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こじらせヨメに花束をーWEB小説Ver.ー  作者: 赤羽かなえ
番外編
75/131

SIDEヤマシタさん1

35年も働いていると、さすがに1週間のルーティーンは、ほぼ決まってくる。


月曜日は朝一で定例会議があるから、会議室の準備で朝8時には出勤。10時からの会議に出席し、直属の役員と一週間の動きを打ち合わせる。事務処理を13時前までしてから、ランチに出る。


お局様と陰口をたたかれるようになって30年も経つと、もはや全く気にならない。どうせ、この見た目のツンとした顔つきで昔から近寄りがたいと言われている。私自身が間違ってなければいい。そういうことを言う連中は程なくしていなくなる。


昼の休憩はきっちりと1時間は取る。月曜日はランチに出た後で行きつけの花屋に寄って、会社エントランス用の花を選びに行く。それがヤマシタカズミの密かな楽しみなのだ。


商店街にある『フローリストM』は古い建物をうまく使っている。2代目オーナーもセンスがいい。大きめのガラスのショーウィンドウにくすんだ緑の扉。入り口に観葉植物を多めに配置することで森のような気持ちよさを感じる。ドアの横にある一輪挿しにその場所だけグリーン以外の小さな花が投げ入れてあってその色が目を引く。通るたびに何が挿してあるのか見るのが密かな楽しみなのである。


今日は遠くから見ると、深紅が良く目立つ。近づいていくと、枝も紅く、その先に沢山の蕾がついていた。緑の中に紅い矢が一本刺さっているようだった。ドアを開けると、ドアチャイムから沢山の音が落ちてきた。


「いらっしゃいませ、ヤマシタさん! 今日の入口の花、ローゼルなんですけど、秋って感じしません? あした、アレを使いたいんですけど、どうです?」


ミキの目線がほぼ同じになったのは何年前だろうか。赤いランドセルをカタカタならしながら店に戻ってきたころを思い出してなつかしさに目を細めた。


高校の同級生だった山田美里が離婚してから、花屋を始めた、と聞いたので、店に寄ってみると、ちょうど学校から下校してきた娘のミキとバッタリ会った。赤いランドセルがまだ体に大きい。


『こんにちは!』


当時、ミキはにっこりと笑って言うと、店の扉をあけてくれた。塗りたてのモスグリーンの扉には、大きなリースがかかっていて、美里のセンスの良さが垣間見えた。ドアが開くと、ベルがカラコロと迎えてくれた。


『わ、ヤマシタ! 寄ってくれたの?」


美里は続いてミキにお帰りという。ミキは『ただいま』と言って慣れたように奥のほうに消えていった。


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