その30
篠崎「慎重に!慎重にな!」
長野「こっちだこっち!こっちにボール!!」
吉田「まだまだ!焦るな!」
こうやって声を出し合い、時間をたっぷりと使って志田原中は、喜多ヶ丘中のエリア内で攻撃のチャンスを伺っていた。しかしどうしても一ヶ月間の急造チームななだけに、そのパスワークの乱れを突いて喜多ヶ丘中にボールを奪われた。
富田「あちゃぁ!!ディフェンス!!ディフェンス!!」
三國「ハリアップ!!戻れ戻れ!!」
畑「ダッシュ!!守ってくれ!!」
その掛け声叫びも虚しく、正確なパス回しとドリブルと、連係プレーによって喜多ヶ丘中に点が追加された。まだ前半、始まってまだ十五分の時点で三点取られてしまった。
富田「・・・3点、差。・・・卓球だったら何てことないんだけどな。」
そう言った富田の見える視界には、疲れ切った志田原中の選手たちであった。その内の何人かは、もうすでにグロッキー姿で、無言でとぼとぼと動いていた。
岸「おいっ!!!どうしたーっ!!!?そんなもんか、お前たちはっ!!!」
と岸が突然大声を張り上げて、選手たちに檄を飛ばした。それを聞いた志田原中の選手たちは、何とか気持ちを奮い立たせようと、果敢にゲームに集中した。
主審「・・・ピピピピーッ!!!」
そして前半が終了した。3点差から形を整えて、攻撃よりも守りを重視した結果、それでもこの時点で志田原中は、4対0という大差で負けていた。
篠崎「・・・ああ!チキショー!!何なんだよ!!これ!!?」
長野「クソッ!!クソッ!!・・・何でだ!!?」
当然控室では、志田原中の選手たちの不満が爆発していた。悔しさと歯痒さ、苛立ちと虚しさを誰もが醸し出していた。
畑「・・・全く、ヤバいな。」
池田「・・・はぁ~、マジかよ、4点差。」
和山「・・・何か、オグの言った通りだな・・・。」
と思わず漏らした和山の言葉に、すぐさま長野がブチ切れて和山に詰め寄った。
長野「何だ!!ああーっ!!何であいつの事なんか言うんだ!!?今カンケーねぇだろ!!」
和山は顔を引きつらせてとにかく誤った。この様子を見て三國が慌てて間に入った。
三國「辞めろっ!落ち着けっ!!落ち着けって!!」
次に吉田がポロッと三國に尋ねた。
吉田「・・・落ち着けるかよ、これで?どうすんだ、後半・・・?」
三國「・・・・・・。」
そう言われて三國は何も言い返せなかった。前半の負けはこれまで幾度とあったが、4対0という状況は、今まで経験した事がなかったからだ。