その8
篠崎「・・・何だよ、その言い方?」
篠崎は小椋を睨んで、挑発する聞き方をした。でも小椋は動じずに言い返した。
小椋「だってよ、大会がないんだったら、続けたって仕様がないだろ?」
池田もこれには小椋に対して喰ってかかった。
池田「・・・てめぇ、何言ってんだ?この後も、高校に入ってもやるだろ?」
しかしそれでも小椋は表情を変えずに、更に冷めた口調で言い放った。
小椋「・・・高校でやったってこのレベルだろ?もう良いじゃん。
このままサッカーも引退して・・・。」
とこの時長野が静かに、話していた小椋の目の前に立ち塞がった。そしてジッと小椋を睨んだ。
小椋「・・・何だよ、マスクするか離れろよ。・・・うつるだろ。」
長野「・・・さっきの事、マジで言ってんのか?」
お互い怯まずにキレた口調だったので、この場が不穏な空気に包まれた。それに篠崎も池田も小椋に対して、詰め寄って来ていた。
池田「このレベルって、何だ?」
篠崎「ここでもう終わるのか、お前は?」
ここから先は、もう衝突する以外に考えられない、と思った吉田と和山が、咄嗟に間に入って四人を落ち着かせた。
吉田「ちょっ、ちょっとやめろよ、落ち着けよ。」
和山「まぁまぁ、今日はもう良いだろ?」
少し離れて別の事をしていた三國と畑も、この様子に気が付いてこの場に寄って来た。
畑「何だかよくわかんないけど、もう着替えて帰ろうぜ。」
三國「本当もうこれ以上、苛立ってもしょうがないからな。」
そして三年生たちは取り合えずみな、部室へと移動した。そこでこの原因を三國と畑は知った。
畑「・・・そうか。でもそれは、さっき聞いたばっかだから。
まだでも何か、他にあるかも知れないよな。」
長野「そうだろ?そう思うだろ?」
吉田「・・・何か良い案でもあるのかな?」
吉田に振られた畑は、思わず主将の三國に言葉を投げた。
畑「・・・ミクはどう思う?」
突然降られた三國は当然戸惑った。でも取り合えず言葉を返した。
三國「・・・う~ん、このままじゃあそうなるよな~。」
和山「・・・じゃあ本当に、これで最後か。」
その呟きを三國は聞こえて、三國は何となくの感じで、今思った事を吐露した。
三國「・・・別に、大会はないけど、でも試合ならできるんじゃない?」
それを聞いてみんなの表情が、一瞬だけポカンとなった。すると今まで何の発言もしなかった、
チームメイトで三年の大谷高志が、ここで初めて口を開いた。
大谷「・・・大会じゃない試合って、・・・例えば練習試合みたいな?」
そう言われて三國は、こう言葉を付け足した。
三國「そう。何でもいいから試合してさ、一試合でも。物足りないとは思うけど、
このまま何にもしないよりかは、良いんじゃないかって。」
その話を聞いて、畑が良いように解釈した。
畑「それだったらどこか、俺たちが勝てる学校と試合して、それを引退試合にするか?」
畑の話によって、みんなはすぐに理解が出来た。
吉田「あ、なるほどね!そうなったら全然やる気が起きるよ!」
池田「確かに。全てが中止だから、試合受けてくれるかもな!」
篠崎「何にもしないよりかはそっちの方がまだ、気持ちの整理がつく!」
和山「本当、負けて終わるより勝って終わりたいもんだ。」
すると長野が三國の傍に近づいて、三國の肩に腕を回した。そしてこう発した。
長野「良い事言うじゃねぇか!さすがキャプテンだな!」
三國は照れてハニカミながらも、冷静にこう伝えた。
三國「ま、まぁ、できるかどうかはわからんけど、一応な。」
これによって部室の雰囲気が凄く明るくなった時、また一人の発言によって、再び不穏な空気が訪れた。
小椋「・・・それ、本当にできるのか?野球部もバスケ部も、全て部活が中止なんだぜ。」
と冷めた口調で小椋は言って、さっさと着替え終わっていた。当然長野が噛みついた。