第46話 トンネル作り
目を覚ましてテントを出るとお父様とシドさんが何やら話し合っていました。挨拶をして何をしていたのかを聞いてみます。
「何を話されていたのですか?」
「ああ、もしもここを外部の者が通る洞窟にする場合の道筋の事をな」
なるほど、魔晶石の事もありますからね。
外部の人達には見つからないように先に通路を考えておく必要があります。
「良い道は見つかりましたか?」
「ああ、魔晶石がある場所から離れた所を通路に作れそうだ」
それは良かったです。
あとはシドさんの出番という訳ですね。
こんな広い洞窟に手を加えていくのは大変だと思いますが、こればっかりは私では手伝えませんから。
「お父様、今日は何をするんですか? 洞窟の探索は殆ど済んだと思いますが」
そう聞くとお父様が今日の予定を話してくれました。
シドさんには直ぐに洞窟に手を加えてもらうそうです。トンネル作りよりも先ずは魔晶石の採掘場所を隠すみたい。
そして、シスイさんとネイナさんは遂に洞窟を抜けた先を探索に行くそうです。
それを聞いた私は目を輝かせてお父様に「駄目だ」駄目みたいです。
まだ何も言っていないのに拒否されてしまいました。何故私が言いたい事が分かったのでしょう?
ルルが呆れた顔をしながら私を見ているのは気のせいでしょうか?
「ミレイ、私達はシスイとネイナが帰ってくるまでにシドの手伝いをするぞ」
残念ですが、仕方がありません。
シスイさんとネイナさんは偵察するのが本職ですから、ですが安全が確認出来たらお父様にうんと言わせて見せますよ。
「……行ってまいります」
「お嬢様、安全が確認出来たら一緒に行くにゃ、そんなに残念そうな顔をしないで欲しいのにゃ」
「大丈夫です。お二人はお仕事で行くんですから、気をつけて行って来てくださいね」
二人はそう言うと私が開けた出口からまだ見ぬ地を探索に行きました。
よし、気を取り直してシドさんのお手伝いをしましょう。
シドさんは既に魔晶石があった場所に向かっているのでそちらへと移動します。
どうやら既に魔晶石があった場所は塞いでトンネル作りをし始めているようです。
流石仕事が早いですね。
「シドさん、何かお手伝い出来る事はありますか?」
「そうだな、地面を慣らすのは危険が少ないからそれをやってもらえると助かりますね」
シドさんから指令をもらったので、歩きやすいように地面をな慣らしていきます。
洞窟の中は岩だらけなので転ぶと危険なので丁寧にやっていきましょう。
馬や馬車が通る場合もあまり揺れない方がここに来たいと言う人も増えるでしょうから。
シドさんが手を加えた場所の地面に手をついて土魔法を使って整えていく。イメージは波、探知をする感覚で波を自分の周囲へと広げて行き、ぶつかった所を平坦にしていく。
「おおっ! お嬢様、随分と魔法を使うのが上手くなりやしたね。凄く効率の良い魔法の使い方じゃないですか」
「ほんとうですか!? 嬉しいです」
シドさんに褒められてしまいました。
土魔法の専門家であるシドさんに褒められるなんて光栄です。
砦作りの手伝いや村作りで何度も土魔法を使う機会があったので上手くなったみたいです。もしかしたら、攻撃魔法として使っても威力が上がっているかもしれないですね。
探索同様何日もかけてトンネル作りをしていきます。お父様はお兄様達と交代で、食料を持ってきたりしてくれます。
ルルは洞窟では暇でしょうから気になったら顔を出してと、自由行動にしました。
トンネル作りは順調です。
私はこんな広い洞窟に手を加えていくのは大変だと勝手に思っていましたが、とりあえず出入口までをしっかり整えればいいので、意外と早く進んでいきます。
もう何日も経過しましたがシスイさんとネイナさんはまだ帰ってきません。
大丈「ただいま帰りましたにゃ」帰ってきたようです。
「どうでしたか?」
「予想通りですにゃ、この先は商王国トルネイに繋がっていましたにゃ」
「……エルフの国は特殊ですので、そこには立ち入りませんでしたが、神樹国にも近い場所でした」
商王国トルネイと神樹国ハイエレンデ、この世界でも有名な二つの国。
商王国トルネイは強大な軍事力を持つわけではありませんが強大な軍事力に勝る経済力があります。それにより他国を寄せ付けない程の力を持っています。
あの帝国が一目置いている程の大国で、経済力は武力に勝るというのが信条でそれを実際に体現している凄い国です。
神樹国ハイエレンデはエルフの国、一部の者しか立ち入ることのできないと言われている謎の多い国です。
国の中心に神樹と言われる彼等の御神木があるとか、一度は行ってみたいものです。
「お父様は村の仕事に戻っていますから、直ぐに報告に行きましょう」
「了解にゃ、ですがこの洞窟も随分と綺麗になっていますにゃ〜」
「シドさんは凄いですからね。さっ、行きましょう」
村へと向かう。その間にシスイさん達から商王国の話を聞きました。
どうやら遅くなったのは商王国の首都まで足を運んだ為みたいです。
人並みが凄くて、流石は商人の国といった感じだったそうで、そこで信頼出来そうな商人を探していたそうです。
他にも様々な情報を集めていたらしいです。
世界から商人が集まるから世界の国々でもっとも情報が集まる場所らしいです。
「フリーデン家の噂も沢山ありましたにゃ、遂にエルドラン王国が盾を失ったと話題になっていましたにゃ」
そうなんですか、エルドラン王国が盾をね。……正直、私達一族は盾というより剣という性格の一族なんですけどね。
私達から帝国に攻め入る事はありませんでしたからそう言われているんでしょうね。
そんな話をしていると村につきました。
何日かぶりに村の人達に会うので皆さん挨拶をしてくれる。そんな皆さんと会話を交わしてお父様の所へと向かう。
「お父様、シスイさんとネイナさんが戻って来て下さいました」
「よく無事で帰ってきてくれたな、あの先はどうだった?」
「……あの先はやはり商王国、神樹国に続く土地で御座いました。魔の森に出る事もなく安全で御座います。あの道ならば商人も来るではないかと思われます」
「そうか……信頼出来そうな商人はいたか?」
「何人かに目星はつけていますにゃ、ですが、もう少し期間を頂いた方が良い者が見つかるかと思いますにゃ」
「分かった、良く知らせてくれたな、ミレイ、洞窟の具合はどうだ?」
「出入り口までの道はほぼ終わりました。後は中間地点などに休憩所などを作ったりすれば完成です」
そう言うとお父様はそれを聞くと何かを考え始めました。暫くすると何かを決めたのかアレク兄様を呼び出します。
「およびでしょうか父上」
「ああ、アレク、お前には暫く商王国に行ってもらいたい」
「商王国にですか?」
「ああ、拠点を持ち、この村と交易を行えるに足る信頼出来る商人を見定めて欲しい」
「……かしこまりました、何人か連れていってもよろしいのですか?」
「ああ、ネイナとマクスウェル、あとは……」
私、絶対、私、私以外の人が適任な筈がありません。絶対私、そう心の中で祈ります。
「……ミレイも行ってくるがいい「キュイ」あとルルもな」
そんな私の気持ちが届いたのかお父様が私も同行していいと許可してくれました。
やりました、私も商王国に行けます。
念じれば叶うとどこかで聞いた事がありましたが本当でした。
あまりの嬉しさにルルの手を持ってクルクルと回ります。
「では、冒険者として生活しようかと思います。準備を整えたら出発致します」
「ああ、重要な仕事だ、頼むぞアレク、 ……それとミレイがおかしな事に巻き込まれないように気を付けろよ」
「分かっております父上、ミレイは巻き込まれ体質ですからね」
お父様と兄様が何か小さな声で話し合っています。何でしょうかね? 私の事を話しているような気がしますが、気のせいでしょうか?
兄様から商王国で暮らす準備を整えろと言われたので部屋に戻って着替えなどを準備します。商王国、楽しみです。
それにお兄様が冒険者として生活すると言っていました。夢がもうすぐ叶いそうです。




