その50
小椋「・・・何だ?まだ恨んでいるのか?」
神妙な表情で小椋は言うと、長野は少しだけ口角を上げた。
長野「・・・もう良いさ、ガキの頃は。大人になったんだ、今日はその日だろ。」
それを聞いて小椋も気を緩めて答えた。
小椋「ああ、確かに。そうだな、ここから仕切り直しだ。」
すると池田が小椋に近づいてこう質問した。
池田「で、オグは今何やってんだ?わざわざここに来て?」
小椋「・・・俺はあれから京都に行って、そして料理の専門学校に行ってたんだ。
もうすぐ卒業するんだけど、就職先が叔父さんの料理屋で、実はここに店があるんだ。
その挨拶とかのついでで、今回こうして来たって訳さ。」
池田「おおっ!そうなんか!じゃあ、おーい!みんな!また再会する場所が決まったぞ!!」
と池田は大声でみんなに告げた。これを聞いて小椋はその意味がわからなかった。池田の言葉にみんなが再び集まり出した。
吉田「池ちゃん、どういう事?」
和山「再会って、場所はどこなんだ?」
池田「おい、オグは料理人として修業するそうだ。その場所がここで、叔父さんの店があるって
事だ。と言う事はその店で集まらないといけないだろ?」
それを聞いてみんなは一斉に賛同した。そしてここで小椋は理解した。
畑「おおっ!そうだな!そりゃやらんとあかん!」
三國「ちょうど良い。打って付けだな。」
富田「・・・でも別に再会って、今日でも良いんじゃねぇのか?」
吉田「ああ、本当だ。二次会って事でな。」
これには小椋も慌てて拒絶の態度をした。
小椋「ちょっと待ってくれ!さっき会ったばかりで、今日いきなりはキツいぜ!俺もまだ・・・。」
そんな小椋に篠崎が絡んできた。
篠崎「これは禊だ。あの時の詫びとして受け入れろよ。なぁ、リュウ。」
長野「当然だ。さぁ今から電話して俺たちの予約をしろ。何時にする?」
長野も調子に乗って小椋に詰め寄り、そしてみんなに会合の時間を尋ねた。
和山「そうだな、六時くらいか?」
吉田「高校の奴らにも会って、・・・七時か八時かな?」
篠崎「俺もそうなるかな。けど先にやってて良いぜ。」
矢西「俺も遅れるけど参加するぜ。」
富田「お前は来るのか?彼女も?」
畑「・・・そりゃ、・・・どう、する?」
彼女「私は友達と過ごすから、行きなよ。」
畑「じゃあ行くわ!」
池田「いや待て!せっかくだったらお友達も一緒に!」
吉田「そうだそうだ!さすが池ちゃん!気が利くねぇ。」
小椋「一体どうすんだよ!?合コンとかパーティーだったら絶対にダメだからな!」
このやり取りを静観してた三國に、長野が静かに問い掛けた。
長野「・・・お前は良いのか?」
三國「ん?何が?」
長野「あの頃の忘れ物だよ。」
長野はそう言って視線を別の方向へやった。その先には会場から出てきた、大和田美緒の姿があって、女友達と談笑していた。三國は動揺した。
三國「・・・もう良いって。さっきも言っただろ。」
長野「確認しないで諦めるのか?再スタートするなら、モヤモヤは無い方が良いぜ。」
三國「・・・・・・。」
長野「・・・もう会えないかも知れないぞ。ダメ元でも行くなら今だな。」
長野はあえて三國を見ずに淡々と言った。そして三國は決心した。
三國「・・・わかった。・・・じゃあまずは確認だ。・・・行くか?」
長野「ああ、今しかできない事だからな。」
そう言って二人はみんなを置いて、口説きに向かうのであった。
[完]