第41話 村での暮らし
村の一員となってくれる方たちが来てくれた翌日、お父様が改めて挨拶をするために人々を集めた。
「皆んなよく来てくれた。国を出る前に話したが、私はもう貴族じゃない。これからは対等だ。協力して良い村にしていこう、レオンと呼んでくれて構わないからな」
そう言うと皆さんは騒ついて話し合いを始め、村に来てくれた方の中から顔役の一人が代表して話を始めた。
「レオン様、やはり直ぐに対等に接するというのは難しいかと思います。子供達は直ぐに慣れるかもしれませんが我々は中々…… レオン様はこの村では村長のような形をとるという事で宜しいのでしょうか?」
「とりあえずはな、アンセラーに任せようかと思ったのだが、断られてしまったからな」
「それでしたら、今まで通りで少しづつという形で宜しいでしょうか? 村長も領主と同じように指導者ですし、より接する機会は増えると思うのでその中でレオン様の望む形になっていくのではないかと思います」
「そうだな、分かった。私も皆とより親しくなるよう努力するからな、では皆でどのように村暮らしていくかを話し合おう。下準備は出来ているが役割は決めなくてはな」
お父様は新しく村人となった方達と話し合いを始めた。村長の役割について、どうやって暮らしていくのか、村の法についても話し合っているようだ。
私はそういったことではあまり役に立てないので自分の部屋でのんびりとすることにした。最近は働き詰めだったからのんびりするのも悪くない。
「……ではそのように致します」
「ああ、頼む」
村の人達には自分達に出来る仕事をしてもらうことになったようで数日様子を見ることになった。
その多くは畑仕事をすることになったが、専門の技能を持った者達はほの技能を生かすことになり、それぞれが自分の仕事を一生懸命こなしてくれている。
まだ外部との流通がないため宿屋や食事処などを営んでいた方達は仕事が出来ないのでそういった方には一旦、畑仕事などを行ってもらっている。
いずれは宿屋や食事処も必要になるので建物の準備も順次行っていくらしい。
「ミレイ、これからは魔法で何でも手伝っては駄目だぞ」
「何故ですか?」
「畑仕事もお前のような高い素養を持つ魔法使いが手伝えば直ぐに終わってしまうだろう、だが人の仕事を奪ってしまえば人は堕落してしまう、分かるだろう?」
なるほど、魔法を使えば人の仕事をとることになってしまうかもしれない。
「分かりましたお父様」
「彼等には如何しても無理な事を手伝うんだ。我々は我々にしか出来ない事をやるんだ」
それからの村には人々の笑顔が見て取れ活気に満ち溢れている。それぞれに出来ることをやって幸せそうだ。
元兵士の方達は黒の砦で辺りを監視、エル・リベルテへの入り口を守り、狩りを行ったりしている。
今のところ村での生活は順調だ。元々、団結力が強い人達なので村での諍いは起こってはいない。なので村の見回りなどは必要ないが将来、人が来るようになったら必要になってくるのだろう。
私は普段、狩りを行ったり、お兄様に鍛えてもらったりして過ごしている。
本来は学園に通っている筈なので、勉強もしながら、沢山の事を学んでいる。
セバスとメアは前と同じようにフリーデン家で働いくれている。何でも出来る彼等だがフリーデン家に仕えることに以外には興味がないようだ。最近メアは以前よりも厳しい訓練をつけてもらっているらしい。私も負けていられない。
シドさんは村の人達と一緒に畑仕事をしている。元々魔法を使わい土弄りが好きらしい。
土を実際に触って生活していると魔法にも応用できる事が多いそうで、私にも自然をよく知った方が魔法が上手く使えるようになると教えてくれた。
マクスウェルさんはのんびりと釣りをしている。村にもしものことがあったら直ぐに動けるようにしているのだと言っていました。
即応部隊だと自分では言っていたがお母様に叱られている所を見るとただのんびりしているだけのようだ。
キールさんは黒の砦でや南の洞窟での警戒任務をこなしている。ディオンさんとエマさんも同じく監視警戒を行い村の安全を守ってくれている。
ティナさんは村で医者のような仕事をしている。どうもこの村の人達は頑張りすぎてしまうので忙しいそうだ。
薬草の栽培も行っていて、本職の医者に来て欲しいとお父様に頼んでいた。
シスイさんは斥候としての能力を活かして辺りの警戒と、必要に応じてオルドル領へと向かい、情報収集や村に必要な物を買いに行ったりしているようだ。
「あっ? ミレイ様だ」
「本当だ!ミレイ様がいる」
「ミレイ様〜」
「何か真っ白いのが肩に乗ってる〜」
私が村を歩いているとそれに気付いた子供達が駆け寄ってきた。オコジョさんに気付いた子供達は手を伸ばして触ろうとしたが、それを嫌がって避けている。
如何やら小さい子供は苦手のようですね。
子供達はそれでも楽しんでいるようなのでいいんですが、私にも簡単には触らせてもらえませんでしたからこの子たちが触ることを許されるのも少し先になるかもしれませんね。
村には兵士の子供や村の人の子供達二十人が住んでいる。村に子供を預けられる場所を作りそこでまだ仕事を手伝えない五歳以下の子供などは預けられている。
赤ん坊はまだいないですが若い夫婦もいるのでこれから沢山の子供が増えてくれると思う。
「今日も元気ですね、何処かに行くんですか?」
「今日は湖で遊ぶんだ」
「お弁当も作って貰ったんだよ」
「お魚を釣って父ちゃんと母ちゃんに食べて貰うんだ」
エル・リベルテが安全ということもあり、村の外の草原や湖などに遊びに行くこともあるようで何度か村の外や湖で遊ぶ姿を見ている。自然の中で自由に遊べるというのは子供にとっては素晴らしいことだと思う。普通なら魔物を恐れて子供だけで街の外に遊びにいくことなど出来ないから。
「皆さん楽しんできて下さいね、危ない事をしてはいけませんよ」
「ミレイ様も一緒に行こうよ」
「釣りしよう!」
「一緒に木に登ろうよ」
昨日狩りはしましたし、今日は特にやることも決まっていないので子供達と遊ぶことにしましょう。
「分かりました、今日は一緒に遊びましょう」
私の返事を聞いて喜ぶ子供達の声を聞きながら、子守をしている女性にも了解を貰って一緒に湖に向かう。
子供達が釣りをしようと言うので一緒に釣りを始める。彼等は可愛らしいサイズの魚を次々と釣り上げていくが私だけいっこうに釣れない。
最初は子供達も「まだ釣れないの〜 」と楽しそうに笑っていたが、あまりにも釣れなく、私の顔が沈んでいくのを見てまだ幼い子供達は気を遣って他の遊びをしようと私を誘ってきました。
子供に気を使われる私は何なのでしょうか……
いや、良い子に育っているのを喜ばないといけないですね。
「木登りをしようよ」
子供達は湖の周りにある木に登り始めた。先程の失態を取り戻そうとスルスルと木の上まで登っていくと子供達から「わあ〜凄〜い」と歓声が上がった。
木の上に登れない子供は私が抱えて登って順番に景色を見せてあげる。
その後もお弁当を一緒に食べてまた遊び始めました。子供の体力は大したものです。魔物との戦闘を楽にこなす兵士達ですら疲れさせてしまうのですから。
「今度はオーガごっこしようよ」
オーガ役は私になったので子供達を追いかけていくり「キャッキャ」と声を上げながら逃げる子供達を追いかけて行くのはとても楽しく私も夢中になって遊んでしまった。
ヤンチャそうな男の子がオーガ役になると静かにそれを見ていたオコジョさんを追いかけて行く。
如何やらオコジョさんもオーガごっこの遊びに入っていたようだ。
オコジョさんは全く力を抜く事なく子供達の間をすり抜けて触らせない。
いや、わざわざ足の間を通り抜けたりしているから遊んであげてはいるのかもしれない。
一緒に子守をしていた女性がウトウトし出した子供の様子を見て村に帰ろうと言う。すると子供達はまだ遊べると駄々をこね始めた。
「また一緒に遊びましょう、だから今日はもう帰りましょう? ここで眠ってしまったら大変ですからね」
また一緒に遊びましょうと私が言うと子供達は素直に従ってくれた。皆んなで手を繋いで村へと戻る。
「クゥーキュイキュ」
ああ、疲れた、子供の遊び相手なんてやるんじゃないぜとでも言うように手を上げて首を振っている。
ですが子供達から好かれている事が実は嬉しいのか満更でもないように見える。
「お父様、今日は子供達と遊んだんですよ」
「そうか、子供はこの村の宝だからな、大切にしなければならない」
「はい、分かっています」
あの子達の為にも頑張って暮らしやすい村にしていきたいです。




