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第44話 洞窟探検

 ある朝、天気が良かったのでルルと北の森を散歩していると突然ルルが走り出しました。追い掛けてみると小さなルルですら入らないような小さな穴に鼻先を押し付けていました。


「どうしたの?」


「キュイ!」


 声を掛けると土で顔を汚したルルが私に視線を向けました。「ここを見ろ!」と言っているようなのでルルが顔を押し付けていた場所を見てみると小さな穴が空いていました。


 私にはただの穴にしか見えないのですがエル・リベルテを発見したルルが気にしているということは何かあるのかもしれません。【光球】を使って小さな穴の先を照らして覗いてみるとどうやら奥深くまで続いているみたい。


「奥まで続いているのでしょうか?」


「キュイ!」


 どうやらこの穴は先まで続いているみたい。土魔法を使ってルルが入れるぐらいのまで穴を広げてみるとルルはクンクンと鼻を動かしてから私に視線を向けると自分が確認すると言って穴に入っていきました。私も【光球】を使って中を覗いてみましたがどうやらかなり奥まで洞窟は続いているみたいでルルの姿は直ぐに見えなくなりました。


 エル・リベルテが安全な土地と言ってもこの洞窟が安全なのかは分からないので心配してずっと穴を覗きながら待っていると、しばらくして無事に帰ってくれました。ルルは奥深くまで続いていると報告してくれました。


「これはエル・リベルテ以来の大発見ですよね?」


「キュイキュイ」


「そうですね。私が洞窟に勝手に入ったらお父様とお母様に怒られるかもしれないので一旦村に帰りましょう」



 ◇



 村に帰る途中で釣竿とバケツを持ったネイナさんがいました。急いで村に向かう私が気になったようで手を振っています。


「ミレイ様そんなに慌ててどうしたんですにゃ?」


「北の森に洞窟があるのを見つけたんです。そこを探索していいかお父様に聞こうと思いまして」


「洞窟が? それは私も行きたいにゃ、レオン様から許可が出たらぜひ私も連れて行って欲しいにゃ」


 訳を話すとネイナさんは目を輝かせました。猫人族は好奇心が強いと言われていますからね。一人で行くのには不安があったので丁度良かったかもしれません。お父様から探索の許可が出たら一緒に行ってもらいましょう。


「分かりました。許可が出たら呼びに行きますね、とりあえず準備をしておいて下さい」


 そう言ってネイナさんと別れてお父様の元へと急ぎます。リビングの掃除をしていたセバスにお父様の居場所を聞くと執務室にいるみたい。



「お父様、前にお兄様が言っていた北側にある森の中に洞窟のようなものがあったんですが探索して来ても宜しいですか?」


「そんな所があったのか、魔物がいるなら出てくるだろうし安全だろうが念の為に誰かを連れていくなら行っても良いぞ」


「分かりました。先程ネイナさんに話したら行きたいと言っていたので、ネイナさんと一緒に行こうと思います」


「ネイナが一緒なら大丈夫だな」


「もしかしたら二、三日かかる可能性もありますが心配しないで下さい、魔物がいたら戦うよりも逃げる事を優先しますから」


「分かった…… お前も成長したからな、信用している。だが気を付けてな、準備を怠るなよ」


 お父様からの許可も得たので早速洞窟の探索に行こうと思います。

 洞窟は北の森の東側、人が入るには小さすぎる穴ですが慎重に魔法を使って入口を広げれば山肌が崩れることなく入ることが出来るでしょう。


 一日で探索を終えることが出来ない可能性もあるので数日分の食料と飲料水、寝袋を準備してネイナさんを迎えに行きます。


 ネイナさんは現在ご両親と共に生活しています。ご両親も元兵士で三人で釣りをする姿を良く見かけます。

 そこに向かうと大きなバッグを背負ったネイナさんの姿がありました。何をそんなに詰め込んでいるのでしょうか?


「ネイナさん、お父様から許可は貰えましたので、早速行きましょうか」


「分かったにゃ、洞窟探検楽しみにゃ」


 ネイナさんが背負った大きなバッグは私が次元収納に預かっておきます。あの大きさとバックを背負っていたら洞窟を進むことが出来るのか不安ですから。


 ルルとネイナさんと共に北の森へと向かって歩き始めました。道中のネイナさんはご機嫌で「魔黒〜石魚〜夏刀魚〜」と歌いながら歩いています。アラドヴァルや王都セルトラムでは聞いたことのない歌だったので、どこで歌われている歌なのか質問してみると一族に伝わる歌だそうです。流石は猫人族、魚に関する歌が家に伝わっているとは。

 ルルもそれが気に入ったのかリズムに合わせて尻尾を振るわせています。



 ◇



「此処かにゃ? こんな小さな穴をよく見つけましたにゃ」


「ルルが見つけてくれたんです。エル・リベルテを見つけたのもルルなんですよ」


「そうにゃんですか、凄いにゃルルは」


「キュイキュ」


 ネイナさんに褒められたルルはドヤ顔で仰け反っています。私の肩の上でそんな事をしているのでよろけて落ちそうになってしまいました。


 小さなルルは入ることが出来ますが、私とネイナさんはこのままでは入ることが出来ないので土魔法を使い入り口を作っていきます。洞窟の中はやはり真っ暗、ですが洞窟の中は私達が移動する十分な広さがあり、屈むことなく歩くことが出来るようです。


「【光球(ライト)】」


 生活魔法の【光球】を使い辺りを照らします。随分と入り組んでいるようですね。ルルが道案内をしてくれるようで「キュイ」と声を上げると歩き始めました。




 暫く進むと広い場所に出ました。



「わぁ〜綺麗な場所ですね。何ですかこの宝石みたいのは?」


 そこには美しい光景が広がっていました。

 どうやら洞窟全体に【光球】が反射するような何かがあるようで、まるで自分が天の彼方、星々の中にいるような気分になってきます。


「これは……」


「これが何か分かるんですか?」


「これは魔晶石にゃ」


「魔晶石……」


「これほどの魔晶石が出来ている場所は凄く珍しいにゃ、きっと此処が魔素の濃い場所だから出来たんだにゃ」


「鉱山で稀に発見されるとは聞いた事がありましたが、実物は見たことがありませんでした」


 ネイナさんはそれを見て驚きの表情を浮かべ、あれが魔晶石だと教えてくれました。フリーデン領は魔晶石を採取できる鉱山を所有していなかったので実物を見たことがありませんでした。魔晶石は魔物が持つ魔核と似たような使い道があります。ですが魔晶石の方が純度の高い物を安全に採れます。

 魔核の純度の高い物はそれ相応の魔物と戦わなければなりませんから、安全に魔晶石を採掘することが出来るとすればその有用性は計り知れません。

 危険や犠牲を強いることなく大きなエネルギーを得ることが出来るのですから。


「これは凄い発見にゃ」


「ええ、お父様に持っていってあげましょう」


 お土産に幾つかの魔晶石を採って先に進みます。


 この洞窟には様々な光景が広がっていて凄く楽しいです。

 鍾乳洞のようになっている場所や、綺麗な水が溜まっている場所、地面の裂け目もありそこは【光球】の操作範囲外まで続いていて、落ちたら無事では済まないでしょう。


 ネイナさんが言うには魔物の気配はしないそうです。ルルも何の反応もしないので安全な洞窟みたいです。


 もうずいぶんと歩きました。思った通り、ここは黒の砦側からエル・リベルテに続く洞窟よりも深いようで一日では探索しきれないみたいです。

 ルルが空気の流れを追ってくれているお陰で迷ったりはしていませんが食事を取ってそろそろ休むことにしましょう。





 目がさめると暗闇の中、魔法を使い辺りを照らします。洞窟の中はつねに暗く時間の感覚が分かりにくいため、自分達の感覚が頼りになります。ですがそこはネイナさんが頼りになります。どれだけ時間が経ったのかは正確に分かるそうです。


「随分と深い洞窟ですね、何処かに外に出れる場所があるんでしょうか?」


「出口があったら魔物が入り込んでる可能性が高いにゃ、風が吹いているという事は何処かに穴はあるかもしれにゃいけど、人や魔物が通れるような大きな出口はにゃいと思いますにゃ」


 今日もルルに先導されて先に進んで行くと一筋の光が差している場所にたどり着きました。

 本当に小さな穴から差す光ですがこの先が外に通じているようです。


「ネイナさん、此処から土魔法を使って外に出たら駄目ですかね?」


「んん〜 危ないと思うにゃ、魔の森に出る可能性が高い気がするし…… 魔物をエル・リベルテに入れる訳にはいかないにゃ…… でもちょっとだけなら見てみたい気もするにゃ」


「じゃあ、外には出ないで周りを見るだけにするのは如何ですか? それで直ぐに土魔法で穴を塞ぐんです」


「それなら大丈夫かもしれないにゃ、ちょっとだけですからにゃミレイ様」


 ネイナさんに相談して土魔法で外が見えるほどに穴を広げます。外は危険があるかもしれないので向こう側を覗くだけにしました。



「外はどんな感じなんですかにゃ、私も見たいですにゃ」


 直ぐ外は木々が見えますが、あまり深い森という訳ではないようです。

 木々の奥に平原が続いているのが見えるので、如何やら懸念していた魔の森の中ではないようですね。


「魔の森の中ではないようですよネイナさん」


「本当にゃ、この辺りはどこかにゃ? エル・リベルテの位置と洞窟を進んだ方向からすると…… 商王国の端っこ辺りに位置しているかもにゃ」


「それが本当なら、商人を村に呼べるかもしれないですね」


「良い考えですにゃ、早速レオン様に報告するにゃ、目印に穴を小さく開けて他はしっかり塞いくださいにゃ」


 魔物を洞窟内に侵入させないようにしっかりと穴を塞いで元来た道を戻っていきます。二日をかけて慎重に進んできましたが、今回は探索目的ではないのでルルの案内の元、急いで洞窟内を進んで行きます。


 これは大発見ですよ、村の人以外の方達との交流は村の発展には欠かせないですから。



 ◇



 大至急村に戻ると外は暗くなっていました。お父様の元へと急ぎます。


「お父様、大発見です。あの洞窟はこの山の向こう側まで続いていました」


「ほう、どんな様子だったのだ?」


「魔の森の中という感じではなかったです。直ぐ向こうに平原が広がっているのが見えました」


「ネイナはどう思った?」


「おそらく商王国、若しくはエルフの国に繋がる平原ではないかと思いますにゃ」


「そうか…… それは良い知らせだ。今度詳しく調べに行かなくてはならないな、二人とも良くやってくれたな」


「——あっ」


 他にも発見があった事を思い出しました。ネイナさんとルルは忘れているようで同時に首を傾げました。


「どうしたミレイ、他にも何か報告があるのか?」


「洞窟に魔晶石がありました」


「——なんだと、 誠か!?」


「はい、これはお父様へのお土産です」


 魔晶石を取り出してお父様に渡します。

 すると目を見開いて驚きの表情を浮かべて魔晶石を手にとり、何かを呟き始めました。


「これは……なんという立派な魔晶石なんだ…… ミレイ、ネイナ、魔晶石については極秘にする。もし帝国にでも知られたら攻めてくるかもしれん。商王国にも注意が必要だが……これは村の財産になる。慎重に扱おう。本当に良くやってくれたな二人とも」


 予想外に褒められてしまいました。ネイナさんなんて尻尾が千切れそうなくらい動いています。

 商王国にもエルフの国にも行った事がないので、その旅には絶対について行きます。


 今から楽しみです。

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