その3
長野「もうそろそろ始まるぜ、行くか?」
と時計を見て尋ねると、何人かの表情が急に曇った。
畑「・・・すまん。俺彼女と来てんだ。そろそろそっちに行かないと・・・。」
と畑が申し訳ない感じで発すると、富田が気を荒くして聞き返した。
富田「・・・何だと!?彼女だぁ!?」
その声のトーンに畑は無言のまま少し頭を垂れた。
三國「え?でも、今ここに?」
と戸惑いながら三國は畑に聞くと、畑はすうっと顔を上げた。
畑「まぁその、同い年で・・・、区域は違うけど、刀根市なんだ。」
三國「・・・そうか。じゃあ早く行ってやれよ。」
三國は冷静に伝えた。それを聞いて畑はこの場から去った。
富田「けっ、充実してんな。」
と富田は僻んだ。すると今度は篠崎が口を開いた。
篠崎「悪いが俺も、・・・あ、女の事じゃなくて、高校の友達がいるからよ。
そっちにも顔を出さなきゃ・・・。」
続いて吉田も三國たちに断りを入れた。
吉田「俺も他に、友達いるからさ。」
長野は不意に矢西を見た。すると矢西も無言で頷いた。この時の雰囲気が急に、先程まで明るくて賑やかだったのが、ガラッと暗く沈んでしまった。
長野「・・・だったら仕方がない。なぁ?」
と言って三國と富田を見た。二人も納得した。
三國「そしたらじゃあ、一旦解散で。終わったらまたここで会おうぜ。
もちろん畑にも伝えとく。まだ他にも来ていない奴がいるから、
もし会ったらそう言っといてくれ。」
篠崎・吉田「おう、わかった!」
長野「じゃあまたな。」
矢西「またな。」
そうしてこの場に残ったのは、三國・長野・富田の三人だった。長野がふと二人を見て尋ねた。
長野「・・・お前たちはどうなんだ?」
富田「・・・別に、高校の友達がいなかった訳じゃないけど、・・・特に、な。」
そう言って富田は三國を見た。三國も静かなトーンで伝えた。
三國「・・・俺も今ここを出てるからな。高校卒業して、その間に付き合いが薄くなったよ。
お前たちは別だけどな。」
そう言うと三國は冷笑した。それを聞いて長野も本音を言った。
長野「・・・本当そうだよな。地元を出て二年でこうなってしまうとはな。けどこうして、
お前たちに会えて良かったよ。」
長野も静かなトーンで言ったため、富田が再び気を荒くした。
富田「何だ!?変な事言いやがって、自殺する気か!?」
そう言われて長野も気を荒げて答えた。
長野「する訳ないだろ!まだ人生終わってねぇよ!」
こんなくだらないやり取りを見ていた三國は、呆れた感じで伝えた。
三國「・・・もういいから、行こうぜ。」
長野・富田「・・・ああ。」
二人とも急に冷めてしまって、本当にバカバカしかったと反省していた。