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第21話 襲撃者の正体

「さようなら」


 尋常でない殺気を感じて心臓を掴まれたような錯覚に陥ると同時に背中に衝撃を受けるミレイ。全身から力が抜けて立っていることが出来ないのか人形のように膝から崩れ落ちて動かなくなった。



「「「——っ!?」」」


 突然現れた気配と殺気に周りにいた全員がミレイの方に振り向いて動き出した。

 レオン達家族はミレイの元へ、セバスとシスイが敵を近づかないようミレイと何者かとの間に入った。そしてシドが土魔法でミレイを守るための陣を素早く作り出す。つい先ほどまでと雰囲気が一変した。



「「貴様!!」」


 一瞬の間にキールが何射も氣を込めて矢を放ち敵の急所を狙う。マクスウェルからは濃い魔力が溢れ出て魔法の詠唱をする。

 ほとんどの矢は避けられるが一本の矢が敵の喉元を貫こうと迫っていく。しかし敵が短剣で払い矢の軌道をずらした。惜しくも命中することはなかったがキールの放った矢の衝撃を流すことは出来なかったようで態勢が崩れた。


「——喰らえ!!【双龍圧砕】」


 そこを狙いマクスウェルが水魔法を使う。恐ろしい程の水圧を宿した二頭の水龍が敵を飲み込もうと向かっていく。体勢を崩している敵に避けようのない攻撃が迫る。そして水龍が噛み砕いたと思った瞬間その姿が霞のように闇に消えた。驚きの表情を浮かべたマクスウェルとキール、辺りを見渡すがその姿はない。



「——ミレイ無事か!?」


 膝をついて座り込み動かなくなったミレイの元にすぐさま駆けつける家族達、レオンが呼吸を確かめて安堵の表情を浮かべた。命に別条はない。

 そしてミレイに声をかける。

 自然に目が覚めるのを待っていたいが、正体不明の敵が近くにいる中で意識を失ったままでは危険だと判断した。



「フハハッ、俺の言った通りになったな、だから言ったんだ! 貴様らはそのガキの様に殺されるんだよ!!」


 先にミレイたちを襲撃して捕まっていた襲撃者の一人が喜悦に入った表情をしてレオン達を嘲笑った。


「——黙ってろ糞野郎が!!」


 その言葉に頭にきたシドは姿を消した敵に意識を向けながら縛られたまま高らかに笑っている襲撃者に向けて土魔法を使った。


 高速で放たれた岩石が襲撃者の胸付近を直撃した。目を血走らせながら笑みを浮かべていた男は苦痛に顔を歪め、大量の血を吐きながら吹き飛んでいく。そして倒れたまま動かなくなった。運が良ければ生きているだろうがそんなことに構う者はいない。


 レオン等に声を掛けられたミレイは暫くして意識を取り戻した。ビクッと身体を揺らして目覚めたミレイは怯えた様子です辺りを見渡す。

 そして目の前にいる両親や兄に気付いて表情を緩めた。しかし身体の震えが止まらない。


「……わ、私は平気です。け、怪我もしていません」


 ミレイは自分は平気だと震える声で伝えた。レオンとエルザは娘が無事目を覚ましたことに安堵して抱きしめる。それを見た兄達も安堵したように深く息をついた。



「フフフッ、殺すつもりはありませんよ」


 姿を消していた敵がまた忽然と現れて口を開いた。決して大きくはないその声、しかしその場にいる全員がその声を聞いた。

 殺す気はなかったという言葉は事実だろう。実際にミレイは生きているのが何よりの証拠だ。

 キールやマクスウェルなどの実力者の攻撃を全て躱すほどの者があの状況で殺し損ねるなどあり得ないのだから。


 だが殺す気がなかろうがミレイに手を出したことに変わりはない。娘の無事を確認したレオンはエルザにミレイを任せて立ち上がった。

 そして無言で片手を突き出す。すると突然一メートルを超える鋭い穂先を持つ槍が現れた。


 それは代々フリーデン家の当主と共に多くの戦場を駆けてきた魔槍グングニル、強大な力を宿したその槍の穂先を再び姿を現した敵に向け、周囲の空間が揺らぐほどの闘氣を漲らせてレオンは問う。


「——貴様、何者だ?」


 魔物でも恐れ慄き逃げ出してしまうような威圧感と殺気を受けても敵は表情を崩す事なく不気味な笑みを浮かべている。



「怖い怖い、流石はレオン・フリーデン。エルドラン王国で絶対に手を出してはいけない一族の長、私の名はメフィスト、エルドラン王国にて闇の稼業を営んでおります」


 顔を隠していた黒いフードをとり、胸に手を当て頭を下げてメフィストと名乗った男。

 決して強そうには見えない。青白い肌、体はそう大きくはない。しかし黒髪に血の色のような紅い狂気を孕んだ瞳と邪悪な氣が只者ではないことを窺わせる。



「……メフィスト、聞いた事がある。エルドラン王国の闇の者全てを取り仕切る組織の長が代々受け継ぐ名前だと」


 エルドラン王国には敵対する貴族の暗殺や商売敵の商人の暗殺など表沙汰にできない仕事を請け負う闇の稼業を行う者達がいる。

 そしてその中でも組織としての歴史が最も古く、他の組織や国々に大きな影響力がある組織があると言われおり、その長は代々メフィストという名を継ぐと言う逸話があった。



「フフフッ、これは光栄、我が名を知って頂いていたとは」


「……貴様ほどの者を送り込んできたのかエルドラン王国は」


「勘違いなされませんように、私は皆様を殺しに来た訳ではありません」


「……ならば何故このような所までやって来た」


「それはそこに転がっている者達の始末をつけるためですよ」


 最初に襲撃して来た者達の始末をつける為だと言う言葉に眉をひそめる。


「その程度の者は我が組織にはいませんよ。その者達は最近他国から流れてきた者達でしてね。好き勝手振る舞うので大変困っていたのですよ」


「……」


 話の筋は通っている。だがそれだけではないだろうとレオンたちは疑いの目を向ける。メフィストが率いる組織は数多く存在する闇の組織の中でも伝説的な存在である。そんな彼の組織にあの程度の存在がいるとは信じ難い。



「我々の稼業をしている者にも幾つか掟があるのですがそれを守らない者達でしてね。その内の一つにフリーデンに関わる仕事は許さないというものがありまして、その掟を無視して貴族の依頼を受けてしまった彼等に罰を与えるために急いで参ったのですよ」


「……フリーデンに関わる仕事は許さないだと?」


「ええ、我々闇の稼業の者達はかつてフリーデンを消す為に刺客を送っていたんですがその度に撃退されまして。そしてある時、一人の女性に手を出しましてね。……その報復にその件に関わりのない組織を含めた全体が壊滅しそうになりまして、それで遠い昔にフリーデンには手を出すなという掟が出来たのですよ」


 その話には思い当たる節があったレオン。フリーデン家の歴史をまとめてある本にそのようなことが書かれていた。その話には納得する事が出来たが……


「……だがミレイに危害を加えたではないか」


「それは彼女の為にやったのですよ。死ぬような体験をすると成長しますからね。その証拠に傷一つ付けておりませんよ」


「……」


「あなた方と敵対するつもりはありません。ですがそこの彼等は連れて行かせて頂きたい。勿論、只でとは言いません。現在の王国の情報を教えて差し上げます。如何ですか?」


「父上、信用してはなりません今ここで消しておくべきです」


 アレクは憤怒の表情を浮かべてレオンに進言する。

 普段の冷静なアレクならば何をするかも分からない不気味な男との戦いを避けれるならばと考えるはずだが未だ震える妹の姿に怒りで頭に血が上っており冷静な判断を出来ないようだ。


「どうなさいますか?」


 そんなアレクを見て笑みを深くする。

 まるで戦いを待ち望んでいるかのようだ。


「……分かった。こいつらは渡そう」


「父上!?」


「——黙れアレク、周りの状況を考えろ」


 レオンはメフィストから目を逸らさずにアレクを諌める。その言葉を聞いたアレクは周囲に何人もの気配がある事に気付いた。

 周囲にはメフィストの部下と思わしき集団がいたのだ。気配を消すのが達者な者達。戦闘になれば犠牲は間違いなく出てしまうだろう。そうなれば最も危険に晒されるのはミレイということになる。



「——くっ!」


「まだまだ若いですね、しかし尋常でない力を感じる。流石は後継アレク・フリーデン。一族は安泰ですね」


「それについては異論はないが——王国がどうなっているのか聞かせてもらおうか?」


「ええ勿論ですとも……」


「——そうか、あと一つ聞こう。我々に気付かれずにどうやってミレイの背後に近づいた?」


「フフフッ、それは秘密です……まぁ貴方には攻撃まではさせて貰えないでしょうね」


「そうか……次に会う事があったら貴様とは二人だけで戦ってみたいものだな」


「フフフッ、ご冗談を……ではまたいつかお目にかかりましょう」


「お嬢さんも先程は失礼いたしました。貴女はまだまだ強くなりますよ。では失礼します……」


 レオンとの話が終わるとミレイの方を向き言葉をかけるとまた忽然とその姿が消えた。


 彼が去ると同時に周囲にいた彼の部下達がここを襲ってきた者たちを連れていった。その動きで彼等一人ひとりが相当の腕の持ち主だと分かる。レオン達は暫く警戒して動かず、間違いなく立ち去ったことを確認してようやく警戒を解いた。



「すまないミレイ、危険な目に合わせてしまったな」


「……いえ、あんなに近い距離にいて気づかない私が未熟だったんです。お父様達なら気づいていたはずです」


「明らかに不自然な現れ方をした。お前が気づかないのも無理はない。何らかの方法を使ったのだろうが、それでも私が油断していた事には違いない」


「いいんですお父様、私は生きています」


「……」


「……お父様、あんな不気味な気配を持つ人がいるんですね」


 ミレイはメフィストほどの悪意を感じさせる人を見た事がなかった。ミレイ達がエルドラン王国から出る切っ掛けになった第三王子や周りの貴族達が可愛らしく思えてくるほどの純粋な悪意を。


 人は何処かに悪を宿している。

 善と悪が常にバランスを取っている。その比重が悪に傾いた者たちが犯罪などを行う。だがその犯罪者たちにも善なる心はあるのだ。

 だがミレイはメフィストにそれを感じなかった。純粋な悪の存在、それを目の当たりにしたミレイは心の底から恐ろしいと思った。


「……ああ、負けるつもりはないが私が戦っても良い勝負になるだろうな……ミレイ今日はもう休め疲れただろう」


「……はい」


「安心しろ、しっかり守っている」


 ミレイはエルザに連れられて部屋に戻って行った。部屋に戻るとオコジョも目を覚ましていた。メフィストの殺気を感じたのだろう。

 落ち着かないようで中々眠りにつく事が出来ない。死を感じたのだ。それも無理はないだろう。


「今日はずっと一緒にいるわミレイ」


 震えが止まらないミレイに寄り添うエルザ、オコジョもミレイの様子がおかしい事に気付いているようで枕元へとやって来た。


「キュキュ」


「ごめんなさい、オコジョさんにまで心配をかけてしまって」


 オコジョさんはミレイの事を心配するように声を出した。そんな声に誘われて手を伸ばしてオコジョを触ろうとするミレイ、ふと避けられてしまうかもと思ったのか動きがゆっくりとなったがオコジョはいつものように避けようとはしない。


「オコジョさん触らせてくれるんですか?」


「キュイ」


 心配そうに見上げているオコジョはミレイが撫でても嫌がることなく触らせている。柔らかい毛並みを撫でていると少しだけ気持ちが和らいできたのか表情の固さが薄れてきた。


「お嬢様、この薬草茶をお飲みになってください。落ち着くそうです」


 寝付けない事を見越していたのかメアが薬草茶を淹れて持ってきた。


「ありがとうメア」


「いえ、ティナさんに持っていってほしいと頼まれましたので御礼ならティナさんに。お香も焚いておきます。お嬢様が眠れるまで私もおりますので安心して下さい」


 ミレイの震える手を握るメア。母親と幼い頃からの仲のメアが側にいることに安心したのか暫くしてミレイは眠りについた。

自分の表現力のなさと文章力のなさに絶望中、タイトルもいいの思いつかないし∈(´Д`)∋

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