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0-15 レオトラ乱入

 尋問中に突然扉を破壊して現れたレオトラ。彼の顔を見た途端に尋問官達は汗を流し、声を震えさせてどうにか問いかけた。


「あ、貴方が何故こちらに?」


 対して尋問中の重い空気の中でだらしない風貌のまま頭をかいているレオトラ。彼は手を下ろすと尋問官達に軽く口を開いた。


「そこの坊主を迎えに来た」

「あぁ!?」


 レオトラの返答に最初に反応したのは、当の話の中心にいるランだった。口を大きく広げて困惑する中、尋問官達は当然の返答をした。


「お待ちください、キルンテン隊長!」

「隊長?」

「この少年は重大事件の容疑者として尋問中です。そして終わった後も監獄行き。結果が出るまでは」

「ガキ一人相手に寄ってたかって尋問だぁ? 何くだらねえことしてんだお前ら」


 重大事件に関することをくだらないの一言で片づけようとするレオトラの姿勢。尋問官達は呆気にとられ、レオトラは気のままにランに近付いて彼の頭に手を置いた。


「こいつは今日から俺が面倒見る。それで良しって事にしろ」

「ハァ!?」


 頭の上のレオトラの手を振り払おうとするランだが、レオトラの手はびくともしない。


「お待ちくださいキルンテン隊長! そんな勝手は!」

「そういうことだ。ガキのやらかしは保護者が解決するからほっとけ」


 レオトラは強引に尋問官の話を切ると、ランの身体を担ぎ上げて部屋を後にした。当の運ばれているランは何とか降りようと暴れて抵抗する。


「放せ! 放せクソ!」


 レオトラはランの抵抗を涼し気に流しつつ彼に一つ問いかけた。


「お前、どうせ行くとこねえんだろ?」

「あぁ? だったら何だよ!」

「俺ん所で住ませてやる。こい」

「勝手に決めるな! 俺は行かない!」


 レオトラの強引な姿勢にランは抵抗を続けているも、変わらず効果はなかった。


 だが少しして、レオトラは何故か足を止める。尻が前に向く格好で抱えられていたランは何が起こっているのか分からなかったが、彼が見える後方にも何人もの人が現れ、二人の行く手を止めた。


「困りますキルンテン隊長。彼の処遇はまだ決まっていないのですよ。お引き渡しを」

「高々ガキ一人に対して随分豪勢な迎えだな。お嬢がいなくなったのにそんなにビビったのか?」


 隊員の一人からの問いかけに挑発ともとれる態度を取るレオトラ。隊員達は話が通じないと見たのかそれぞれが剣を構え、もう一度レオトラに警告をした。


「もう一度言います。その少年をこちらにお引き渡し下さい。これ以上は、実力を行使します」


 最後通告に対してもレオトラは態度を崩そうとしない。空いていた手で左耳をほじり、舐めたような様子で返答した。


「とっとと退け。邪魔だ」


 この返事に交渉の余地はないと判断した隊員達は、一斉にレオトラを挟み込むように攻めて来た。レオトラはこれに呆れたような様子で反応する。


「お前ら、融通の利かない奴だ。流石は野郎の部下ってところか」


 レオトラは抱えていたランを上方向に放り投げ、空いた右手に力を入れて真下の床を殴りつけた。発生した衝撃は床を陥没させる日々を発生させ、隊員達の体勢を崩した。


「何だ?」

「地震?」


 隊員達の一瞬の困惑。レオトラはこの合間に前方にいた隊員達をそれぞれ一撃で気絶させ、祖母場に倒れさせた。直後、レオトラは落下して来たランの身体を受け止め、再び同じ体制になりつつ空いた前方に進んだ。


(なんだ今の? 一瞬で)


 上空から全容を見たランは、レオトラの動きに率直に感心した。

 ほんの一瞬の出来事に戸惑った残りの隊員達だったが、我に返ってすぐにレオトラを追いかけた。


「待て!」

「止まれ!」

「ったく、しつこい連中だ」


 面倒に思ったレオトラは足に次の一歩に力を入れて踏み込むと、先程までとは比べ物にならない速度で走り出し、追って来る隊員達を振り切った。


「は、速っ!」


 抱えられているランは瞬時に移り変わっていく光景に目を丸くする。レオトラはこの勢いのままに目先の壁を軽々と破壊し、外へ飛び出した。


「あ、やべ」

「え?」


 レオトラの不穏な台詞にランがふと下を見ると、そこは地面からはまだまだ離れた高層部だった。二人は壁から飛び出していったがために当然自由落下してしまう。


「「あああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

(こいつ、無茶苦茶すぎるだろぉ!)


 ランは抱えられたまま落下する中で今傍にいる男に対して本当に強い感情を向けていた。


 一方、別室にて書類作業を進めていたダイアモの元に着信が入って来た。


「何だ?」


 着信をかけてきたのは彼の部下の隊員だった。


「尋問中だった少年が、キルンテン隊長の手引きにより脱走しました!」

「何?」

「そのまま逃走を許してしまい、現在捜索中です!」

「そうか。分かった」


 通信を切ったダイアモは大きなため息をついた。


「アイツめ、首を突っ込んでくるとはな。仕方ない」


 ダイアモは書類仕事を打ち止めて席から立ち上がると、扉を開けて部屋を後にした。


 一方のラン。現在彼はレオトラと共に落下した先にあった大木に上から飛び込んでいき、枝に引っかかって落下の勢いを何とかやり過ごしていた。

 この状況に対しての思うところがあり過ぎてコメントに困るラン。そこに近くからレオトラの声が聞こえて来た。


「大丈夫か、坊主?」

「坊主呼びするな! てか、お前のせいでこうなってるんだろうが! 何処にいやがる!」


 怒り散らすラン。レオトラはランの前方から姿を現した。頭の上に葉っぱが付いている事から、彼もランと同じく大木の方に落ちた上で脱出したのだろう。


「おら、助けてやるからじっとしとけ」

「助けなんかいらねぇ! この程度、俺自身で!」


 苛立ちながら身体をもがくラン。すると枝に引っかかっている彼の手足が光り始めた。この現象を見た途端にレオトラの顔色は変わり、急いで枝を切り裂いてランを救出した。

 そのまま自由落下し結局は地面に激突するランだが、そこまで高くない位置だったために怪我はなく、何より光りかけた手足が元に戻った。


 とはいえやはり癪に障っているようで、地面から顔を上げたランの顔は不機嫌そのものだった。


「てめぇ……」

「助けられといて何だその顔は。まあいいか。立てるんならとっとと立て、またゴタゴタになる前にずらかるぞ」

「もう遅い」


 聞こえて来た第三者の声に反応する二人。声の方向からは、先程ランを捕らえた張本人、ダイナモの姿があった。


「アイツは、ヘンテコ隊の隊長!」

「よお、ダイナモ。何か用か?」

「用など、口にする前から分かるだろう。そこの子供についてだ」


 ダイアモからの単刀直入な言葉に、レオトラはすぐに反論した。


「こいつか? こいつは今日から俺が面倒を見る。だから安心しろ」

「安心できるか。余計に不安になる」


 足を近づけるダイアモ。だがランの元に向かう前にレオトラが立ちはだかる。


「あくまでも邪魔をするつもりか、レオトラ?」

「相も変わらず硬い奴だなダイナモ。それとも、お嬢が子離れしそうだったんでキレたか?」


 レオトラの冗談半分の発言。しかしこれがダイナモにとって逆鱗だったのか、途端に彼の顔つきが険しくなった。


「お前だって知っているだろう。マリーナが、生まれつきにどんな運命を背負っているのか! あの子の力が、もし誰かの手に渡ってしまったら……」

「ああ、それなんだが……」


 ダイナモの話にレオトラが声をかけて途中で止めさせる。


「この坊主、お嬢の輸血を受けてるみたいだぞ」

「何だと!」


 ダイアモはレオトラから告げられた情報に目を丸くする。


「しかし、その子は生きている」

「どうやら適応したらしいぞ。おかげで体は爆発するようになったらしいが……まあその辺は、おいおい特訓して慣らしてきゃいいだろ」


 レオトラが軽く口にする説明。だが聞いているダイナモの方は、全くもって安心などしておらず、むしろ感情が高ぶって理うように見えた。


「ならば、尚の事自由を与える訳にはいかない! その子は、こちらで管理させてもらう!」

「なんでそうなる! 俺が見るんだから心配ないだろ」

「お前自身が子供のようなものだというのに、世話など出来るか!」


 レオトラとダイナモの二人で勝手に話が進められる中、一人取り残されていたランはその場に立ち上がり、話に介入して来た。


「オイ、お前ら!」


 二人は口を開いたランに視線を向ける。


「勝手に話を進めてんじゃねえよ。俺はレオトラ(お前)の言いなりになるつもりも、また捕まる気もねえ! 俺がどうするのかは俺が決めるんだよ!」


 ランは激情のままに二人に噛みつきにかかるが、レオトラが頭を押さえて動きを止めて来た。


「下がっとけラン坊。こいつとの話は俺がする」

「坊主呼びするな!」


 ランを抑えているままのレオトラに、ダイアモは再度指示をして来た。


「その子を渡せ。レオトラ」

「俺が預かるっつってんだろ。硬い奴だ」

「いいから渡せ! 事はお前のわがままでは済まされない。この世界の危機にもなりかねない事態なのだ!」


 途端にダイアモから放たれた威圧に、暴れていたランの全身が震えあがった。心の底から響く恐怖、一瞬にして暴れていた彼の動きが止まってしまった。

 だがレオトラはこれを間直に受けても動じない。むしろ少し動向を広げ、ダイアモと同等の威圧を同じくぶつけてみせた。


(何だこれ? 身体が動かない……ていうか、ビビってんのか? 俺が?)


 ランが自身の身体に思った事態に理解が追い付かない中、レオトラとダイアモは身体を正面に向かい合わせて睨み合った。


「話を聞く気はないか」

「ないな。俺に命令したいんなら腕っぷしで語ってこい」

「勝手な奴だ。今回ばかりは、少々強引にでもいかせてもらうぞ」


 ダイアモが足を肩幅に広げ、拳を構える。レオトラは彼の動きに笑みを受けべ、楽しそうに足を肩幅に広げた。


「やる気か? 良いぜ、お前とガチの喧嘩をするのはいつぶりだか?」


 レオトラはダイアモの綺麗な構えとは違い、足を軽く動かし形のない動作をしている。


「次警隊三番隊の隊長の実力見せてやる。よく見とけ、ラン坊」

「隊長!?」


 ランはレオトラから告げられた彼の正体に、またしても衝撃を受けることになった。

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