表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こじらせヨメに花束をーWEB小説Ver.ー  作者: 赤羽かなえ
20章
93/131

3 やってみたかったことをやる

こんな時には悠介になぐさめてほしくなる。でも、今夜はつきあいで遅くなるから夕飯もいらないよ、と朝言っていた言葉が頭の中でコロコロと転がっていた。


悠介に電話してみようか。彼なら気づけば時間を割いてくれるはず。そう思いながらスマホを取り出すと、画面に不在着信のマークがついていた。


悠介かと思ったけれど、不在着信の主は、由香里だった。慌てて電話をすると、由香里の明るい声が飛び込んできた。


『ミキちゃん、メッセージ見たよ! 結婚式するって。花の手配はもちろん任せて』


「わー、嬉しい!!」


結婚式を開くなら、絶対に叶えたかったことがある。それは、大好きな花農家の直樹の花を彼のパートナーだった由香里のアレンジしてもらって会場を飾ること。


『結婚式をやると決めたなら、まずはミキがやってみたかったことをやるって決めたら?』


結婚式をあげないか? と悠介が言った時に提案してくれたときにそう言われて、なるほどと思った。ミキにとって、結婚式をするならば、こだわりたいのはドレスよりも食事よりも、式を彩る花。店を継いだからできなかったけど、もともとウエディングのフラワーアーティストをやりたかったくらいなのだ。式場の写真を見ては、自分ならこんな花を飾りたい、と四季に応じて何パターンもデザインしていた時期もある。


自分の結婚式っていうと全くピンとこないけど、式場のデザインと考えを切り替えたらどんどんイメージが湧いてきて、勢いで由香里に連絡を入れてしまった。なんなら前日に由香里と一緒に会場づくりに参加したい。受話器の向こうでふふふと笑う声がした。


「え、なに? なんかおかしかったですか?」


笑い声を上げた由香里にミキはたずねる。


『悠介くん、さすがね。ミキちゃんのこと、よくわかってるなあ』


「え? どういうこと?」


こっちの話よ。何度聞いても笑ってはぐらかすので、ミキはあきらめた。


日程や花材などを話し終わると、電話の向こうの由香里が手帳を閉じる音がした。


『じゃあ、また。直樹の畑の様子を見ながらやっていきましょう』


電話が切れたあとも、ミキはじっとスマホのぬくもりを手に移していた。


「由香里さんが作る会場のアレンジどんなんだろ」


自然とつぶやいた自分の声が耳に入ってきた。さっきとは別人のような張りのある声だった。どうやらきちんと気持ちと声の周波数がちゃんと合ったみたい。我ながら、現金だなあ。ミキは一人なのに、顔が赤くなるのがわかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ