Awareness
気付いてゐた。
汗が伝ふ。
私は誰だ?
ー何も思い出せない
2099年。そう記憶してゐる。ドラえもんの生まれる22世紀の1年前。確か私は硝子張りの四角く冷たい人の密集する森に住んでゐた。
ー何も分からない
「貴方は生きてゐるの?」
隣に少女が現れた。鈴が鳴った様な気がした。
たぶん。
「そっか。」
地球は蒼かった。たしかガガーリンという人が遺した言葉だ。今や地球は完全なる水の惑星、だった。
他の人達は何処へ行ったんだい?
少女に向かって尋ねた。かつて住んでいた森は私の足元で蒼く染まってゐる。
「人間いなくなってしまったの。」
少女の蒼輝の瞳が揺れる。
じゃあ、なんで君はここにゐるの?
足元の蒼が揺れる。
ちゃぷん。
何処かで魚が跳ねた。
「なんでだろ。わかんないの。」
少女の黒髪が揺れる。
もうすぐ夜だね。
「うん。」
空が紅くなってきたね。
「うん。そろそろだね。」
空が紅く染まる。
そして、夜がはじまる。しばらくして暗くなる。
、、、きっと5、60 年前ならそう表現するだろう。
でもーーー
「星月夜が目覚めたよ。人間盲目だったんだ。」
少女は茶化して言ふ。
星が降る。
どちらが空がわからなくなる程に。
明るい空。
5、60年前では考えられなかった程に。
その通りだ。私達は、、、
「私達は目覚めた、でしょ。私達だけが。」
私は微笑む。
あぁ、私達だけが。私達だけが遺ったんだよ。