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第32話 オコジョが語る

「キール、異常はなかったか?」


 今日も一日、エル・リベルテで村作りをして黒の砦へと帰って来た。お父様が辺りを警戒していたキールさんに変わったことがなかったかを尋ねる。


「特に異常もなく、魔物が攻めてくる事もありませんでした。……勘違いかもしれませんが、一匹のゴブリンがこちらの様子を伺っているように見えました……何もする事なく去っていきましたので」


 ゴブリンは離れた場所から隠れながら砦を伺っていたらしい。だが何をする訳でもなく辺りを見渡してから去っていったそうだ。


 弓の名手であるキールさんならどれだけ離れていても簡単に倒すことも出来ただろう。ゴブリンは一匹倒すと何処からか無数に湧いて出る場合があるので、近くに村や町がある場合や、数が増えすぎて危険がある場合、敵対してきた場合を除いて、通常なら冒険者でも無視するのが普通だ。


 ゴブリンは加工できる素材もなく、魔石も小さいため進んで狩るのは冒険者になりたての駆け出しぐらいだ。



「ゴブリンが偵察に? 只のゴブリンはそのような真似をしないだろうが……前に戦った群の奴かもしれないから注意しておくか」


 ゴブリンが?


 なんでしょうか……


 するとその話を聞いていたオコジョさんがビクッと震えて私を見ている。何か言いたい事があるようだ。



「キューイ、キュキュ、クイ……」


「そうだったんですか……お父様達にも言わなければなりませんね」


 ◇


「そうか……ゴブリンどもはお前を狙っているかもしれないと」


 オコジョさんが森で倒れていたのはゴブリンに襲われたせいだったそうだ。

 多くのゴブリンの攻撃を避けて何とか逃げ出すことには成功したものの身体中の怪我の所為で動けなくなってしまいそこで意識を失ってしまったらしい。


 そこを偶々私が通りかかったようですね。


 オコジョさんはいつものように森を歩いていた。すると突然ゴブリンが襲ってきて捕まりそうになった。


 その時反撃したがそれに激怒したゴブリンは群れで追いかけて来たらしい。それが凄く大きく強そうなゴブリンだったらしくて、もしかしたら群のリーダーだったのではないかと言っている。


 今考えれば以前襲ってきたゴブリンナイトがオコジョさんのいる馬車を狙っていたように見えた理由もそれで納得がいく。


「そうか……小さいからと油断した所を反撃されて激怒したのかそいつは」


「キュイキュイ」


「そんな……迷惑をかけるかもしれないから出て行った方がいいかもしれないと行っています」


 オコジョさんは悪くないのに……


 お父様は周りの方達に何を話す訳でもなく周囲を見渡した。


「出て行く必要はない、エル・リベルテを見つけてもらった恩もあるしな、お前はもう私達の仲間だ。それにお前が出て行けばミレイが悲しむ」


「キュイキュ」


「まだゴブリンが来ると決まった訳ではないが、我々に手を出そうというなら戦うだけだゴブリン如き幾ら来ても負ける我々ではない、数が多くて面倒なだけだ」


「これからはシドと数人でエル・リベルテに手を加えていってもらい、後の者はここに残り、警戒しよう」


 いつ来るか分からないゴブリンの為にずっとここで警戒している訳にはいかない。村作りを進めながら警戒しようという事になった。


「しかし、お前は本当に頭の良いオコジョだな」


 マクスウェルさんがオコジョの頭を撫でる。オコジョさんは頭が良いと言われて満更でもないようでくすぐったそうにしてなすがままにされている。


「いつもオコジョと話して、お嬢様……頭おかしくなったんかと思ったわ」


 その瞬間、マクスウェルさんに向かって多方向から殺気が放たれた。


「怖ッ——痛ッ!」


 先ほどまで撫でられていたオコジョさんはマクスウェルさんの手に噛み付いた。

 手を振って払い落とそうとしているが、噛み付いたまま離れずオコジョさんはプランプランしている。


「……あ、あの……し、心配して、レ、レオン様、冗談です、よ?」


 マクスウェルさんはお父様達によって裏へ連れて行かれた。


 数分後、少しボロボロになったマクスウェルさんとストレス発散が出来たようなスッキリとした顔をしたお父様達が戻ってきた。


 皆んな本当に仲が良いんですから。



 ◇



「そういえば……幼い時、お嬢様が鳥と話しているのを見た事がありました」


 メアはふとした瞬間に幼い頃のことを思い出した。ミレイがまだ幼い頃、屋敷の庭で一羽の小鳥と楽しそうに話しているのを見たことがあった。

 ミレイはこの子が街の様子を教えてくれるのと言っていた。


 凄く懐いているようには見えたが鳥の言葉が聞こえる筈がないと思っていたメアは鳥の話が聞こえる筈がないですと否定し、もうやめるように注意をした。

 餌をあげることはあったがそれ以降話すことはなくなった。


「誠かメア」


「はい……私には聞こえないと言ったら、それ以降は話さなくなりましたが……そういう才能があったのかもしれません。私が迂闊でした」


 メアは意地悪をして否定した訳ではなく、純粋に鳥と話すミレイを見て心配して、鳥と話すことをやめるように注意した。


「気にするなメア、私でもそう言う。そうか……そういう才能もミレイにはあるのかもしれないな」



 ◇



 そういえば幼い頃にそんな事があったような。


 そうです……確か……一羽の小鳥さんの言うことが分かってよく庭で話していました。メアに注意されて、それから小鳥さんとは話さなくなって……


 それからは小鳥さんも来なくなったので、やっぱり私の勘違いだと思っていましたが、


 オコジョさんと話せるなら素晴らしい能力を神様から頂いたのかもしれません。


「ミレイ、他の動物や魔物の声が聞こえたりする事はあるのか?」


「いえ、気こえた事はないです。幼い時も小鳥一羽だけで……それからはオコジョさんの言う事が分かっただけです」


「そうか……偶々通じ合う所のある動物だったのか……それとも法則があるのか……まあ話が理解出来て困ることはないからいいとするか」


 折角オコジョさんと仲良くなれたんです。ゴブリンが攻めてきても守ってあげますからね。

貴族の名前にはフォンを追記しましたので、それ以外の者達にも家名?苗字?を加えていこうと思いますm(_ _)m

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