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36/50

その36

矢西「・・・ごめん。・・・つい、・・・つい、どうしても、・・・本当にもう・・・。」


 と泣き顔になりながら矢西は謝罪した。


三國「・・・いいよ、仕方がない。・・・気にすんなよ。」

和山「・・・そうさ、誰だってする事あるんだから。・・・本当に感謝するよ。」


 二人の言葉を聞いて、更に表情を崩しながら、矢西はグランドを去って行った。この間着々と喜多ヶ丘中は、PKの準備をしていた。そして三國はキーパーの高藤の所に行った。


三國「・・・どう?自信はあるか?」


 今までのディフェンス陣の必死のプレイを見ていたから、この展開になった時から高藤は、その重責と緊張が表情に表れて、顔面蒼白になっていた。


高藤「・・・いや、全然自信がない。悪いけど無理だ。・・・もう先に謝っとく、すまん。」


 その口調ですら声が震えて、高藤は立ってるだけ精一杯だった。その状態を見て聞いて、三國はふと笑顔で高藤にこう伝えた。


三國「・・・やる前から謝んなよ。まだ始まってもないし。・・・それに、そもそも四点差だから

   この一点で左右する事もないんだからよ。」


 それを聞いて高藤は少し驚いた。と同時に心にあった緊張と動揺が、すうっと消えて行った。


高藤「・・・え!?・・・だって、・・・だって、この試合は・・・?」

三國「あ、聞いてたの?・・・確かに別物としてたけど、・・・だったらまだ、まだ諦めるなよ。

   ・・・お前の全力を、ここで見せてくれ。・・・部は違うけど、今までやって来たって、

   その底力をよ。・・・ここしかないと思うから、出番は。」


 そう言って三國は高藤から離れようとした時、高藤は声を上げて即答した。


高藤「ああ、わかった!やってやる!・・・見てろよ!俺の全てを出すから、見ててくれ!!」


 三國にはもちろん、他の志田原中の選手たちにも、そして喜多ヶ丘中の選手たちにも聞こえた。


三國「・・・ああ、頼むぜ!!・・・見てるからな!!」


 と三國は笑顔で返答した。すると他の仲間たちからも、言葉が返って来た。


畑「ああ!頑張ってくれ!!」

吉田「期待するからな!!」

篠崎「・・・ダメ元だけど、見せてみろよ!」


 PKの準備が整って、喜多ヶ丘中の選手がボールの前に立ち、審判はホイッスルを鳴り響かせた。この時一瞬だけグランド内、会場内も静寂に包まれた。そしてこの後キタ中の選手が、ボールを蹴った音が大きくこだました。


≪パーーーァン!!!≫


すると高藤は身体を大きく広げて、ボールの進行方向に向かって横っ飛びをした。その方向は間違いなくボールの飛ぶコースで、タイミングもぴったり一致していた。ただボールを捕らえる事はできなかったが、高藤の腕に当たって結果、ゴールに入らずに防ぐ事ができた。


志田原中の選手たち「おおおおおおーーーっ!!!!」


 しかし腕に当たって弾かれたボールは、ゴール前へと転がってしまった。それを高藤は確保する事ができなかった。更に高藤の超ファインプレーに見とれていた志田原中の選手たちは、その状況に対応する事ができなかった。この時そのボールに素早く対応したのが、先程PKでボールを蹴ったキタ中の選手だった。


畑「あっ!!しまっ・・・!!」

三國「急げ!!ボールを・・・!!」


 その言葉を発したがもう遅かった。そのキタ中の選手は、高藤が倒れている状態の無人のゴールへと、容赦なくシュートを打った。


 

   

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