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第54話: 最終決戦、狂気の理想と仲間たちの抵抗

 最終決戦の火蓋は、ヴァロワールの先制攻撃によって切られた。レガシー・コロッサスと融合して人ならざる力を得た彼は、もはや通常の物理法則や魔法の常識を超越した超常的な攻撃を次々と繰り出してきた。


「消えろ! 旧世界の非効率なゴミどもめ!

 我が『理想』の前にひれ伏すがいい!」


 ヴァロワールが右手で薙ぎ払うと、玉座の間の空間そのものが断裂する。いや――そこに生じた()()()()()()()()のようなものがクロエたちに襲いかかってくる。


 左手をかざせば、周囲の時間の流れが局所的に加速あるいは遅延し、クロエたちの動きを著しく制限する。


 さらにはコロッサスの巨体から直接エネルギーを引き出し、純粋な破壊の波動を繰り出して、玉座の間全体を粉砕しかねない勢いだ。


 もはやその一挙手一投足が、並の魔術師ならば一撃で塵芥と化すほどの圧倒的な威力を持っていた。


 しかしクロエ・ワークライフは、その絶望的な猛攻の中を、まるで精密機械のように冷静かつ正確に立ち回っていた。


「バーンズさん。

 右翼からの空間断裂攻撃! 回避パターンB-3!


 アランさん。

 時間加速フィールドの発生源は

 彼の左肩のクリスタル!

 そこをピンポイントで攻撃し、

 機能を一時停止させてください!


 シオンさん。

 コロッサスからのエネルギー波動、

 あなたの古代結界術で

 可能な限り威力を減衰できますか?」


 クロエは、自身の魔力と演算能力のほとんどを、ヴァロワールの攻撃パターンのリアルタイム解析と、それに対する最適化された回避・防御行動の予測、そして仲間たちへの的確な指示に振り分けていた。


 彼女のアナリティカル・レンズは、ヴァロワールの魔力の流れ、術式の構成、そしてコロッサスとのエネルギーリンクの僅かな揺らぎさえも詳細に捉え、分析し続けている。


 バーンズはクロエの指示に従い、持ち前のタフネスと覚醒した防御魔法を駆使して、仲間たちを庇いながら、空間断裂攻撃を紙一重で回避し続ける。


 アランはアクロバティックな動きで時間加速フィールドを掻い潜り、ヴァロワールの死角から、彼の弱点となり得る部位を狙って、鋭い剣撃を放つ。


 シオンは「やれやれ、人使いが荒いねぇ」とぼやきながらもその瞳には真剣な光を宿し、見たこともないような複雑な紋様の古代結界を展開して、コロッサスからの破壊的なエネルギーの波動の威力を大幅に減衰させてみせた。


『先輩!

 ヴァロワールがコロッサスと融合している影響で

 彼の魔力パターンに

 いくつかの特異な『ノイズ』が発生しています!


 特に胸の真ん中あたり、

 コロッサスのコアと

 直接リンクしていると思われる部分の

 エネルギー循環が

 周期的に不安定になっているようです!

 そこが、おそらく最大の弱点です!』


 後方で戦況を見守り、必死に情報支援を続けていたリリィからも極めて重要な情報がもたらされた。


「……了解しました、リリィさん。

 素晴らしい分析です。

 やはりあの歪な融合は

 彼に強大な力を与えると同時に、

 新たな、そしてより致命的な脆弱性を

 もたらしているようですね」


 クロエは仲間たちの奮闘とリリィの情報によって、ついにこの絶望的な戦況を覆すための、確かな「勝機」を見出した。


 ヴァロワールの猛攻を捌きながらも、常に彼の胸の真ん中あたり、コロッサスのコアと融合している部分の魔力の流れを注意深く観察し、リリィが指摘した「周期的な不安定化」のタイミングを精密に計算していた。


 そしてついに、その瞬間が訪れようとしていた。


「……皆さん、聞こえますね?

 これより最終反撃フェーズに移行します。


 私の計算によれば約十秒後

 ヴァロワールの胸部コアの魔力循環が

 一時的に、大幅に不安定になります。


 その瞬間を逃さず

 我々の全戦力をその一点に集中させ、

 彼とコロッサスとのリンクを強制的に遮断する。


 それが我々に残された

 唯一にして最大のチャンスです!」


 クロエのその言葉は極限状況下で戦い続ける仲間たちの心に、新たな闘志と希望の炎を灯した。


 反撃の準備は整った。あとは、その一瞬の好機を決して逃さないことだけだ。

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