その27
長野「・・・行くぜ!!」
長野はゆっくりと動き、そして加速して、渾身の力でボールを蹴り込んだ。
部員全員「!!!!」
ボールは瞬く間に、ゴールの左上の隅へ飛び込んだ。シュート成功であった。高藤は止める事は出来なかったが、動きは素早く、ボールのそのコースに反応はしていた。これを見て一斉に、みんな声を上げた。
吉田「・・・ほぇ~、見事だな!」
池田「おおっ!!ナイス!!」
篠崎「・・・でも、なかなか良い反応じゃん!」
和山「確かに。あのシュートは取れんな。」
等々。そしてシュートした本人である、長野は一息吐いて安堵した。
長野「・・・ふう、一応メンツは保ったかな?」
するとそこに三國が近寄って来て、労をねぎらった。
三國「お疲れさん。さすが、良かったよ。」
それを聞いて長野もにっこり笑った。逆に畑は高藤の所へと向かった。この時高藤は飛んだ後、着地に失敗して倒れていた。でもすぐに立ち上がっていた。その表情は無表情だった。
畑「・・・お疲れ。あれは仕方がないよ、あのコースじゃ経験者でもムズいから。
でも、反応は良かったよ、うん。だから頼むよ、キーパーを。」
高藤「・・・ああ。俺で良いなら、キーパーやるよ。」
そう言って高藤は笑顔を見せた。そこへ長野と三國もやって来て、四人で健闘を称えた。
矢西「・・・じゃあ、俺は・・・?」
そうポツリと漏らした矢西の声を、三年の現部員たちが受け止めた。
吉田「大丈夫!ポジションはどこでもある!」
池田「でも、やっぱり、ディフェンスかな?」
篠崎「そうだな。守りにしても長身は頼りになる。」
和山「ああ、一人でも高い奴がいるだけで、それなりの圧倒感があるからな。」
矢西「じゃあそうするよ。バスケでもディフェンスは得意だから。」
と矢西は快く受け入れた。次に大里も質問した。
大里「俺はどこになる?」
吉田・池田・篠崎・和山はしばし考えた。
吉田「・・・ハンドボール部だからジャンプ力もあるよな?」
和山「背もある事だし、走りに自信があるって?」
大里「ああ、小学生の時陸上やってたんだ。」
池田「あ!確かに!小学校で速かったよな?」
篠崎「だったらサイドで走ってもらおうか。体力にも自信があるだろ?」
大里「よし!任せてくれ!」
この後三國・長野・畑・高藤の四人も合流して、先程の戦いについてしばし語り合った。やがて岸も部員たちに近寄って、こう号令をかけた。
岸「よし!練習再開!」
部員全員「はいっ!!」
再び練習が始まった。その時三國に港が寄って来た。
港「・・・あのさ、俺は、・・・どうなる?」
港はバトミントン部で体力はもちろんの事、他に瞬発力にも定評がある。高藤も矢西も大里もポジションが決定した訳で、港自身どこになるのか不安があった。
三國「そうだな、・・・俺が決める事じゃないけど、恐らくディフェンスじゃないかな?
でもダッシュとか瞬発力があるから、・・・中央のポジションかな?」
三國は悩みながらそう答えると、港はスッキリした表情で微笑んだ。
港「うん、わかった!そうするよ!」
と言って港は練習を再開した。その様子を見て三國は心が和んだ。そんな時に富田が三國の前に、ひょっこりと現れた。
富田「おっ、何か今から張り切って、キャプテンやってるな?」
せっかく快い気分になっていたのに、これを聞いて三國はブルーになった。
三國「・・・トミ、お前はベンチだ。」
これには当然、富田は納得できなかった。
富田「はぁ!?何でだ!?そもそもお前が決めるのか!?その立場かよ!?」
けれども三國は淡々とした口調で告げた。
三國「・・・決めるのは先生だが、・・・推薦する権利はある。」
富田「・・・どういう意味だっ!?補欠を推薦か!!?」