その43
三國「・・・もう出るのか?」
長野「ああ、そうした方が良いだろ。」
富田「・・・集まって何するんだ?飯か?」
長野「この後どうするかは知らんが、・・・でも写真は撮ってないだろ?集合しての。」
富田「ああ、確かにな。わかった。」
そう言って長野と富田は立ち上がった。まだステージでは大和田がダンスをしている途中だった。三國は二人の後に続いて席を立った。そして三人は会場を出た。
三國『・・・いつかまたどこかで・・・。』
そう心で呟いて、三國は大和田への想いを封じた。
富田「・・・なぁ、そう言えば、・・・あの時の顧問って誰だった?」
会場を出た後、急に富田が二人に質問した。
長野「・・・ええっと、・・・何だっけ?・・・顔は出てくるんだけど・・・。」
と言って長野は三國を見た。三國は淡々と答えた。
三國「岸だったよ。・・・フルネームは言えないけど。」
長野「あ、そうだった、そうそう。・・・でもさ、俺たちの代で居なくなったろ?」
三國「ああ。・・・転勤したんだ、別の中学に・・・。」
富田「・・・ふ~ん。まぁそんなに思い入れはないけどな。」
三國「そりゃそうだ。お前にとっては一か月ちょっとだもんな。」
長野「・・・だったら卓球部の方はどうなんだよ?」
富田「・・・・・・そっちもそんなに思い出はない。」
長野「薄情だな。だから友達がいねぇんだよ。」
富田「・・・でもお前たちがいるじゃん。」
長野「じゃあ有難く思えよ、今後ずっとな。」
富田「・・・・・・それはない。」
長野「何だと?」
三國「・・・あ、誰かいる。畑か?」
式前に集まっていた場所には、すでに二人が到着していた。でも何か違った。二人のどちらも畑ではない。違う誰かだ。
長野「・・・ん?・・・違うぞ、誰だ?」
富田「・・・二人とも誰だ?」
三人とも場所に近づくにつれて、段々と二人の正体がわかった。
長野「・・・一人はヨッシーだな。」
そしてもう一人。三國はハッと思い出した。
三國「・・・あ!あれは大里?じゃないか!?」
長野も富田もその名前を聞いて、ふっと記憶が蘇った。
富田「・・・あ、ダリーね!そうだそうだ!」
長野「いたいた!めちゃくちゃ足が速かったよな!」
そして三人はその場所へと着いた。そこにいた二人は間違いなく、吉田と大里であった。
長野「よう!!ダリー!!久しぶりだな!!」
富田「ヨッシーも久しぶり!」
吉田「さっき会ったじゃねぇか!?そう言えばお前、
あの時俺のジュース、黙って勝手に飲んだろ!?」
富田「さっきも聞いたぜ、それ!いつまで言うんだ、いい加減にしろ!」
吉田「いいや、ずっと覚えておくし、お前に会う度言ってやるから。」
富田「・・・ったく、成人のやる事じゃねぇぞ!」
大里「・・・意外としつこい男だったんだな、お前。」
長野「・・・確かにヨッシーのマークはしつこかったよ。まさか性格からとはね。」
そんな思い出話をしている四人を見ながら、三國は微笑みながらも、それとは違う事を思い出していた。それは志田原中サッカー部の顧問だった岸についてだった。