に困ってしまい兄様を見ます。


「ミレイの好きにするといい、後はこの国の兵士が来るまでは魔物などからこの村を守ることぐらいしかやる事はないからな」


 好きにしていいですか……


 二人の気持ちは分かる気がします。

 無力でいる事が辛いとこの歳で感じてしまったんでしょう。


 本当は戦うチカラを持たずに平和に暮らして欲しいのですが、今回の事や魔物に襲われる可能性がないとは言えません。


 この国の兵士の方が来て、落ち着くまでの少しの間ですが教えてあげる事にしましょう。

 まだ未熟な私ですが、少しだけならそれも可能なはずです。



「分かりました。少しの間だけですが、教えてあげますね」


「「やったー!!」」


 そう言うと二人は喜んで手を取り合ってクルクルと回りだしました。

 兄様はそれを見て微笑んで家の掃除が済ん事を報告してから馬の世話をすると言い、行ってしまいました。



 ◇



 早速、魔法の練習をする事にします。


「魔力って分かる?」


「「分かんない」」


 二人に魔力を感じる事は出来るのかを聞いてみるとまだ分からないようなので私の魔力を二人に流してみる事にします。


「どう、何か感じる?」


 二人の手を握りって魔力を流してみます。

 すると二人はビクッと震えて耳がピンと立ちました。


 どうやら何かを感じたようです。


「あったかい感じがする〜」

「あったかい〜」


 魔力を感じ取っているようです。

 魔法が使える人でも最初は魔力を感じとれる人は中々いないそうなのでこの二人には才能があるのかもしれません。



「それが魔力なの、二人の中にもそれがあるんですよ、目を瞑って集中してみて下さい」


 そういうと二人は目を瞑って手を握り締めてチカラを入れているように見えます。

 プルプル震えながらどうにか魔力を感じようとしている二人はとても可愛らしいです。

 チカラを入れれば魔法が使えると勘違いしているようですね。


 ずっと見ていたい気もしますがそれを止めます。



 最初から魔力を感じるのは難しいかもしれませんね。詠唱をして、しっかりとした魔法のイメージをすれば簡単な魔法なら発動する場合もありますから、とりあえず実践練習をしてみましょう。


「私が魔法を使ってみますからそれと同じ言葉を言って、目で見た魔法をしっかりと頭に思い浮かべるの」


 そう言うと二人は頷いて魔法を使うのを待っている。


「光よ来たれ、我が行く先を照らせ【光球(ライト)】」


 手の上に光の玉が現れます。

 これは簡単な生活魔法、消費魔力も少ないしイメージが簡単なはずです。

 人に害も与えるような危険がないので安心です。

 それを消して早速二人に同じ事をやってもらいます。


 まずはポコナちゃんから、


「ひかりよ、きたれ、われがゆくさきをてらせ【ライト】」


 すると彼女の小さな手の中に小さな光が現れました。本人もビックリしたのか直ぐに消えてしまいましたがたった一回で魔法を使うなんて凄いです。


「出来た!!」


 ポコナちゃんは初めて魔法が使えて興奮した様子で腕をぶんぶん振って踊り出しました。

 それを見てやる気になったのかココロちゃんが私の服を引っ張って自分の番とアピールしてきます。


「ひかりよ、きたれ、われが、ゆくさき?をてらせ【ライト】」


 詠唱をゆっくりと言い、手を出して光が現れるのを待ちますが魔法は発動しません。

 ココロちゃんは涙目になってこちらを見てきます。ポコナちゃんも踊りを止めて心配そうな目をしてこちらを見てきました。


「大丈夫よ、初めから上手くいく人なんて中々いないの、ココロちゃんはポコナちゃんより小さいでしょう? だからだと思うわ、もう一度やってみましょう」


 もっと魔法のイメージをしっかりと持つようにアドバイスをします。


 暗闇で手に持ったランプが道を照らすイメージをしてごらんと言うとココロちゃんは頷いてもう一度詠唱をし始めました。



「ーー【ライト】」


 すると彼女の手にと光が現れました。



「出来た……出来た!」


「ココロ!」

「ポコ姉!」


 抱き合って喜ぶ二人、先ほどのポコナちゃんと同じダンス?を二人で踊り出しました。


 とても可愛いです。


 持って帰りたいぐらいです。



 しかしこの二人は天才なのかもしれません。良い師匠がいれば凄い魔法使いになれるかもしれません。


 お母様に二人を紹介したら間違いなく喜ぶでしょうね。


 可愛い子が大好きですから。




「凄いわ、二人とも、魔法を使った時、自分の身体から何かが抜けたような感覚があった?」


「あったー、なんかふわってー」

「ふわってー」


「それが魔力よ、何度か魔法を使っていれば魔力だけを自由に操れるようになるからね」


「「はーい」」


 良い返事ですね。

 あとは注意をしておかないといけませんね。


「今日は魔法はもう使っては駄目ですよ」


「「何で?」」


 もっと魔法が使いたいのでしょう、首をひねって理由を聞いてきます。


 気持ちは分かります。


 初めて魔法が使えたんですから、もっと練習をしたいはずです。



「少し疲れたでしょう。魔法を使う事に慣れないと眠くなって、無理をして使えば気絶してしまうの、約束だからね」


 疲れたのが自分でも分かったのでしょう、文句も言わないで「はーい」と返事をする二人、辺りが暗くなってきたので家まで送っていく。

 魔力を感じる練習はしてもいいと言っておいたし、あの子達は良い子だからきっと私の言った事を守ってくれるはずです。



 ◇



「どうだったミレイ、あの子達は魔法を使えたか?」


 私達が貸してもらっている家に帰り、食事をしていると兄様がそう聞いてきました。


「はい兄様、ライトの生活魔法を教えたらポコナちゃんは一回で、ココロちゃんも二回目に成功しました」


 そう言うと驚いた顔をした兄様、


「そんなに直ぐに? 凄いな、もしかしたらミレイ並みの才能があるんじゃないか?」


「お嬢様が魔法を初めて使った時はエルザ様の使う魔法を見よう見まねで使って屋敷の壁を破壊していましたね」


 もうメアったら、そんな昔の事を持ち出して恥ずかしいです。確かにニ、三歳ぐらいの時に庭で魔法の訓練が何かをしていたお母様を見て魔法を使って屋敷を壊してしまいましたが……


「そんな話は聞いた事がないな?」


「その話をするとお嬢様が泣いてしまったので当時は黙っていたんですよ」


 ああ、また恥ずかしい話をして、全くもう、何でも知られているというのも困ったものですね。


お読みいただきありがとうございますm(_ _)m

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