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CoDE: Hundred  作者: 銀杏魚
第一章 水ノ園学院高等学校編
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第17話 盗聴

「よ! 体操服、持ってきたか?」


 週明け、紫苑が教室に入ると、漣夜から話しかけられる。今朝、体操服持参の旨の連絡が学校からされていることに気が付いた。送られてきた時間は昨晩の深夜。かなり緊急の連絡だったようだ。


「一応は……持ってきた」

「ナカナオリ、デキタンデスネ?」


 紫苑が席に座りながら、漣夜の質問に答えると、いつの間にか、隣にヒルデが立っていた。漣夜はそれに気が付き――


「おう! ヒルデにも世話掛けたな……」

「ホントウデスヨー!! デモ、ヨカッタデース!!」


 ヒルデは本当に嬉しそうだ。その後ろから、理心も近づいてくる。


「四人で集まるのなんて久々ね。皆、体操服持ってきた?」

「もちろんだぜ!」


 漣夜は元気よく答えた。紫苑も理心の問いに、頷く。


「ふ~ん。忘れてないなら、必要ないか」

「なんだよ?」

「体操服、貸出やってるみたいよ。他のクラスで小耳に挟んだわ」

「ん?」


 漣夜と理心の会話に紫苑は疑問を覚えた。


「僕たちのクラスだけでは?」

「いや、多分、学年全体よ。廊下で結構な人数がそれについて話してたわ」


 理心は耳ざとい。情報通というのか、あるいは地獄耳か。どこからともなくいつも噂話を持ってくる。


「違いますよ。学校全体です」


 ヒルデの否定に、理心は驚愕の表情を浮かべる。同時にヒルデの雰囲気が変わった。


「今日は授業が無いんですよ」


 漣夜はそれを聞いた瞬間、飛び上がって喜びだした。しかしヒルデの表情は浮かない。その様子を理心は怪訝そうに眺める。


「それ、どこ情報?」


 理心にもプライドがあるのか、あるいは情報の真偽を確かめたいのか、少なくとも理心は知らない様子だ。


「朝、担任をつけて、職員室で聞き耳を立てました。深刻そうな表情をしていたので、もしやとは思いましたが、まさか――」


 ヒルデは話を中断した。自分に向けられている視線が変わったことに気が付いたのだろう。理心は目を細めており、あんなに喜んでいた漣夜も若干引いている様子だ。


「ヒルデ、ちょっとやり過ぎよ」

「流石にな……盗み聞きは……」


 二人の反応にヒルデは首を傾げている。何を言われているのか、理解できていない様子だ。しかし、紫苑は話の続きの方が気になり、特に思うところは無かった。そのまま、ヒルデは話を再開する。


「それで、授業が無い理由なんですが、どうやら、学校の敷地内に穴が開けられていたようでして……」


(穴……)


 紫苑はヒルデの言葉を反芻する。推測が正しければ――。理心も思い至ったのか、表情が強張る。


「発見されているだけでも、十数個。内いくつかは校舎内にもあったとか…………」

「それは……マズいわね」


 理心の漏らした言葉に、ヒルデは頷く。


「その調査に伴い、校舎を空けるため、全校生徒を体育館に集めるみたいです。レクリエーションという名目で」

「本当に……マズいわ……!!」


 理心の言葉にヒルデは再び、頷く。しかし、理心は勢いよく、ヒルデの肩を掴んだ。


「聞き過ぎよ、ヒルデ!! 絶対に知ったらダメなヤツよ!!!」


 そう言って、理心は肩を掴んだまま、ヒルデを揺らす。何度も揺らすせいで、ヒルデは白目を剥き始め、顔色が悪くなっていく。


「多分、いたずらだろ」


 漣夜の言葉に、理心は動きを止めた。何とか解放されたヒルデは口を押さえている。


「警備が厳重だからか?」


 紫苑の言葉に、漣夜は頷く。紫苑は腕を組み、考える。


 校門に常駐している守衛。学内を巡回している警備員。校門以外からの侵入を困難にする外壁に加え、防犯システム。学校に通っている者ならば普段から目にする鉄壁ともいえるセキュリティ。


 外部犯よりも内部犯――生徒の悪戯と考える方が妥当だろう。


「た、確かにそうよね! 侵入なんて現実的じゃないわ!!」


 クラスの扉が勢いよく開かれる。


 その音で理心は驚いたようで、彼女の肩が跳ねる。紫苑は入口へと視線を向ける。入ってきたのは担任だ。


「今日は学校全体で生徒の顔合わせや親睦を深めることを目的としたレクリエーションを行います。よって本日、授業は行われません。全員、体操服に着替えてください。その後、クラスで整列して、第二体育館に向かいます」


 先生がそう言い終わった瞬間、クラスに歓声が響き渡る。他のクラスからの歓声も少し聞こえてきた。





 体操服を着た生徒達が整列して廊下を歩いている。そんな中、漣夜は器用に紫苑に話しかける。


「ヒルデの言うとおりだな」

「というか、そのまんまだ」

「あいつ、すごいな…………」

「それは僕も思った……」


 ヒルデは多分、ほぼ全てを聞いたのだろう。最後まで気づかれなかったのもそうだが、途中で不味いと気が付かなかったのだろうか。


 そんなふうに歩いていると列は上級生と合流した。この学校は二階が二年、三階に三年がいる。目の前の階段から、多くの上級生が下りてくる。その間は一旦、止まるようだ。


 紫苑は何となく、ぼーっと立ち止まっていた。しかし、突然、周囲が騒がしくなった。それによって、紫苑は我に返る。皆の視線の先にはとてつもない美女がいた。その女性は上級生なのだろう、特徴的な長いポニーテールを揺らし、すぐに離れていった。


(あの髪……)


 何か心当たりがある。紫苑は思い出そうと頭を捻らせるが――


「?」

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