異世界転生
(倉本 椿)
うーん、定時上がりで給料は高い、福利厚生も充実してるし、良いとこ就職できたなぁ。
彼は倉本 椿。
今年入社した新人社員だ。
世の中は人手不足、企業はついに初任給の引き上げを行なった。
その前から福利厚生を充実させ、残業をやめる会社も増えていたが、深刻な人手不足で人材確保に苦労していたのだ。
ハラスメントも厳しくなり、昭和、平成のようなパワハラをする会社も激減した。
(倉本 椿)
うーん、早く帰って風呂に入ったら、昨日の続き読むか。
吉野●で牛丼特特盛、牛皿特盛、お新香2つ、卵2つ、味噌汁に紅生姜を付けて食べていた。
お前、結構食うな(笑)
椿は最近、面白いラノベを見つけた。
"悪役令嬢"物だ。
悪役令嬢と言われているが、正義感が強い。
そんな主人公に惹かれていた。
(倉本 椿)
ふぅ、お腹いっぱい、では帰ろう。
そりゃそんなけ食ったらそうだろうな。
そして帰路を急いでいると……
(女)
きゃあぁぁっ!!
悲鳴が聞こえた。
(倉本 椿)
なんだ?
次の瞬間、ドンと男にぶつかられた。
それと同時にお腹に違和感があった。
(倉本 椿)
ん?
お腹の辺りを触ってみる。
手のひらが血だらけになった。
(倉本 椿)
なんじゃこりゃああぁぁぁっ!!
椿、お前、いつから松●優作になった。
(倉本 椿)
なんも言えねえぇぇぇっ!!!
そんな流行語あったな。
(倉本 椿)
超ぉ〜気持ち悪ぃ〜!!
なんかそんな似たようなのもあったわ。
周りの人々は逃げ惑う。
無差別殺人が起こっているのだ。
(倉本 椿)
なんでだよ!おい、行かないでくれよ!待ってくれよ!
松田●作の"太陽に吠え●"の殉職シーンな。
お前、腹刺された割には余裕だな。
(倉本 椿)
あゝ、一通りやったな。
でだ、死ぬなこれ。
"異世界転生"か、悪くない。
別にこの世界に不満は無かったけどなぁ……
完全週休2日制、福利厚生充実、初任給35万。
人手不足で初任給引き上げの恩恵受けたしなぁ……
車も残クレで三●のデリカミ●買ったばかりだし。
オプション7万円プレゼントだった。
今、それ思うんだ。
しかも"異世界転生"前提かよ。
(倉本 椿)
どんな世界かな?
楽しい、良い世界ならいいけどな……
そう言って倒れた。
救急隊が駆けつけた時には即死だった。
(倉本 椿)
うーん……
目を覚ますと、見なられない景色が目に入った。
天蓋付きのベッドに寝かされていた。
部屋には豪華な調度品があり、いかにもお嬢様といった感じだった。
(倉本 椿)
ん?俺、女?
胸もある、マン●もある……
なんとも面白い事になったな。
でだ、どう見てもお嬢様だ。
ひょっとして読んでた悪役令嬢のラノベの世界?
なんか見覚えの………………無い景色だ(笑)
見覚え無いんかよ!引っ張るなぁ、椿。
(倉本 椿)
まずは立ち位置を確認しよう。
これは貧民街の孤児…………ではないな(笑)
当たり前だろ!どこの世界に天蓋付きのベッドで立派なネグリジェで寝てる孤児が居るんだよ!!
(倉本 椿)
少なくとも貴族令嬢は確定、爵位はどうなんだ?
なかなか熱いぜ!
椿、麻雀かパチンコじゃないんだから、それはどうかと思うぞ。
(メイド:女)
お嬢様、お嬢様が目を覚まされました!
(倉本 椿)
うぬ、余は目を覚ましたぞ、善きにはからえ。
ガシャン!
お湯とタオルを持って来たメイドがズッコケて、お湯を床にぶち撒ける。
(メイド:女)
お、お嬢様……
(倉本 椿)
で、余はどうなっていたのじゃ?
(メイド:女)
いや、その、はい……
お嬢様は、乗馬をされていて落馬しました。
それから1週間お目覚めにならなかったのです。
(倉本 椿)
うぬ、そうか、心配かけたの。
(メイド:女)
あの、お嬢様?
頭の方は大丈夫ですか?
(倉本 椿)
何故じゃ?
(メイド:女)
今までと全然違うのですが……
(倉本 椿)
うぬ、そうか?
頭を打ったせいで、記憶が曖昧じゃ。
まずは我が名を教えよ。
それと、通貨の事や色々のう。
(メイド:女)
だ、大丈夫ですか!
まずはお名前ですが、ツバキ・アイリス様です。
アイリス侯爵家の一人娘です。
(倉本 椿)
侯爵家の一人娘!
大当たりやん!フィーバー!UR引いた!人生薔薇色やん!!
(メイド:女)
・・・は?
(倉本 椿)
で、他は?
(メイド:女)
あ、あゝ、その、通貨ですが、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨で100枚刻みです。
時間は刻、半刻とかいう言い方をして、1日は24刻、1月は30日、1年は12ヶ月で360日です。
(倉本 椿)
なるほど。
他には?
評判はとか?
(メイド:女)
えっ?その、あの……
(倉本 椿)
言いにくいのか?
構わぬ、いってみよ。
(メイド:女)
あ、悪役令嬢と……
(倉本 椿)
悪役令嬢、キタぁああぁぁぁっ!
これまたテンプレ!
(メイド:女)
は、はぁ……
で、当主はケイン・アイリス様、夫人はカルナ・アイリス様です。
ツバキ様のお父様とお母様です。
(倉本 椿)
なるほどな。
後は追々聞くとして、まずはそれぐらいか。
で、貴方は?
(専属メイド ミア)
お嬢様の専属メイドのミアです。
(倉本 椿)
分かった。
よろしくね、ミア。
(専属メイド ミア)
は、はい……(驚)
(倉本 椿)
どうしたのじゃ?
(専属メイド ミア)
いえ、その、お嬢様から名前で呼ばれたのは初めてでして……
(倉本 椿)
そうなん!
うーん、悪役令嬢って感じいぃぃぃぃぃっ!
(専属メイド ミア)
は、はぁ……
という事で、当面の事は分かった。
とりあえず楽しむ事に決めた椿だった。
(倉本 椿)
そうか、今から"ツバキ・アイリス"って言わなきゃいけないな。
魔法とかあるのかな?
【ウォーターボール】
水魔法が発動し、水球ができた。
(アイリス侯爵家一人娘 ツバキ)
【ファイアボール】
【ライトニング】
【アースボール】
【ヒール】
わお、全部発動する!
魔法のある世界なんだ!
これで全属性かな?やったぁ〜!!
大体確認したツバキだった。
しばらくして、ミアがお茶を持ってきた。
(ツバキ・アイリス)
ミア、ちょっと聞き忘れたんだけど、魔法って使える?
(専属メイド ミア)
魔法……ですか。
貴族の方なら魔力があり、学園で習い使えますが、庶民は無理です。
お嬢様は火と水の魔法が使えます。
ダブル属性は珍しいです。
大抵はシングル属性です。
(ツバキ・アイリス)
そうなん?
土と雷、回復魔法も使えるけど。
【ファイアボール】
【ウォーターボール】
【アースボール】
【ライトニング】
【ヒール】
ほらね?
(専属メイド ミア)
・・・は?
フィフス属性!
しかも回復魔法!
回復魔法なんて、教会の聖女達ぐらいしか使えないですよ!(驚)
(ツバキ・アイリス)
そうなん?
使えたんだけど。
(専属メイド ミア)
け、ケイン様に報告してきます!
(ツバキ・アイリス)
えっ?
いや、良いから、ちょっと!!
聞こえねぇ〜とばかりに屋敷の中を走るミア。
(専属メイド ミア)
ケイン様!!
ケインの執務室に走り込んだミア。
(アイリス侯爵家当主 ケイン)
どうした、騒がしい。
(専属メイド ミア)
それがですね!お嬢様が!!
(当主 ケイン・アイリス)
ツバキがどうした。
(専属メイド ミア)
お嬢様が……
ミアがツバキの事をケインに伝えた。
(当主 ケイン・アイリス)
は?そんな……信じられん。
(専属メイド ミア)
お嬢様を連れてきます!
そう言うと、ツバキの所に走って戻ったミア。
(専属メイド ミア)
お嬢様!お父様がお呼びです!(血走り目)
(ツバキ・アイリス)
分かったから落ち着け!
ミアを宥めながらケインの所へ行くツバキ。
(当主 ケイン・アイリス)
ツバキ、本当なのか?
魔法を使ってみろ。
(ツバキ・アイリス)
あ、はい。
【ファイアボール】
【ウォーターボール】
【アースボール】
【ライトニング】
【ヒール】
こんな感じです。
(当主 ケイン・アイリス)
・・・は?
(ツバキ・アイリス)
はい?
(当主 ケイン・アイリス)
お、お前……どうなっている?
お前が倒れる前は、火と水の初級魔法しか使えなかったんだぞ。
(ツバキ・アイリス)
そういわれても、お父様……
頭打って、才能が開花した?とか。
あっ、丁度良いや、爺。
(執事長 ライム)
はい、お嬢様。
(ツバキ・アイリス)
【テラヒール】
なんちゃって。
回復魔法が発動した。
(執事長 ライム)
えっ?わ、私の……古傷が全部治った……膝、腰、肩の調子どころか眼の視力まで戻った!!
(ツバキ・アイリス)
そうなん?良かったね。
ふーん、こんなのも使えるんだ。
(当主 ケイン・アイリス)
ツバキ、お前……
(執事長 ライム)
こ、これは伝説に出てくる神級の回復魔法!!
(ツバキ・アイリス)
ありゃりゃ、そうなん?
まあ良いや。
そうだ、皆んなも治しちゃえ!
【エリアテラヒール】
なーんてね(テヘッ)
屋敷や敷地が光に包まれる。
アイリス家の人達の不具合が治った。
(ツバキ・アイリス)
流石にそれは無いか(笑)
(執事長 ライム)
調べてきます!旦那様!!
慌てて部屋を飛び出したライム。
しばらくしてケインの執務室に戻ってくる。
(執事長 ライム)
ぜ、全員治っています。
切り傷、赤ぎれ、手荒れに肌荒れ、体調不良、眼鏡をかけていた者は、眼の視力まで治っています。
(ツバキ・アイリス)
あらら、そうなん?
まぁ良いや。
(当主 ケイン・アイリス)
良くないわ!
ライム!緘口令だ、屋敷の皆にはこの事は絶対口外不要と徹底しろ!
(執事長 ライム)
はい!旦那様!!
(ツバキ・アイリス)
??まぁ、そうそう使わないけどね。
(当主 ケイン・アイリス)
当たり前だ!こんな事知られたら、教会が黙っていないぞ。
(ツバキ・アイリス)
その時は教会を潰す(苦笑い)
(当主 ケイン・アイリス)
馬鹿野郎!悪魔認定されるわ!!(怒)
(ツバキ・アイリス)
冗談です、お父様(笑)
(当主 ケイン・アイリス)
そういう心臓に悪い冗談はやめてくれ。
(ツバキ・アイリス)
で、これからどうしたら良いの?
(当主 ケイン・アイリス)
・・・は?
(ツバキ・アイリス)
なんか記憶が飛んだみたい。
目覚めた時は名前も分からなかったし。
(当主 ケイン・アイリス)
そうなのか?
(ツバキ・アイリス)
ええ、ミアから大雑把には聞きましたけど、いきなり全部ってわけにはいかないので、徐々に聞いていきますが。
そうしていたら、記憶が戻るかもしれないし。
(当主 ケイン・アイリス)
そうか、無理はするな。
で、これからだが、お前は聖トランサ学園に通っている。
来年には卒業だ。
学内での評判は、まぁ、悪役令嬢だ、あまり暴れるなよ。
大体の立ち位置も分かったツバキ、明日からの復活が楽しみになっていた。




