表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こじらせヨメに花束をーWEB小説Ver.ー  作者: 赤羽かなえ
7章
18/131

3 2人だけでやれるか試してみようと思って

ハナエの居場所が分かったのは、それからさらに1週間後、すっかり風が爽やかになって気持ちのよい日差しを感じながら店に向かって歩いているときだった。


『しばらく連絡できてなくてごめん、康史ってミキのところに来た?』


そんなメッセージが来た時に、スマホを持つ手が震えた。メッセージアプリがいつの間にかすべて既読に変わっている。すぐに電話をかけようと思ったのに、どうやっていいのかが一瞬わからなくなるくらいに慌てていた。


メッセージアプリの電話マークを押せばすぐに電話できるのに、人って焦ると全部が飛ぶんだな……。画面の受話待ちのアニメーションがなんだか意地悪に見えてついにらみつけた。しばらくすると、通話の表示がでて、「もしもし?」と小さな声が機械の向こう側から聞こえた。ミキはスマホごと抱きしめたいような衝動に駆られたけれど、画面を耳につけた。


「元気にやってるの? 体調は? 大丈夫なの? 今どこにいるの?」


聞きたいことは沢山あった。電話の向こうのハナエは照れくさそうに笑う。


『やだ、ミキ、質問が多すぎてどこから答えたらいいのかわからないじゃん』


思いのほかハナエの声には張りがあった。


「もう、心配したよ。康史くんもめっちゃ心配してたよ」


ハナエは今、会社の近くにウィークリーマンションを借りてそこに住んでいるらしい。娘の美羽は保育園を休ませて、会社の近くの一時預かりの託児所に預かってもらっているという。いつも通り簡潔で的確にしてくれたので、ミキはすぐに状況を把握することができた。でも、どうして……という言葉がどうしても出せなくて、なんと返そうかと迷っていると。ハナエが小さな声でぽつりと言う。


『2人だけでやれるのかというのをちょっと試してみようと思って』


静かに語るハナエの声に、康史が入る隙があるのだろうか。ミキは少し心配になった。


連絡が来た晩、仕事を終えた康史とキョウコが『フローリストM』に集まった。


「ハナエは“二人でやれるのか”と言っていたけど、それはやっぱり、ハナエと美羽と二人でってことだよね」


キョウコがそこまで言ってからハッと康史を見る。さすがに気遣いが足りなかったと思ったらしい。でも康史は緊張した面持ちで白く分厚い塊を取り出した。三つ折りにしているけど、枚数が多いので手を離すとすぐに開いてしまいそうだ。


「俺、ハナエに手紙書いてみたんです。読んでみてもらえませんか?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ