(その4〜その6)
よる(その4)
今 思えば その[クレヨン]に初めて
出会ったときから 魅入られてしまって
いたような気がする。
そして 名前だけ決めて喜んでいたボクは
その[クレヨン]と 別れてしまうことに
なるなんて 思いもよらなかったである。
そんな 5年前のボクは 喜びと悲しみを
いっぺんに味わうことに なってしまった。
そう その子猫を拾った場所まで
エサを買いに行こうとして ある少女と
出会ったのが その[クレヨン]と
別れるきっかけに なってしまっていた
はずだった。
無も知らぬ その少女が [クレヨン] を拾った
ところで 涙目になりながら そのところを
必死で探していて どうしたのだろうと
ボクは 思ったので その少女に
声をかけたのだった。
よる(その5)
そうその少女に 「どうしたの?」 と
声をかけた その瞬間から ボクと[クレヨン]の
別れが 決まったようなものだった。
でも仕方ない。
そういう運命だったんだ。
[クレヨン]の幸せを考えると 5年前の
ボクの行動は 良かったことかもしれない。
そう今のボクが 思っているから
それで良かったんだ。
その少女に 出会って「どうしたの?」と
声をかけたら その少女は
本当に悲しんでいたことが
本当に良くわかった。
[クレヨン]が 捨てられたのは その少女の
父親のせいであって その少女の
本意ではなかったことが 良く
伝わって来たのだった。
だからボクは 捨てられていた[クレヨン]を
拾って 保護していることを 少女に包み隠さずに
話したのだった。
よる(その6)
その少女に[クレヨン]のことを 保護していることを
伝えたら その少女がお礼の言葉を言ってくれた。
しかし そのお礼のあとの言葉で
ボクは がく然としてしまった。
その言葉は
「もちろん すぐに返してくれるのですね?
わたしの大切な猫なんだ」
そうその少女に言われて 本当に
がく然としてしまった ボクだったはず。
ボクとしては 本当は 返したくない
名前まで[クレヨン]と 付けたのにと
思ってしまっていたのだ。
しかし 自分自身の 良心に負けて
その少女に もう捨てられることがないか
聞いたのだった。
そうしたら その少女が 一生 飼い続けると
誓ってくれた。
そう言った少女の顔は 真剣そのもので
この少女ならきっと 大丈夫だと
思わずには いられないものだった。




