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第45話: オペレーションΩ・最終フェーズ―—反撃の狼煙

 仲間たちの言葉によって、絶望の淵から再起したクロエ・ワークライフ。


 深呼吸を一つすると、手渡されたオプティマイザー・ロッドを再び強く握りしめ、そして魔導端末(幸い、破損は免れていた)を起動した。


「……皆さん。ご協力感謝します。

 おかげで少し頭が冷えました。

 そして新たな最適解が見えてきました」


 クロエの表情にもう迷いはなかった。いつもの冷静沈着な分析者であり、そして大胆不敵な戦略家であるクロエ・ワークライフが戻っていた。


「現状、私の魔力残量は、

 平常時の約15%まで低下しています。


 シオンさん、

 バーンズさん、

 アランさんも、

 それぞれかなりの消耗が見られます。

 

 正面からレガシー・コロッサス

 及びヴァロワールとぶつかるのは、

 現状では自殺行為であり、極めて非効率です」


 クロエは端末に表示された各人のバイタルデータと、周囲の戦況を瞬時に再分析しながらよどみなく語り始めた。


「ですが我々には、

 まだいくつかの有効なカードが

 残されています。


 第一にリリィさんが無事であること、

 そして彼女の持つ『調和の魔力』が、

 コロッサスの暴走エネルギーに対して

 有効である可能性。


 第二にエリオット先生から得た、

 コロッサスの制御システムに関する情報。

 特に『フェイルセーフ機構』の存在。


 第三に——そしてこれが

 最も重要ですが……

 我々による『仲間』の連携という、

 予測不能な変数です」


 クロエのその言葉に、バーンズたちは、驚きと新たな期待の入り混じった表情を浮かべずにはいられなかった。


 彼女が「仲間」という言葉を、これほどまでに肯定的に、そして戦略の核として捉えているのは初めてのことだったからだ。


「これより、

 オペレーションΩの最終フェーズに移行します。

 

 目標はレガシー・コロッサスの制御中枢

 ——すなわち、

 ヴァロワールのいる王宮最上階の玉座の間へ、

 最小限の戦闘で到達し、リリィさんの協力を得て

 コロッサスの『フェイルセーフ機構』を起動。

 その機能を完全に停止させること。


 そしてヴァロワール本人を無力化し、

 この非効率な茶番劇に、終止符を打つことです」


 クロエは端末のディスプレイに、王宮内部の詳細な三次元マップと、そこへ至る複数の潜入・突破ルート、そしてそれぞれのルートにおける敵の予想配置と、それに対する最適な対処法を瞬時に表示させた。


「時間は、ほとんど残されていません。

 コロッサスのエネルギー出力は、

 刻一刻と上昇しており、

 完全な暴走状態に移行するまで、

 おそらくあと三十分もないでしょう。


 この作戦は一撃のみ。

 しかも完璧なタイミングで

 決めなければなりません」


 彼女の立案した最終作戦は、これまでのどの作戦よりも大胆で、そして精密さが要求されるものだった。


 それはクロエの持つ異常なまでの魔力効率と最適化能力、そして仲間たち一人一人の持つ力を、まるでオーケストラの指揮者のように最大限に増幅させ、一点に集約させるという離れ業とも言えるものだった。


 しかしその計画の核となるのは、クロエ自身がコロッサスのシステムに直接介入し、その際に発生するであろう膨大な魔力負荷とシステムからの反撃を、ほぼ一人で受け止めなければならないという、極めて危険なものだった。


 一歩間違えれば、彼女自身の魔力回路が焼き切れて再起不能になるか、最悪の場合——命を落とす危険性すら孕んでいた。


「クロエ……

 その役はあまりにも危険すぎる……!

 本当に君一人で大丈夫なのか……?」


 アランが心配そうに問いかける。


「ええ問題ありません。

 私の計算によれば

 これが最も効率的かつ唯一実現可能なプランです。

 私の魔力効率は、この程度の負荷ならば、

 ギリギリ許容範囲内です。

 ……それに私には、信頼できる

 皆さん(バックアップ)がいますから」


 クロエはそう言うと仲間たちに向けて、珍しく、ほんの少しだけ不敵で、自信に満ちた笑みを浮かべた。


「皆さん。

 私を信じていただけますね?」


 その言葉に、もう誰も反対する者はいなかった。クロエの覚悟とその瞳の奥にある揺るぎない信念を、確かに感じ取っていたからだ。


「……へっ、当たり前だ!

 こんなところで、諦めたりなんかしちまったら、

 俺たちの明日のアフターファイブが

 なくなっちまうからな!」


 バーンズは、いつものように軽口を叩きながら、力強く拳を掌に当てた。


「……ええ、先輩。

 どこまでもお供します。

 私にできることなら、何でも!」


 リリィの声も通信越しにはっきりと届いた。

 

「……ああ。

 最後まで見届けさせてもらうさ。

 君のその『完璧な効率』とやらをな」


 アランも覚悟を決めた表情で頷いた。


「ふふ、最高の舞台が整ったようだね。

 では僕もとっておきの

 ——『サプライズ』を用意させてもらおうかな」


 シオンも、楽しげに目を細めた。


 クロエは、仲間たちのその言葉に力強く頷き返した。


「結構です。では皆さん。

 最終作戦、開始します。

 目標——ヴァロワール宰相、

 及びレガシー・コロッサスの完全無力化。


 作戦期限、三十分以内。

 ……そして作戦完了後は全員で、

 最高の打ち上げといたしましょう。 


 もちろん私の奢りで、

 パティスリー・グリモワールの特製ケーキと、

 静寂(しじま)のインク壺の最高級珈琲付きです。


 そのためにも!


 絶対に定時までに、

 この非効率な戦いを終わらせますよ!」


 決意を固めた一行はそれぞれの役割を胸に、レガシー・コロッサスとそれを操る狂気の支配者ヴァロワールの待つ、王宮中枢へと、最後の戦いを挑むべく再び歩き出した。


 彼らの顔にはもう絶望の色はなかった。そこには仲間との絆を力に変え、未来を自らの手で切り開こうとする強い意志と、そしてかすかな希望の光が輝いていた。

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