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35/50

その35

 三國の加入によって、志田原中の守りは前半よりも強固になり、何度も点を取られそうな場面もあったが、かろうじて防げていた。しかしその反面、オフェンスの機能が低下してしまって、その分ボールを喜多ヶ丘中に奪われて、その為ディフェンスの時間が多くなっていた。時間も四十分を過ぎて、三國たちの疲労は限界に達していた。


三國「はぁはぁはぁ、・・・あと、あと何分だ?」

和山「・・・はぁはぁはぁ、・・・あと、・・・五分くらい、・・・でも、アディションが・・・。」

三國「・・・そうか、・・・ああ、もうこうなったら、・・・とにかく、0のままで!」

和山「・・・ああ、もちろんだ!」


 本来ならば三國が攻撃の起点として、試合を組み立てる役割なのだが、こうして後半ずっと守りに徹しているから、いざ志田原中の攻撃になっても、すぐにボールを取られてカウンターをくらっている、後半の状況はほぼそんな感じであった。


篠崎「何してんだよ!?ちゃんとしろ!!」

富田「わかってる!!仕方がないだろ!!」

畑「言い争うなよ!!俺に来い!!」

富田「ほら!!頼むぞ!!」

畑「あっ!!もうっ!!・・・池ちゃん!リュウに渡せ!!」

池田「わかった!リュウ!!」

長野「あっ!!トミ!!何でここに!?」

畑「おぃ!邪魔!!」

富田「あっ!!しまった!!」

篠崎「・・・ああ、また取られやがった!!クソッ!!」


三國「戻れ!!戻れ!!死守だ!!死守!!」

吉田「・・・はぁはぁ、そっち頼む!」

矢西「・・・はぁはぁはぁ、・・・わかった。」

三國「・・・お、おいっ!やり過ぎるなよ!・・・ちょっ、おいっ!」

矢西「・・・う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 矢西はもう反則覚悟で、ボールを持っている喜多ヶ丘中の選手に突進した。それに気づいた喜多ヶ丘中の選手は、ギリギリのところでボールを仲間にパスした。がしかし矢西は疲労で行動を止める事ができず、キタ中の選手もかわせず間に合わず、まともに矢西の突進を受けてしまった。そして二人とも互いに吹っ飛んでグランドに倒れてしまった。


審判「ピピピピピーーーッ!!!!」


 当然審判がホイッスルを吹きながら、矢西とその選手の所にやって来た。すかさず審判は矢西に向けてポケットからカードを取り出し、大きく腕を上げて掲げて見せた。それはレッドカード。一発退場の意味である。


篠崎「・・・おいおいおい、・・・。」

長野「・・・マジかよ。」

三國「・・・・・・。」

畑「・・・何てこった・・・。」


 ここにいる誰もがそれを見て、一瞬だけ静まり返った。しかし志田原中の者たちはそれを含めて、心や精神に大きな動揺が走った。ここで矢西がいなくなって、志田原中は十人で戦わなければならなくなった。更には反則をした場所がペナルティエリア内だったので、喜多ヶ丘中にペナルティキックが与えられたからであった。


畑「・・・今までの、・・・アレが・・・。」


 と言って畑は自然とその場にしゃがみ込んだ。また他の志田原中の選手たちも、何とか繋いでいた気持ちの糸が、ぷっつりと切れたような思いに浸って、ただ呆然としていた。


篠崎「・・・五点かよ。」


 と篠崎がポツリと呟いた。すると長野が静かに近づいて来た。


長野「・・・まだ決まってねぇだろ。」


 と低く思い口調で篠崎に言い返した。


篠崎「・・・けどよ、・・・もうわかってるだろ。」


 確かに長野も理解していた。だからそれ以上は言えずに、ゴール前の様子を見つめていた。

 

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