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こじらせヨメに花束をーWEB小説Ver.ー  作者: 赤羽かなえ
番外編
68/131

SIDEヤマリコ6

どうしてサッカーの試合を見に行くことになったのかは、よく覚えていない。でも、その後起こったことは記憶に残っている。友達に誘われてみんなで試合を見に行った。そして、その時、涼が絶好調で大活躍で、クラスの女子が色めき立った。マリコ自身、涼がチームメイトと喜ぶ姿を見てかっこいいなと少しだけ思った。けれど、みんながカッコいいと騒ぐ中で同調するのも、ミーハーに思われるのが嫌だったから、あえて意識しないように抑え込んだ。


『私、最初から田中くんのこと追いかけているんだから、みんな取らないでよ!』


その当時につるんでいた女子グループの1人、優佳が騒ぐ女子たちに牽制していたのもあった。そんなこと言われたら、ますます涼のことは意識の外に置かないといけない。女子のグループの中ではじかれるということは、社会的に死ぬようなものだから。でも、ある日、マリコはその女子グループで突然、つるし上げをくらった。優佳の言葉にマリコはびっくりした。


『ヤマリコ、あんた、田中くんと何かあるの?』


『な……んで?』


試合の日からそう言われた当日までを振り返っても思い当たる節が全くなかった。むしろ敢えて涼のことを考えないと決めたから、自分の中であの試合はただの楽しいイベントで終わっていた。無意識で何かしてしまったのかな……頭の中でせわしなく自問自答をしていると、優佳がイライラしたように詰め寄った。


『田中くんが、あんたのことばかり見てるからよ!』


その時にどんな言葉で逃げ切ったかはよく覚えていない。多分、無理やり笑い飛ばしたんじゃないかと思う。マリコの様子にも怪しい所がないと思ったのだろう。それ以上詰め寄られることも、グループから追い出されるようなこともなかった。でも、ヘタしたら今後の中学生活がめちゃめちゃになるところだった。今まで以上に慎重にしなければ、特に涼とは関わりを持ってはいけない……、マリコは決意を強くしたのだった。


けれど……けれどだ。


どうして、涼はマリコのことを見ていたのだろうか、……優佳が誤解するくらいに。もしかして、優佳の勘違いじゃなかったら……。でも、ただのクラスメイトではない。サッカー部のエースの涼がマリコのことを本当に気にしているとしたら? 表立って確かめることができないだけに、マリコは再び自問自答をすることになったのだった。


いや、まさかね……。


涼と話したことなんかほとんどないし、下手したら、彼がマリコの名前を覚えているかだって怪しい。マリコはとりたてて美人でもなければ、派手なわけではない。一番幅を利かせた女子グループにはいるけれど、中心というほどでもない。……そんな自分を涼が見ているわけがない。


その時偶然、視界の先に涼がいた。距離も遠いし、見ていても不自然な角度ではない。


……目が合った。


教室の端と端にいて、動揺したのはマリコよりも涼だった。彼は不自然に目を逸らした。そして、慌てたように教室の外に出ていった。


――何なの?!


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