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第42話: 王都壊滅、絶望の中の希望の声

 レガシー・コロッサスは起動と同時に、その圧倒的な破壊力をカルドニア王都に見せつけた。


 天を衝く巨腕の一振りが王宮に隣接する貴族街の一区画を、まるで子供が砂場遊びでもするかのように、いとも簡単に薙ぎ払い、そして粉砕した。


 轟音と悲鳴、そしてもうもうと立ち込める粉塵が、かつて美しかった街並みを無残に覆い尽くす。


 コロッサスの起動に伴って王都全体の魔力バランスは完全に崩壊し、制御を失った魔法エネルギーが各所で暴走を始めた。


 街灯は爆発し、魔導管は破裂して高熱の蒸気を噴き上げ、防御結界は機能を停止して無力な市民を危険に晒す。


 二次災害、三次災害が連鎖的に発生し、王都は文字通りの地獄絵図と化していた。


 街に残っていた王国騎士団の騎士や魔術師団の魔術師たちは、絶望的な状況下でも市民を守るために必死に戦っていた。


 降り注ぐ瓦礫から人々を庇い、暴走する魔力を鎮めようと試み——そして何よりもパニックに陥った市民たちを安全な場所へと誘導すべく、その職務を全うしようとしていた。


 しかしレガシー・コロッサスの圧倒的な力の前に、彼らの奮闘はあまりにも無力だった。


 次々と仲間たちが倒れ、傷つき、人々の心には深い絶望と諦めの色が広がり始めていた。

 

「もうダメだ……

 我々にこんな化け物を止めること

 なんてできない…!」


「カルドニアは……

 今日で終わりなのか……?」


 そんな悲痛な声が、あちこちから聞こえてくる。


 黄昏の秘文字(ヒエログリフ)の一味たちもまたこの混乱に乗じて、王都各地で破壊活動や略奪行為を始め、治安は完全に崩壊していた。


 彼らはヴァロワールの創り出す「新世界」の先駆けとして、旧世界の全てを破壊し尽くそうとしているかのようだった。


 バーンズ・ゲイルは、クロエからの指示を受けてアランと共に地上部隊の陽動と避難民の保護を担当していた。


 瓦礫の中から幼い子供を助け出し、次々と襲いかかってくる結社のならず者たちに、その鍛えた腕で怒りの鉄拳をお見舞いしていた。


「くそったれが!

 こんな時にまで悪さをするとは、

 てめえら何考えてんだ!」


 リリィ・プランケットもまた、今はまだ直接戦闘には参加できないものの、後方でアランが確保した臨時の避難所へと誘導されてくる負傷者たちを必死に治療していた。


 彼女の「調和の魔力」は直接的な治癒効果は低いものの、負傷者の精神を安定させて回復力を高めるという、特殊な補助効果を持っていた。


 彼女は涙を堪えながらも、一人でも多くの命を救おうと懸命に魔法を使い続けていた。


 アラン・クルツは、残存する騎士団の良識派や志を同じくする魔術師たちをまとめ上げ、絶望的な状況下でも統率の取れた抵抗を試みていた。


 無線通信で各所に指示を飛ばし、避難経路を確保し、そして何よりも——人々の心を繋ぎ止めようと必死に戦っていた。


「まだ諦めるな!

 我々にはまだ希望が残されている!

 必ずこの悪夢を終わらせる方法があるはずだ!」


 しかし彼らの奮闘も、巨大すぎるコロッサスの脅威の前には焼け石に水のように思えた。


 人々の心は徐々に、しかし確実に折れかけていた。誰もがもう終わりだと諦めかけたまさにその時——


 空に一条の鮮やかな翠色の光が、まるで流星のように走った。


 そしてその光は、レガシー・コロッサスが次なる破壊のために振り下ろそうとしていた巨大な腕に向けて放たれていた。


ドゴォォォン!


 光と腕の衝突——。何が起こったのか誰も理解できなかった。しかしその瞬間、確かにコロッサスの攻撃が止まった。


 瓦礫と粉塵に覆われた王都の上空に、凛とした、しかしどこか懐かしい声が(おそらくは魔法的に増幅されて)響き渡った。


「——皆さん。聞こえますか。

 まだ諦めるには早すぎます。


 この非効率な状況は必ず、私が終わらせます。

 私の定時退社のためにも……

 そしてこのカルドニアの、

 ささやかな平和のためにも!」


 その声の主は、クロエ・ワークライフだった。


 彼女はシオンと共に、山奥のアジトから高速で王都へと飛来し、一時的かもしれないが、今まさにレガシー・コロッサスの動きを止めた。

 

 そして、この巨人を操るヴァロワールの待つ王宮中枢へと向かおうとしていたのだ。


 その声は絶望に沈んでいた人々の心に、ほんの僅かだが、確かな希望の光を灯した。


 まだ戦いは終わっていない。まだ、諦めてはいけない。


 クロエ・ワークライフが、帰ってきたのだ——と。

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