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その4

 刀根市市民会館は四階建てで、イベントやライブコンサートにも使える、立派なホールがある。そこで成人式が行われる。ホールは二階と三階の仕切りがなく、その天井をなくした構造になっている。舞台があって、そこを全ての観客が見る事ができるように、なだらかな段差で一定の間隔にて、座席が設けられている。収容人数は約二千人だが、今回の、今年度の刀根市の成人の数は一千人を下回っているし、実際に式に来ていない者たちもいる。それでも三國たちを含めて、なかなかの人数が来ていた。


富田「・・・なぁ、どこに座る?」

三國「どこでもいいじゃん。特に指定されてないだろ?」


 二人がこう言うのも、長野が先頭になって進んでいるからだ。


長野「・・・別にいいんだけど、やっぱり、・・・より広く見える所がいいだろ?」


 三人は三階から会場に入って、このホールでいう所の、二階席の場所を物色していた。


長野「・・・あ、ここだ。ここにしょう。」


 長野が選んだ席は舞台を正面から見て、一番左端の一番前の席であった。


長野「ここだと周りが広く見えるし、そんな目立つ事もないだろ。」


 と自信を持って二人に告げると、三國はこう言い返した。


三國「・・・一階だけはな。この後ろは全くだぜ?」

長野「二階席から目立とうとする奴なんていないだろ?ハプニングなら、一階に決まってる。」

富田「・・・ハプニングって何だよ?乱闘乱入か?」


 そう言われて長野は無言になったが、表情から察するに図星であった。


三國「ないない、そんな事。ニュースとかである、他県でのあんな事、ある訳ないだろ。」


 三國は呆れて長野を否定した。


長野「・・・そうか?・・・そうなのかなぁ?」

三國「・・・期待しても、ないと思うぜ。」


 長野が少し落胆した。三國はそんな長野にとどめを刺した。


富田「まぁでも、この座席はいいんじゃないか?本当一階がよく見える。」


 もうすでに富田が席に座っていた。それを見て長野と三國も座った。三人横並びで、富田・長野・三國の順に。三人とも周りをキョロキョロしたり、スマホを見たり弄ったり、友人の仲ではないが多少は話した事がある、そんな知人レベルの同級生を見つけては、そいつと絡んだ昔の事を、本人抜きで話したりして、時間を過ごしていた。そしてようやく式が始まった。



 式に相応しいそれなりの曲が流れて、成人を迎える者たちの中から選ばれた、男女一人一人が舞台に現れて、この成人式の進行を務めるようだ。


富田「・・・そもそもどうやって選ばれたんだろう?」

長野「・・・さぁな。」

三國「・・・お前、したかったのか?」

富田「・・・前向きには、考えたかも知れない。」

長野「できないって。お前に任せるとめちゃくちゃになるからな。」

三國「そうそう。高一の時の、あのレクは酷かったもんな。」

富田「・・・そんな事忘れた。」


 次の舞台には刀根市の市長が出てきた。何となく挨拶や祝辞が長くなりそうだ。


長野「・・・眠たくなるな。」

三國「・・・今に始まった事じゃないだろ?」

富田「・・・俺は断言するよ、寝ると言う事を。」

長野「・・・俺は違う。寝るんじゃない。寝かしつけられる、だ。」

三國「・・・意味は同じだ。」

富田「となると、眠らされるって事だな。」

三國「・・・どうでもいいよ。」


やはり危惧した感じで、十五分もの時間が流れた。そして案の定、長野と富田は眠りについた。


三國「・・・・・・。」


 三國は寝てはいなかったが、静かにすうっと立ち上がり席を離れた。会場を出てトイレへと向かったのである。

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