表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/50

その10

長野「・・・おい、どうした?」


 その声に反応して、三國は上を見上げた。二十歳になった長野が、突っ立って見下ろしていた。


三國「・・・あ、ああ。」


 この時に三國は今現在に返った。そして三國は立ち上がって、長野を通した。


長野「・・・何だよ?またあの女の事でも?」


 席に座った時にそう発した長野に、三國は素っ気なく返答した。


三國「・・・違う。・・・いやに遅かったな?」

長野「・・・まぁな。・・・高校の時の連れに、会ってたんだ。」


 と長野も平然と返した。


三國「・・・そうか。・・・懐かしかったか?」

長野「・・・いや、そうでもない。そんなに思う程の、仲でもなかったからな。」

三國「・・・なのに?」

長野「・・・まぁ、喫煙所があそこ、一つしかないしな。」

三國「・・・そうか、わかった。」


 しばらく間が空いた。この時式典は、同じく二十歳を迎えた者たちが、何かの発表をしていた。


長野「・・・南高の奴もいたぜ。」


 三國はそれが質問なのか、単なる出来事の知らせなのか、少し苦慮した。


長野「・・・お前、南だったろ?・・・会わなかったか?」


 質問だったと察して、三國はこう答えた。


三國「・・・別に。・・・そんなどうしても会いたいって、なるか?」


 それを聞いて長野は、軽く笑って言った。


長野「ふっ、だろうな。・・・良い思い出じゃなかったからな。」

三國「・・・そこまで否定はしねぇよ。・・・ただ、普通に生きてく事はできた。」


 その答えに長野は静かに頷いた。そしてまた、しばしの間が空いた。


 中学を卒業して三國は、チームメイトと別れて、学力的にはちょっと上の高校へと進んだ。そしてそこでもサッカー部に入部した。あの中学生活の、部活生活の気持ちを胸にして。


 しかしそこでは結果として言うと、あんまり充実した部活生活を送る事が出来なかった。今の中学生の時のような、明るく楽しく、情熱が少なからずあった時と比べて。


三國「・・・お前はどうだったよ?今思って。」

長野「・・・俺も、・・・同じかな。」


 長野も長野で仲間と別れて、サッカーでのランクが高い高校へと進んだ。でもやっぱりそこは長野にとって、そんなに居心地の良いところではなかった。


三國「・・・さっき、昔の事。中学の時の頃を思い出していたんだ。」


 と三國はさり気なく伝えた。顔は舞台を見たままで。


長野「・・・だろうな。俺も時々思い出すよ。あの頃が楽しかったなって。」


 三國も長野も高校でサッカー部に入部はしたが、それぞれ対人、仲間との関係、軋轢、葛藤、また自身のレベル、成長具合、支障やその他今後、この後の進路将来とか、いろんな事があって思って、三年間続ける事が出来ずに、中途退部したのであった。

 

三國「・・・何か、俺たちもうジジィだな。」


 と三國が笑って言うと長野も笑いながら答えた。


長野「二十歳なのに、もうジジィか。全く、これからなのによ。」


 ちなみに富田はまだ寝ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ