掛け合わせは罪の味
「買ってきたぞ~」
「待ってました!」
僕はビニール袋の中から、大きな箱を取り出す。彼女はすぐさまその箱を開けて中を確認した。
「これ、何個入り?」
「ええと……18個入りだね」
「おお! すごいね!」
彼女はそう言いながら、シュークリームを取り出して頬張っていた。
「早いな!」
「ぜんふ、らべちゃうぞ!」
僕は慌ててシュークリームに手を伸ばす。それと同時に彼女も手を伸ばした。
「2個目~♪」
「嘘だろ……」
ブラックホール。 そんな言葉が僕の頭をよぎる。
「いや~、これ良いね! カスタードと生クリームの2重構造。二つの甘みが織りなすこのハーモニーは乙女心をくすぐる!」
僕は自分が食べたシュークリームの断面を見る。確かに、黄色のクリームの上に白色のクリームがのっている。
「自分で乙女心って言うなよ」僕は一口食べながら言う。
「別に良いじゃん」
こう話している間も、彼女はその両手にシュークリームを持って、呼吸をするように食べている。
ブラックホールだよ、本当に。
そして、箱の中のシュークリームが無くなり、彼女は満足げに笑顔を浮かべていた。
「まだいけるけどな~この味、乙女殺しだね」
「だから、自分で乙女と……」
「分かってるよ~」
彼女は至極満悦の様子でのんびりとテレビを見始めた。
そして、夜中。
「ぎゃ~~~~~~!!!」
体重計に乗った彼女の、乙女とは思えない悲鳴が部屋の中に響いた。
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