その41
和山「OK!任せろっ!!」
ボールの落ちてくる地点に丁度、オーバーラップしていた和山が声を上げた。
三國「こっちだっ!!こっちっ!!」
そして和山はボールをトラップした後、声をかけた三國にすかさず渡した。三國はボールを持ってペナルティエリア内に入った。もちろん喜多ヶ丘中の選手たちが、その前を立ち塞がった。
長野「出せっ!!こっちだっ!!」
すると三國は長野にパスをしようとして、それはフェイントで、その行為の瞬間一瞬だけ、キタ中の選手たちが引っ掛かって、三國の前に少しの隙ができた。それを三國は気づいて突っ走って、壁を抜ける事ができた。
和山「よしっ!!」
富田「いいぞぉ!!行けっ!!」
キタ中のゴールまで二十メートルくらいに迫った。ゴールへのシュートコースも見えた。
畑「ミクっ!!時間がないっ!!」
長野「もういいっ!!打てっ!!」
志田原中の選手たち「打てっ!!!!」
志田原中の選手たちの叫び声を感じて、三國はシュートを放った。そのシュートは絶妙なコースを飛んで、ゴールキーパーが反応しても届かない、ゴール内の斜め上の隅へと突き刺さった。
志田原中の選手たち「よっしゃあーーっ!!!!」
志田原中の選手たちは喜びを爆発させた。そして三國の下に集まった。しかし喜多ヶ丘中の選手たちや大会関係者たちは、みな無言で主審の方を見た。
主審「ピピピピピーーーッ!!!ノーゴールっ!!」
と大きく声を発して、両手を上に上げて交差した。
長野「・・・えっ!?」
富田「・・・はぁ?」
志田原中の選手たち「・・・どうして!?・・・どういう事!?」
実は三國がフェイントをしてゴール前に切り込んだ時に、主審は試合終了のホイッスルを鳴らしていた。しかし志田原中の選手たちが、三國に向かって叫んだ声によって、ホイッスルがかき消されたようで、三國は気づかずにシュートをしたのであった。逆に喜多ヶ丘中の選手たちはホイッスルに気づいて、プレイを止めた選手もいたのだ。
三國「・・・・・・。」
畑「・・・・・・。」
志田原中の選手たち「・・・・・・。」
この主審の説明を聞いて、三國たちは唖然・呆然となった。
岸「・・・・・・。」
この様子をエリア外から見ていた岸も、何とも言えない無念の表情をした。こうして志田原中サッカー部、三年生たちの活動が幕を閉じたのであった。