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CoDE: Hundred  作者: 銀杏魚
第二章 CoDE特殊作戦群編
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第39話 第零種

 司令から突き付けられた言葉。紫苑にも自覚はあった。彼は黙って、自らの両手を見下ろす。心に去来するいくつもの感情。そのどれもが良いものでないことは明白だ。


「CoDEであることと、人であることは両立しますわ」


 紫苑は顔を上げ、ローズを見た。


「他よりほんの少し、進化しただけの人間。奴の言葉を借りるのは癪ですけど、所謂――“新人類”というだけのことですわ!」


 ローズは励まそうとしているのだろう。その思いは紫苑にもありありと伝わってくる。


「というより、この場にいる全員が“CoDE”ですわ! ショックを受けるのは私たちに失礼じゃなくって!?」

「それは…………」


 紫苑は少しだけ、申し訳なく感じた。誰も、“CoDE”が化け物とは一言も言っていない。少し、早計が過ぎたかもしれない。


「ふざけるな。私は人間だ」

「急に梯子を外さないでくださいまし!! あなたが一番、人外ですわ」

「…………」


 ローズの言葉に、司令は黙り込んだ。あれだけ、笑みを絶やさなかったその顔が歪んでいる。


「はぁ…………」

「いつも思うんですけど、この話題になると繊細過ぎません?」

「ローズ、ひどい」

「ナギもすぐに伊吹の味方をするのを止めなさい」

「やだ」


 ローズはため息をつく。いつもはこんな感じなのだろうか。司令は一度、咳払いをする。しかし、表情に少しだけ、影が差しているような、テンションが低く感じられる。


「“特種―CoDE”。被害規模は不明」

「不明?」


 司令の言葉に紫苑は首を傾げる。この区分は一体、何のために存在するのだろうか。紫苑には理解できない。


「行方不明者の証言によって、存在するであろうとされている。被害規模が正確に把握できていない」


 司令は一息つく。そして――


「異常な空間――“異界”と呼ばれる場所に関与している“CoDE”が区分されている」


(“異界”……!!)


 その言葉に、紫苑が真っ先に思い出したのはあの暗い世界の事だった。そしてあそこに現れた怪物。


「全国で毎年、一定数の行方不明者が出てるんですの。その内の何割かは“異界”が原因とされていますわ」

「俺もそれに遭った」


 紫苑の言葉に、局長は目を細める。


「ほう。いつだ?」

「一ヶ月以上前だ。暗く人気のない場所だった。そこで俺は蚯蚓の化け物に襲われた」

「自力で切り抜けたのか?」

「いや、助けられた」

「我々ではないな。誰にだ?」

「多分、学生だ。どこかの制服を着ていた。札を使って、木を生やしたり、火を操ったりしていた」

「それは、おそらく“退魔連合”ですわね……」


(“退魔連合”?)


「そいつの名前は?」


 司令の質問に、紫苑は首を振る。あの場所で遭遇した二人、女性の方には後日、出会ったが、結局、名前は知らずじまいだった。


「そうか」


 司令は少しだけ、残念そうな表情を浮かべた。


「まあ、これで以上だな。“ELIZA”、モニターを――」

「この、“第零種”は違うのか?」


“第一種”より上、表に存在しているというのに司令は言及しなかった区分。そこには不穏な説明がなされているが――


「ああ、これか」


 司令は苦笑いを浮かべた。あまり、深刻そうではない。


「“第零種―CoDE”。被害規模は世界。日本を含み、別の国も巻き込んでいる場合」

「必要……なのか?」

「まあ、昔の名残だ。一応、一体だけ、ここに区分される“CoDE”がいる」


 司令は懐かしいものでも、思い出すかのように、笑っている。だが――


「何ですの、それ? そんな話、聞いた覚えがないですわ」


 ローズが司令に問いかける。どうやら、ローズも知らない話のようだ。


「当然だ。私の過去だからな」

「気持ちはわかりますけど……。なら、何で、匂わせるんですの? 口でも滑らせました?」

「いや、丁度、いい機会だと思ってな。話すつもりだ」


 司令の言葉に、ローズは驚愕の表情を浮かべる。まるで有り得ないものでも見たかのような顔だ。金髪も、今までの退屈な様子が嘘のように、姿勢を正し、興味津々の様子だ。


「伊吹、どうしたんですの!?」

「うるさい奴だ……」


 ローズの大声に、司令は顔を歪める。それほどまでに過去を語ると言うのは珍しいことなのだろう。


「どんな心境の変化ですの!? 仲間が増えて、嬉しかったんですの!? あなた、そんな質じゃないでしょう!?」

「どうだかな」


 司令のあいまいな返答にローズはむすっとする。


「ようやく、黙ったな。では、語るとするか。私の過去であり、――全ての始まりを」


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