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遺跡(前編)

 それから土曜日はすぐにやって来た。ファティマはやたら張り切っていて、時間は何時にするかとノルンに聞かれると、早めに朝食をとってすぐ集合という事で8時と答えた。待ち合わせ場所は共立魔法大学校の正門前だ。わざわざ学校で待ち合わせしなくても、どちらかの家でいいような気もするが、どうもファティマの転移遊びは母親には内緒らしい。そうなるとノルンも母親に言うわけにもいかない。両者の母親はパートナーを解消した割には、よく街にでてはランチなどを共にしていたからだ。

 

 転移するところを人に見られるとまずいので、二人は正門で落ち合ったあと、人気のない図書館裏に移動する。土曜日の朝なので、わざわざ移動するまでもなく正門を入ってからそこに行くまでの間、衛兵以外は誰ともすれ違うことは無かった。


「ノルン、偉い大荷物だな」

「お母さんにはキャンプに行くって言って出てきたからね。着替え以外にもテントや寝袋、食料なんかも持ってきてるよ。ファティマは毎週のように土日出かける事は、お母さんにはなんて言ってるの?」

「うちは放任主義だから。外泊ぐらいで何も言ったりしないぞ。何たって魔王なんだから」


 ファティマの分かったような分からないような話にノルンはとりあえず納得した。二人の母親は本当に性格は正反対と言ってもよかった。ファティマの母親…元魔王…いや、次の魔王はまだ誰も名乗りをあげていないので、現魔王と言ってもいいのかもしれない…のティアマトは細かいことは気にしない性格で、することが無ければ昼間っから酒を飲んでいる様な女性だ。一方ノルンの母親ゼノビアは几帳面で、とにかく真面目な女性だ。ノルンも周囲から同様の評価を受ける事があるが、ゼノビアに比べれば可愛いものだと自分では思っている。今回も外で一泊するという話をしたら、根掘り葉掘り聞かれた。しかしそうなることは分かっていたので、偽装工作は完璧である。背中のザックは80ℓサイズだった。


「別に異世界に行くわけじゃあるまいし、そんなに何もっていくんだか…あ、キャンプ道具は色々あった方が楽しそうではあるな」そう言うファティマは小さめのナップザックを一つ背負っているだけだ。しかし忘れてはいけない。彼女は得意の空間魔法であのナップザックの中にはノルンのザックの数千倍、いや数万倍は収納することができるのだ。転移する前にノルンの荷物もこっちに入れようかとファティマに言われたが、何となく自分の荷物は自分で背負うべきじゃないかと、良く分からない登山家のような気持ちで、ノルンはそれを断った。


「あ、そうだ忘れてた」そう言ってノルンは80ℓのザックから二つの布の塊を出して片方をファティマに渡した。

「フード付きのポンチョだってさ。魔法で防水してあって、風通しは魔力で調整できるから雨対策に持って行けって」ノルンにそう言われてファティマは、そのポンチョを広げて頭から被り袖を通してみた。


「この布いい感じにやれ感が出ていていいな。魔力通したら本当に風通しが良いし着てないみたいだ。うん。これいいよ。雨は降ってないけど最初から着ていこう。冒険感がマシマシだ」ファティマの着こなしがいい感じに見えたので、ノルンも同じように着用した。


「よし。準備OK。まぁとにかく行って見よう」そう言ってからファティマはブツブツと呪文を唱え始める。18歳にして上級魔法でも無詠唱で発動できる彼女ではあるが、流石に転移魔法ともなれば詠唱は必要らしい。特に今回は二人で転移するので消費する魔力も大きい。ノルンは前に一度転移に付き合わされたことがあるので、二人でも転移が可能であることは分かっている。但しこの容量のザックも一緒で大丈夫なのかという一抹の不安はあった。


「トランスレイション!」ファティマが最後にそう叫ぶと、二人の体は縦線が列を成した様な状態になりその場から消え失せた。


 次の瞬間、二人は森の中にいた。森ではあるが少々開けた広場のようなところだ。木々の切れ間からそう遠くないところに石を積み上げた様な何かが見えている。

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