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第93話: 賢者ヴァイスクの放った『破壊エネルギーの塊』とバーンズのさらなる覚醒

 バーンズの炎の壁と、シオンが作りだした空間制御魔法の道と壁。クロエが天空の制御室の最奥へ向かうための道を仲間たちが作ってくれた。


 無数の異形の魔物たち、そしてまるで生きているかのように制御室そのものも防衛システムを構築しているのか、床も壁も天井も襲い掛かってくる。


 バーンズが炎の壁を巧みに操作し、魔物の攻撃と制御室の防御システムからクロエを、仲間を守っている。


「うおおおおおっ!

 お前の相手はこの俺だ!

 この俺の、豪炎魔法だ!!」


 クロエとシオンを先に行かせるため、屈強な体も盾にしながら、押し寄せる脅威の前に一人立ちはだかる。


(バーンズ君。『この俺』っていうのは

 物理なのかい——)


 シオンは心の中で、そっとバーンズに言葉をかけた。


 しかし襲い掛かる攻撃も強烈なものだ。壁から突き出す物理的に固い無数の刃、床から伸びる雷属性を帯びた触手、どこからともなく高圧で吹き荒んでくる熱風と極寒の冷気。


 ——そのすべてをバーンズはただ一人で引き受け、耐え続けた。


「バーンズさん……!」


「ああ、俺は大丈夫だ! ——大丈夫だ!」


 何度も吹き飛ばされ、自慢のツンツンヘアは無残に乱れ、体中から血を流しながらも、バーンズは魔法で炎の壁を作り続けた。


(俺が……俺がここで倒れたら!

 クロエが……!

 アラン、シオン、リリィだって……!

 そして、このクソみてえな世界の明日も……!)


「うおおおおお!!」


 脳裏に浮かぶ仲間たちの顔。そして皆と過ごした、喧嘩ばかりだったが確かに温かかった日常の記憶。


「絶対に……!

 通すわけにはいかねえんだよおおおっ!」


 バーンズは全身の筋肉に力をこめ、傷口すら広げることもいとわなかった。「仲間を守りたい」というシンプルで純粋で強い意志。


 と、その時さらに炎の出力が上がった。


「バーンズさん。これは——」


 バーンズは無意識のうちに、クロエがかつて彼の非効率な訓練メニューにこっそりと挟んでおいた古代の究極防御術式「金剛不壊の焔陣」の奥義を、不屈の精神力で発動させていたのだ。


 ズウゴゴゴゴゴ……! かつてなく強烈な炎の壁。バーンズの体から立ち昇るオーラは、あらゆる攻撃を受け止め、浄化する聖なる守護の炎のようだ。


 炎の壁に触れた魔物は光り輝きながら霧散していく。単なる攻撃とも防御とも違う、バーンズにしかできない何か。


「バーンズ君は

 もはやただの脳筋魔術師ではないね。

 僕らを信じ、仲間から信じられる

 真の「守護者(ガーディアン)」へと覚醒した

 ——そういうことかな」


 シオンは訳知り顔でそう語った。それを聞き、クロエも微笑みを浮かべながら二人の作った道を進もうとしたその時——。


「な……!? なんだその力は……!?

 ただの人間が私の作り出した魔物

 作り出した防御システムを凌駕するだと……!?

 ありえん……!」


 制御室にヴァイスクの焦りの声が響く。


「そんなもの、私は認めない!」


 業を煮やしたヴァイスクは、純粋な「破壊のエネルギー」の塊をバーンズに向けて放った。


「な、なんだよこれは——!」


 バーンズは、これを全て受け止めれば自分自身が魔力ごとこの世界から消え去ることを覚悟した。


「バーンズさん!」


「バーンズ! ダメだ! 避けろ!」


「先輩!」


 周囲をメリメリと破壊し、巻き込みながら迫ってくるエネルギーの塊。


「だ、け、ど!」


 しかしそれでも一歩も引かなかった。仲間たちの未来への道を切り開くため、身を挺して閃光の中に消えることを選んだのだ。


「俺がやるしかねえんだろ!」


「いけません! バーンズさん!」


 破壊の光がバーンズを飲み込もうとした寸でのところ。


「右に一歩避けろ、バーンズ!」


 アランの声が聞こえ、反射的に一歩避けるバーンズ。後方からアランが放った一筋の精密な狙撃魔法が、迫りくるエネルギーの塊とバチバチッと正面衝突し、軌道を僅かに逸らした!


 ヴァイスクの放った破壊のエネルギーは、制御室の壁を徹底的に破壊し、空中へと消えていった。


「……バーンズさん。

 私の計算を遥かに超えたあなたの成長。

 確かに受け取りました。

 ……感謝します。

 ですが命がけの何か、など絶対に許しません」


「えっ?」


「生きていなければ、生きて帰らなければ

 何の意味もありません。

 生きているからこそ『意味』が生まれるのです。

 くれぐれも次は気をつけるように」


 クロエからの彼女らしさ満点の最大級の賛辞と信頼の言葉が、疲れ果てたバーンズに聞こえていたかは、定かではなかった。


「まだ生きていたか——

 だが、次はない!」


 その時、ヴァイスクの強烈な魔法が、再び襲い掛かろうとしていた——!

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