その37
5対0。とうとう後半でも1点を失ってしまった。高藤は立ち上がって、近づいて来た三國に謝った。その表情はただただ無念の泣き顔だった。
高藤「・・・ごめん、・・・ごめんなさい。・・・本当に、本当にもう・・・。」
それを見て三國は優しく微笑んだ。
三國「・・・何で謝るんだよ。・・・良かったよ、よく止めたよ。・・・スゲェな。」
それを聞いて高藤はびっくりした。
畑「・・・良くやった、マジでスゲェな。・・・ありがとうな。」
周りを見ると三國の他に、仲間たちが何人か集まっていた。
和山「ああ。・・・お前の全て見せてもらったよ。」
吉田「ありゃ仕方がねぇ。本当ナイスプレーだ!」
大里「マジでよく止めたよ。泣く事ねぇぞ!」
みんなの言葉を聞いて高藤は、涙を拭いて平常心を取り戻せた。
高藤「・・・ありがとう。・・・わかった。」
遠くから池田の声が聞こえてきた。
池田「お~い!時間ねぇぞ!!」
後半の残り時間が十分を切っていた。
畑「・・・ミク、オフェンス行ってくれ。」
三國「・・・そうか?・・・わかった。」
三國がセンターサークルの所へ行くと、待っていた池田からこう言われた。
池田「・・・どうする?」
三國「・・・さて、・・・どうしようか?」
逆に池田に聞き返した。池田も再び聞き返した。
池田「?・・・どうするんだよ?」
三國「・・・とうとう取られたからな。・・・さて、どうするかだ。」
そう言った三國の様子が、マジで身体が疲労困憊しているのが池田にはわかった。
池田「・・・キツいのはわかってるけど、・・・どうするも何も、・・・本当に?」
そう言われて三國はふと周りを見渡した。やはり志田原中の選手たちの表情や意気込み、モチベーションが更に落ちているのが見えた。その上矢西がレッドカードで退場になってしまったから、志田原中は十人で戦う羽目になっていた。
富田「おいっ!!何やってんだ!!早くしねぇと終わっちまうぞ!!もう終わりかぁ!!?」
この富田の檄にも、誰も反応しなくなっていた。
三國「・・・参ったな。ノープランだ。・・・本当どうしたらいい?」
池田「ど、どうしたらいいって、・・・どうするよ?」
サークル内で二人が不動の状態だったので、主審が始めるように促して来た時、二人の後方から大きな声が聞こえてきた。その声は高藤だった。