表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/50

その20

 その翌日。この日の放課後からサッカー部は、三年生を交えて練習が行われる。その前の終わりのHRの時点で、畑と長野はソワソワしていた。


担任「はい、これで今日の授業は終わりです!」


 この後この日の日直が号令をかけて、終礼を告げた。次の瞬間長野と畑は、早々に教室から飛び出して行った。


男子生徒E「・・・何であんなに急いでんだ?」

男子生徒F「知らねぇのか?サッカー部は試合があるんだとよ。」

男子生徒E「あ、そうなの?」

女子生徒M「何か十月くらいにあるそうよ。」

女子生徒B「何もなく引退だったから、すごく嬉しいのよ、きっと。」

男子生徒E「へぇ~、こんな時によくやるよなぁ。」


 長野と畑の教室は四階にあった。廊下を走る事は厳禁だが、二人は早歩きで階段に向かった。周りの生徒たちはすでにHRを終えて、ほとんどが帰宅する状況だった。


 長野が階段を先に降りて三階に着き、この階段の右手側にある、廊下の様子をふと見た。するとその近くで三國が立っていた。この時も三國の表情は浮かない感じであった。それを見て長野は思わず立ち止った。


畑「ん?どうした?」


 長野の後にいた畑が、長野の立ち止りを不思議に思った。


長野「あ、あれ・・・。」


 長野は首で促した。それを見て畑も長野と同じ方向を見た。


畑「・・・あれ?ミクじゃん。」


 この時二人が見た光景は、三國が浮かない表情だった事ともう一人、同級生らしき女子生徒が、周りの喧騒の中、話してる光景だった。三國の教室は三階にあった。


美緒「ごめんね。約束したのに行けなくて。でも最後なんだから頑張ってよ!応援してるから!」

三國「うん、ありがとう。こっちも頑張って絶対勝つから。」

美緒「それじゃあ練習行ってらっしゃい。」


 美緒は笑顔で三國を励ますと、一人爽やかに去って行った。三國はそれを切なく寂しく見つめた後、振り返って階段がある方向へと身体を向けた。


三國「!!!」


 この時三國が見た状況は、長野と畑が階段の所から、自分をニヤけた視線で見ていた様子だった。三國は渋々階段の方へと向かった。うつむきながら、そして顔を赤らめながら。


長野「なるほど、そういう事か・・・。」

畑「あははは、まぁ、仕方ないもんな。無観客だからな。」


 と二人はニヤけたまま三國を慰めた。すると三國は少し苛立った感じで言った。


三國「・・・大和田先輩の妹さんだ。二人で来る予定だったんだ。勘違いするな。」

長野「へぇ~、そうだったのか。でもあの子吹奏楽部だったよな。野球部じゃねぇのか?」

畑「そうだな。うちと野球部はほぼ一緒の日程だったけど、わざわざこっちに来るのは・・・?」


 長野と畑は揃って三國を問い詰めた。でも三國は否定した。


三國「兄貴がサッカー部なんだから、その付き添いは当然だろ。・・・もう行くぞ!」


 そう言って三國は二人を置いて、一人階段を降り出した。


畑「ん?ワヤンはどうした?」

三國「先に行ってる!」


 やがて長野も畑も、三國の後に続いた。


長野「・・・何でワヤンもいないんだ?お前一人でって事は、正しくそうだったって事じゃん。」

三國「うるさい!もういいんだ!。」


 長野はからかい三國は苛立ち、畑は二人を治めようとした。


畑「・・・もう止せよ。練習に集中しようぜ。」


 長野は畑に向けて、こう言い返した。


長野「だって一人だけ青春してるってズルいじゃん。俺だって憧れてんだぜ。」

畑「まぁまぁ、別に彼女じゃないんだろ?」


 長野の発言に呆れながらも畑は、三國に問い掛けた。すると三國は無言だったが、駆け足で一階へと着き、校舎を出て行った。


長野「けっ、いい気なもんだ、畜生!」


 そう言って長野もスピードを上げて、三國の後を追った。一人遅れた畑は、二人の様子を見て呟いた。


畑「・・・せっかく試合があるんだから、これも青春じゃないのか。」


 そして畑も足早に階段を降りた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ