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第40話 村の始まり

「ここがエル・リベルテだ。どうだ綺麗な場所だろう。魔物もいない平和な場所だ。皆でここを発展させていこう」


 ゴブリンの大群を迎え撃ち撃退した後、黒の砦の周辺を綺麗に片付けた。それからシスイさんを始めとした兵士の皆さんを連れてエル・リベルテにやって来た。お父様が誇らしげに私達のご先祖様が暮らしていた土地を紹介していく。


「凄く綺麗な場所にゃ、湖に魚もいっぱいいて素晴らしい場所だにゃ」


 皆んなそれぞれ感嘆の声をあげる中で一人だけ少し違った感想を言っている方がいた。どうやら猫人族のネイナさんにとっては魔物がどうこうよりも魚が沢山獲れそうなことが嬉しいみたい。

 

 猫人族にとって魚はなくてはならないものだとよく聞きますしね。そういえば学園の書物の中にも『猫人族の魚戦争』という本があった。


 何でも国に魚を食べる事を禁止されたことに怒った猫人族が反乱を起こして一つの国が滅亡したとか、創作ではく実際の出来事らしい。彼等にとって魚はそれほど重要なものなのでしょう。ネイナさんにとって住みやすい土地のようで良かった。


「……魚はともかく確かに素晴らしい場所です。守りやすい地形でもありますし、人が住むには適した場所ですね」


 シスイさんも初めてこの場に来たのですが嬉しそうに口元を緩めている。


「ああ、平和な村を作れそうな場所だ」


「こんな所にこの様な素晴らしい場所があるとは驚きだ」


「これでこの村を発展させていくことが出来ますね。お父様、もう黒の砦から此方に移るんですよね?」


「ああ、必要になりそうな物は持ってきているしな、人数が増えてきたら黒の砦にも人を置くがそろそろ此方に移り住もう」


「……レオン様、申し付けられていた通りの物を用意しておきました」


 そう言うとシスイさんは鞄型のアイテムボックスをお父様に手渡した。


「それは?」


「ああ、シスイに必要になりそうな物を買って来るよう頼んでおいたんだ。これでもっと暮らしやすくなるだろう。さて、この村での生活の始まりだ」


 それから新たな生活が始まった。

 人数が増えたため新たに家を作っていく。畑を皆んなで協力して耕し、湖で使う船を作って魚を釣り、動物や魔物を狩って食料としたり、その素材を使って様々な物を作ったりして日々の生活を送る。


 エル・リベルテから黒の砦、そこから沼の先までマクスウェルさんと協力して道も作った。マクスウェルさんはお母様に言われてイヤイヤやっていたけど。

 私達に敵対する者に見つかったらどうするんだろうと思いお父様に相談したが大きな問題にはならないそうだ。洞窟以外からの侵入はまず不可能で、この場所の特性上多くの兵士達を送り込む事は出来ないからだ。


 ゴブリンの襲撃から数ヶ月が経ちましたが特に問題は起こっていない。やはりここは過ごしやすい場所のようだ。


 そしてこれから来てくれるであろう人達のための家も作っていく。細部までこだわって作った訳ではないが最低限暮らしていけるはず。家を自分好みに改装していくのも楽しみの一つになるでしょうしね。


 受け入れる準備もある程度整ったのでそろそろ良いだろうという事でシスイさんとネイナさんがアラドヴァルに向かって旅立っていった。

 私達の村に来たいと望んでいる方を迎えるためだ。シスイさんにはギムルさんの事を話しておいた。

 これでギムルさんとの約束を果たすことが出来る。どれほどの方が来てくれるか分からないが街の人達を迎える準備の為、最近は忙しくしている。


「お父様、どれくらいの人が来てくれますかね?」


「そうだな…… 街の暮らしも良くなっているだろうからそれほど多くの者は来ないかもしれないな。だが少ない方が助かる。暫くは自給自足の暮らしだからな」


「そうですね。少しでも来てくれるだけで嬉しいです。それに楽しみです。この村を見てなんて言ってくれるのか」


「ああそうだな。そう言って貰えるようにもう一仕事しなければな」


「はい」


 頑張らないと。そうだ! ギムルさんの家は私が作りましょう。鍛冶に使う窯などは難しいでしょうがシドさんに教えて貰えば多分大丈夫なはずです。


 来てくれたら良いんですが……



 ◇



 それから暫く経って家々の準備も整った頃、シスイさんが多くの人々を連れて村に戻ってきた。百名ほどいるように見える。


「皆、よく来てくれたな。此処はエル・リベルテという我が祖先から伝えられていた土地だ。此処まで来るのは疲れたであろう。詳しい話は後にしよう。家は用意してある。休んでくれ」


 お父様の姿を見た人達の目には涙が見える。やはり長年自分達の領地を治めてきてきたお父様を心配していたらしい。


 やって来てくれた人たちに軽く挨拶をして、疲れているだろうとシドさん達に案内されて街の人達はそれぞれ新しく作られた家へと向かっていきます。


「よく無事に街の者達を連れてきてくれたなシスイ、大変だっただろう」


 此処まで街の者達を案内してきたシスイさんを労うお父様。


「……いえ、多くの兵士達も協力してくれましたので大した苦労はしておりません。レオン様もご存知の通り、あの街の者達は逞しい者達ばかりですので」


「そうだったな、何名の者が来てくれたのだ?」


「……はい、元兵士が五十名、街の者が四十名おります」


「そうか、よく来てくれたな、ところでネイナの姿がないが如何した?」


 お父様はシスイさんと一緒に街へと向かったネイナさんの姿が見えない事を何かあったのかと尋ねます。



「……此方に来たいという人数が多かったものですから、日をずらしてこちらに向かう事になりました。只今こちらに向かっている最中ではないかと」


「そうか……それでアンセラーお前はこちらに来て大丈夫なのか?」


「お久しぶりでございますレオン様、ええ、あの街で私が出来る事はもうないかと。エスト様はよくやって下さっています。此方に行く事を許可も頂きました」


「そうか、後で聞かせてくれ。如何だここは、いい場所だろう」


「はい、素晴らしい場所で御座いますね。レオン様御一家が幸せそうで安心しました。こちらに来ることの出来ない者達も喜ぶでしょう。王国を出るというご判断は間違っておりませんでしたな」


「ああ、そうだな」


「アンセラーさんお久しぶりです」


「これはミレイ様、お元気そうで何よりです。何やらゴブリンの大群と戦われたとか、心配してしまいましたぞ」


「大丈夫です。私もこの旅で逞しくなったんですからよ」


「それは頼もしい、ミレイ様も成長なさいましたな」


 それからアンセラーさんにどんな事があったのかを話します。オーラは相変わらず凄いですが何処か和らいだ気がしますね。


 重臣という立場から退いた為でしょうか?



「ミレイ、話はそれ位にしておけ。アンセラー疲れたであろう。しっかり疲れをとってくれ」


「レオン様、私はまだまだ現役ですぞ。……ですが今回は御言葉に甘えるとしましょう。ではミレイ様、失礼します」


 そう言ってシスイさんに案内されて家に向かいました。和らいだと言ってもアンセラーさんは相変わらず凄い威圧感がありました。


 村に来てくれた人々を見渡していると、その中に髭面の見慣れた顔があり思わず笑顔が溢れました。


「ギムルさん来てくれたんですね」


「おう、お嬢久しぶりだな。シスイってのが態々来てくれたからな。それにしてもいい場所じゃないか、山に囲まれ良い鉱石も出そうだな」


「ギムルさんの家は鍛冶が出来るように特別に作っておきましたから、こっちですよ」


 変わりないようで安心しました。話を聞けば特に問題は起こしていなかったようです。旅の話をしながらギムルさんを連れて工房へと向かいます。


「如何ですか? ギムルさんが住んでいた家を参考にして私が作ってみたんです」


「ほお……良い家じゃねぇか。前の家よりも立派だしな、ありがとうよお嬢」


「いえ良いんです。素晴らしい短剣を頂きましたし、その御礼です。それより疲れたでしょう。こちらが寝室になっているので休んで下さい」


 窯なども見てもらったんですが十分に使えそうだと喜んでくれました。シドさんに教えてもらいながら頑張った甲斐があります。

 疲れているでしょうから話はここまでにしてギムルさんに寝室を教えて休むように言います。




 ネイナさんが連れてくる人数を聞いて、シドさん達と急いで家を作っていきます。

 考えていたよりも多かった為、私達は忙しく働いています。


 シスイさんが言うにはもっと来たいと考えていた人もいたようです。

 ですがこれ以上は無理だと判断したようで、アンセラーさんが来る人を選んだそうです。


 それから五日ほど経ってネイナさんは兵士六十名、街の者三十名を案内して村にやって来ました。


 皆さん先日の方たちのようにお父様を見て涙を流したり、嬉しそうに表情を緩めたりしています。


 ネイナさんは疲れたと言っていましたが、焼き魚の匂いがした瞬間消えるように走り去って行きました。ゴブリンと戦っていた時よりも素早く動いているように見えます。恐らく魚を食べに行ったのでしょう。


 私達が考えていたよりも多くの者達が来てくれました。この人達と協力して良い村を作っていこうと思います。

オコジョの名前考えるの忘れてました(;゜∇゜)ノ

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