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CoDE: Hundred  作者: 銀杏魚
第一章 水ノ園学院高等学校編
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第20話 告白

「今日は食堂使えねーし、どうすっかなあ……」


 漣夜は食堂が使えないことをぼやいている。三人のあの話の後、すぐに担任はクラスへとやってきた。そして、帰宅していいことと食堂が使えないという旨を簡潔に説明した後、すぐに出て行った。

 時刻は昼過ぎ、本来であれば、食堂で昼をとっている時間帯だが、予告なく、使えなくなったようだ。だが、紫苑にとってはむしろ好都合ではあった。


「皆、カフェに行こう!」


 紫苑の声に、三人は不思議そうな顔をする。


「え……? 紫苑、カフェなんて行くの?」

「いや、正確には僕の家だ」

「お前ん家、店なのか!?」

「そうだよ」


 三人で会話をしていると、ヒルデが横から、紫苑の肩を叩く。


「アノ……、ワスレテマセンカ?」

「え、何が?」

「ヨビダシ……」

「あ…………」


 紫苑の顔がゆっくりと青褪めていく。


「バックレよう……」

「後が怖いぞ……」


 漣夜の言葉に紫苑は、震えながら立ち上がる。


「じゃあ、ちょっと行ってくる……」





 紫苑は食堂の裏手にやってきた。ここは食事が終わった後に出るための出口が設置されている。今日は食堂が利用できないので、人っ子一人いなかった。ある者を除いては。


 美女が壁に寄りかかりながら立っていた。差し込む陽光が彼女を照らし、まるで一枚の絵画のように完成されている。しかしそんな様も今の紫苑には地獄への入り口にしか見えない。


 彼女は近づいてくる紫苑に気が付き、壁から離れる。


「ついてきてください」


 彼女はそう言って歩き始めた。紫苑は彼女の後に続いて、歩く。


 歩いている間、互いに会話は無かった。そして無言で歩き続け、たどり着いた場所は――


(校舎裏だ……!!)


 呼び出しの定番。ナンバーワンと言っても過言ではない典型的なスポット。


(終わった……)


 紫苑は恐々としながらも周囲を見渡す。草木が多く、生えている。中には人が隠れられるような場所もある。


 次に紫苑は目の前の女子生徒を見る。ここに来てから、ずっと何もしないまま、鋭い目で睨んでくる。その眼光はまるで、捕食者のそれだ。恐怖から紫苑は蛇に睨まれた蛙のように、体が硬直する。


 そして、突如、彼女の腕が動いた。



 ――来るッ!!



「私――」



 紫苑は目の前の女から離れようと一歩、後ろに下がろうとした時、背後から草が擦れるような音がした。紫苑は咄嗟に振り向く。


 ――誰もいない。


 罠かと思い、紫苑は急いで正面に顔を戻す。女子生徒は紫苑の方へ手を伸ばしている。その鋭い目つきは幾分か柔らかくなっており、口は弧を描き、微笑みを浮かべていた。


「どうしました? 私の手を握りなさい」 


 握手ということは和解なのだろうか。その割には圧のある物言い、微笑んでいるというのに、女から漂ってくる底冷えするような雰囲気に紫苑は恐る恐る手を握る。


「初めまして。三年の如月(きさらぎ)零花(れいか)です。これからよろしくお願いします」

「…………渡辺紫苑です」


 紫苑は少しだけ、自分の名前を言うのに躊躇したが、結局、言ってしまった。零花は紫苑の名を聞いた一瞬、肩眉を上げたが、すぐに――


「また、会いましょう」


 そう言って、手を放し校舎裏から去っていった。紫苑はそれを見届けると、深く息を吐いた。


 そして、先ほどから不自然に蠢いている茂みに目を向ける。ゆっくりと、その茂みに近づいていくと、ガサガサと音を立てながら、漣夜、理心、ヒルデが出てきた。


「何やってんの……」


 三人はバツの悪そうな顔をしている。それを気にすることもなく、紫苑は――


「じゃあ、行こうか」





 紫苑を含めた四人は、今、紫苑の家――カフェに訪れていた。学校から直接、向かってきた四人は皆、制服姿だ。


「ワオ! オシャレデスネ!」


 ヒルデがカフェの外観を見ながら、そう言った。紫苑の顔がほころぶ。父の店を褒められるのは素直に嬉しいものだ。紫苑は扉を開け、中に招き入れる。


「お! 友達をつれてきたのか!!」


 父が紫苑に嬉しそうに話しかける。そして三人も連れてきたことに少し驚いているようだ。


 理心はカフェの内装を見て、目を輝かせている。その一方、漣夜は店内を観察しているが、理心ほど大きな反応をしているわけではなかった。そして時折、首を傾げている。紫苑は漣夜に尋ねる。


「漣夜?」

「ああ……、まあ、カフェだなって……」

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