その34
三國「・・・とにかく助かったぜ、ありがとう。トミは前線だ、走ってくれ!」
それを聞いて富田は何故か表情が綻んだ。
富田「・・・って事は、フォワードって事か?よし、わかった!」
と言って富田は、キタ中のゴール前へと向かった。
畑「何?どういう事だ、えっ!?」
怪訝な表情をした畑に対して、三國は後半戦への決意を固めた。
三國「・・・俺がディフェンスに回る。とにかくこれ以上は点は取らせん。
後半だけは0点で凌ぐぞ!」
そう言った三國の眼つきが本気モードだったので、畑は反論できなかった。
畑「・・・わかった。」
再び喜多ヶ丘中のボールから始まったが、この攻撃を志田原中は何とか防ぐ事ができた。一旦ボールを、ゴールキーパーである高藤に渡して、志田原中はもう一度陣営を立て直した。
畑「高藤!こっちだこっち!!」
高藤からボールを受けた畑は、次に矢西にボールを渡した。すると矢西はすぐにボールを三國にパスした。そして三國は十分相手を引き付けた後、前方にいる池田へと蹴り入れた。
三國「池ちゃん!シノも!メイク頼む!!」
ボールを受けた池田は了解した。
池田「OK!シノ行くぞ!」
篠崎「・・・マジかよ、本当諦め悪いよな・・・。」
そう言いつつも篠崎は池田の後に続いた。そしてディフェンス陣地に残っている三國を見て、和山と吉田が近づき尋ねた。
吉田「・・・行かなくていいのか?」
三國「ああ。よくよく考えたらディフェンスが優先だ。前半はオフェンスに偏りすぎたから。
こっちで必死さを見せる事で、多分向こうのモチベーも上がるだろう。」
和山「・・・でも、差は埋まらないぜ?」
三國「・・・考え方を変えてみた。後半とは思わずに二回目の試合としてやる。
だからこの試合だけは絶対に点は取らせん。これでまた点を取られてみろ、
それこそもうお終いだ。この試合の意味はとにかく守る、守り切る事。
それが今までサッカーをやって来た証として、俺は終えたい。」
と三國は力強く熱弁した。いつの間にか矢西も加わって、そして少し前の方にいた長野にも、この三國の真意が聞こえていた。
長野「・・・そういう事か。・・・じゃあ、そうするか。」
と言って長野はゴール前へと走って行った。
三國「・・・そういう事で、とにかく・・・。」
と言いかけた所で三人も、笑顔で決意を固めた。
和山「・・・じゃあもう一回踏ん張るか。」
吉田「・・・だよな。・・・矢西、できるか?」
矢西「・・・ああ、せっかく入部したのにこれじゃあ、入った意味がないからな。」
それを聞いて三國も笑顔で感謝した。
三國「・・・よし、ここからが本番だ。何とか凌ぐぞ!」