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第104話 閑話 聖なる日に 前編

本編の続きではありません。ミレイが成人を迎えた少し前の話になります。

 あと一ヶ月で聖なる日を迎える。

 村を作ってから様々な仕事に追われあまりの忙しさにその事を忘れていたミレイの父レオンはあることで悩んでいた。


 聖なる日とは現在おとぎ話として世界中に伝わるある話を起源としたある行事が行われる日である。


 数千年の昔、エルドラン王国が出来るよりもっと前、とある村の外れに住むセイン・ニコラウスという元冒険者の老人が魔物に連れ去れた魔物に連れ去られた子供を救うために戦いそして命を落としたとされる日だ。


 セインは冒険者を引退してから数十年、長年連れ添った妻に先立たれてから村の外れに立てた家で静かに余生を送っていた。


 村はずれに住んでいると言っても嫌われている訳ではない。彼は村の者に慕われており自衛のために村人に剣を教えたりもしていた。村の子供たちも彼を爺ちゃんと呼び一日のうちに誰かは必ず遊びに来るので毎日が幸せだった。


 そんなある日魔物の群れが村を襲い子供達を連れ去った。群れの主は人の絶望をチカラにする魔物だったためにわざわざ子供たちを攫ったのだった。


 その魔物は数々の街や村を襲い世界中で恐れられていた。村に住む者たちも必死に戦ったが成す術なく敗れ、二日の後に子供を殺すと魔物は言い残した。

 セインが村の異変に気付いてやって来た時にはもう遅かった。

 数人の村人は助けを呼びに街に向かったが兵士や冒険者を呼ぼうにも行きだけで二日は掛かる。戦える者がやって来た時には手遅れという事だ。


 そんな時にセインは立ち上がった。

 生まれた時から知っており我が子のように見守って来た子供たちを殺させるわけにはいかなかった。村人たちはみすみすセインを死なせる訳にはいかないと我が子を思いながらも彼を止めた。

 セインに同行したくとも戦える者は皆、歩く事も出来ないほどの重傷を負っていたのだ。そんな優しい村人たちのためにも彼は子供たちを見捨てる訳にはいかないと決意した。

 現役当時に使っていた朱と白の鎧と兜を身に付けた彼は魔物の元へと向かい三日三晩戦い続けて勝利した。


 子供たちを無事に親の元に返したセインはその数時間後に魔物から受けた傷によって命を落とした。その後救援に来た兵士や冒険者たちは子供たちを救ったセインの名を聞いて涙した。

 セイン・ニコラウスとは冒険者の当時から現在に至るまで誰からも尊敬された冒険者だったのだ。老いてもなお人々の為に戦い死んだ話に感銘を受けたある国王は彼を忘れないためにその日を記念日とし、その偉業を世界各国へと伝えた。


 月日は流れセイン・ニコラスは次第にサンタクロースと呼ばれるようになった。


 彼が亡くなった日は奇しくも彼の誕生日であった。彼は自分の生まれた日を迎えると必ず村の子供たちにプレゼントをあげていた。

 それによりこの日はセインの誕生日を祝うために家や木を飾り付け、親はセインの格好を真似て赤と白の服を着て彼の特徴であった白髭を着けてプレゼントを贈る日となった。


 一つだけあるルールは子供はその日、赤い服を着た人の事をサンタさんと呼ばなければならない事だけ。



「どうすれば良いのだ。今年は何を渡せば」


 レオンは聖なる日に大事な娘であるミレイに渡すプレゼントを何にすれば良いのかを悩んでいた。貴族として街を治めていた頃は街に出入りする商人も多く、ミレイが喜びそうな物を用意する事がそれほど難しくはなかった。

 しかしエルドラン王国を出てから村を作ってそれほどの時間は経っておらず、村に出入りする商人は一人もいない。


 ここ最近の忙しさでレオンは聖なる日が近いことを忘れていたのだ。娘のミレイが大好きなレオンにとってはここ最近で一番の失態であった。

 妻であるエルザに聞いてみても何でも喜ぶと思うわよという返事があるだけ、それでは自分を許せないレオンだが何にすべきなのか決めかねていた。


 それにミレイは次の誕生日を迎えれば成人してしまうのだ。聖なる日にプレゼントを渡すのは最後、適当な物を渡す訳にはいかなかった。



「もしかして父上はまだミレイに渡すプレゼントを決めていなかったのですか?」


 困ったレオンは遠巻きに息子たちが何を渡すつもりなのかを探ろうとした。しかし三人の息子にはレオンがプレゼントをまだ用意していないことが分かってしまった。アレク、カイル、シエルの息子たちはエルドラン王国を出る前にプレゼントを購入していたらしい。毎年誰が一番ミレイを喜ばせるか息子たちと勝負していたレオンはそれを聞いて負けた気がして拳を震わせる。


 今度は信頼する部下であり執事のセバスに訪ねることにしたレオン、探してみるとセバスは広間の飾り付けを行なっていた。


「おや、どうなされましたかレオン様」


「……ミレイに渡すプレゼントが決まらなくてな」


「それは困りましたな」


 完璧で最強な執事であるセバスも困った顔をして考え込む。主人であるレオンがミレイをどれだけ大切に思っているのか、男児が生まれやすいフリーデン家において女児がどれだけ大切な存在か知っているセバスは生半可なプレゼントではレオンは納得しないだろうと分かっていたからだ。


「ミレイ様は冒険者になることが夢、これから先、冒険者と成られたなら武器は欠かせないものとなりましょう。槍を送るのはどうでしょうか?」


「槍を? 鍛治師は村に来てくれたがそれなりの物を作るには時間が足りないのではないか?」


「はい、ですから今回は魔物の素材を使った槍を作られてはどうでしょうか? それならば一月あれば何とか良い槍が出来るのではないでしょうか」


 チカラのある魔物の素材を使った武器は魔力を流しやすいため、魔法を使って戦うミレイには適する武器といえる。


 そして何よりも重要なのは槍の作成をレオン自身が行えるということだ。レオンは魔物の素材を使って槍を作るのを趣味としていた。


 通常なら金属類で作られる武器と同じく製作に時間が掛かるのだが、魔物の素材を使った武器の作成において一番手間が掛かるのは硬い素材を加工する職人自身の能力と素材の弱点となる魔法を使用出来るかである。金属類とは違い高温の炎だけでは加工出来ないが様々な魔法を使うエルザの協力を得れば短期間で槍を作れる可能性が高かった。


 今まで自分で作った物を送るという考えがなかった為にハッとしたレオン、娘へのプレゼントを自分の手で作る。それならば何処の馬の骨とも知らない者が作った品物を用意している息子たちに勝てると思い直ぐに行動を開始した。




 レオンはセバスを伴い自室に戻ると今回の討伐に使う武器を選ぶ。レオンの自室には様々な武器が並んでおりそれらは全て一級品であった。普段は剣を携えるのみだが今回は本気の狩りのため槍を選ぶ。そしてセバスが防具を着るレオンの手助けをしながら自分も同行したいと告げる。


「レオン様、魔の森に行かれるなら私をお供に」


「だがなセバス、ミレイへのプレゼントなのだぞ。私自らがやらねば」


「ならば今までのプレゼントはどうなのだという話になります」


「む、確かに」


「二人でレオン様と言えど魔の森は危険、それに今は冬という事もあり危険が増しています。執事として主人をお一人で行かせる真似は出来ません」


「……仕方がない。では其方もついてまいれ」


「畏まりました」


「何だか楽しそう。私も付いて行こうかな」


 レオンとセバスが部屋から出ようとするとエルザが壁に背中を預けて待っていた。どうやら二人の話を聞いていたようだ。


「む? エルザか……来ても構わないがやり過ぎては困るぞ。あくまでも目的はミレイの槍となる素材の確保だ」


「分かっているわ。貴方とセバスが行くとなるとそれ相応の相手でしょうから楽しみ」


 娘同様に嫁にも弱いレオンはエルザの同行を認めた。当然エルザが自分たちと肩を並べる実力があると理解していることもあるが断って拗ねられては槍を作る際に手伝ってもらえなくなる可能性についても考えた上での返事だ。


「相手はどうするの?」


「危険度Sと言いたいところだが流石に危険が大きい。それに倒せたとしても後が面倒になる。今回は危険度Aの魔物、出来れば鋭い牙や爪を持つ者、硬質な骨を持つ魔物がいい」


「だったら竜種が良いわね」


 流石のレオンも危険度Sの魔物には手を出そうとはしなかった。危険度Sの魔物は生態系の頂点と言っても良い存在である。戦えばただでは済まない。傷を合わせただけでもそれが原因で国が滅ぶ危険がある。


 だからと言って危険度Aの魔物が楽な相手という訳ではない。国が相手にするならば本来一個連隊を派遣して勝てるか勝てないかの相手、容易に街を滅ぼすことの出来るチカラを持っている。決して娘に贈るプレゼントのために狩るような存在ではない。



「……父上、母上その格好は何ですか?」


 レオンとエルザが完全装備をしているのでそれを見た家令達はザワつき緊張感が屋敷を包む。それに気付いたアレクが自室から出て来て両親の格好を見て目を丸くした。


「アレクか、私達は少し狩りをしてくる。戻って来る間は村のことを任せたぞ」


「お任せ下さい。しかしセバスまで連れて何を狩るつもりなんですか?」


「それはまだ決めていない。この頃は書類仕事ばかりで身体が鈍ってしまっているからな。これではもしもの時に戦えぬ」


 息子たちに勝つという目的のあるレオンはアレクに本当のことは言わなかった。大人気ないがアレク達が成人してからこの戦いは毎度のことなのだ。それにミレイは近々成人してしまう。最後のプレゼントになるのだ。なればこそ父親として負ける訳にはいかなかった。


「では行ってくる」


 何をするつもりなのかをミレイに気付かれてはならないとレオン達は気配を消して村を抜け出していく。これによって村人たちもレオン達に気付くことはなく騒ぎは起こっていない。


 ミレイは現在村の子供達と雪合戦をしたり凍った湖に穴を開けて魚を釣ったりして遊んでいた。


 待っていてくれ。


 遠くに見えるミレイの姿を見て必ず喜ばして見せるとフツフツと燃えるレオンであった。

宗教色は完全に排除して子供にプレゼントをあげる日という事で話を考えました。後半も今日中に投稿予定です。

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