8話 美味しいのか綿!?
カール商会の扉を開き中へ入ると、それはすごいものだった。
見渡す限りの衣服がある、さらに奥を見てみると、塩や胡椒、女性に人気がありそうなハンドクリーム、日常品なども売っていた。
「さぁ! さぁ! ヒナタさん! 男性ものはこちらです!」
カールさんに言われるがままに、ついて行くとそこにも大量の衣服が置いてあった。
「さぁヒナタさん、どんな服がお好みですか?落ち着いた物が好みですか? 爽やかな物がよろしいですか?いやヒナタさんは童顔で中性的な見た目をしてらっしゃいますので、こちらのダボッとした服はどうでしょう?」
商人魂がすごい、だが服は凄くいい、かっこいいものが多いが元の世界では少々派手に見られるかもしれない。
だがあのダボッとした服は良いな、変態の加護でこれから女性にならない可能性もない訳では無い。そういう趣味ではないよ?
違うからね?
結局、おすすめしてもらった服は全て買った。しかし命の恩人ですからと、安くしてもらいとても助かった。
「そしてこちらが小型の従魔用の衣服でございます! どうでしょう!」
素晴らしい、何もかもが素晴らしい、カワイイ系からカッコイイ系、先程買ったダボッとした服のペアルックもあった。
「ここから〜ここまで全部下さい」
この言葉を使う日が来るとは思わなかった。
今日の夜はモコのファッションショーだ!
他にも調味料なんかを買い込んだ。
一通り買い物が終わり、カールさんに食事に誘われた。
そういえば食べられる綿があるとかないとかでご馳走するとか言っていたな。
「そういえばヒナタさんは身分証をお持ちでなかったでしたよね?」
そう質問された。そういえばこの街にはいる時に提示出来なかった事を思い出した。
「はい、持っていないです」
と答えるとカールさんはアイテムボックスからカードのようなものを取り出した。
「こちらは本来、お得意様にしかお渡ししないのですが、どうぞお持ちください。こちらはカール商会で割引がつくようになるのと、多少の身分証にはなるかと」
なんでここまでしてくれるんだろう? 普通何処の馬の骨とも分からない人にここまで出来るのだろうか?
「何故ここまでしてくれるのですか?」
聞いてしまった。しかし大事な事だ、これからの付き合っていくなら尚更の事だ。
「何故ですか?・・・確かに怪しかったかもしれません。ですが命の恩人と言う以外にも理由があります。
私、人を見る目はあるんですよ、それで相手が悪人だったら私がそこまでだった、それだけです。」
僕のまっすぐ見てカールさんはそう言う。
この人なら僕も信じてしまう。この世界に来て初めて会った人がこの人で良かった。
「さて! 時間もいい頃です! これからの親睦を深めると共に一緒に食べられる綿を食べに行きましょう!」
「はい! 行きましょう!」
「にゃん!」
果たしてモコは食べれるのだろうか
カール商会の外に出ると夜だった。
しかし街は暗くなく、店は全て明るく光がついており、道にも地面に埋まったブロックのようなものから光が出ている。
その光景はまさにファンタジーといっても差し支えない程の景色であった。
あっちを見てもこっちを見ても、初めて見たものばかり売っている。
その中でも虹色の光を放つの結晶を売っている店が気になった。
「カールさん、あれはなんですか?」
「あーあれですか? あれは・・・あんまりいいものではないですよ・・・アハハ、、、」
どうやらあまり喋りたいものではないらしい。それでも何回か質問していると、アイちゃんがいる前では言えないらしい。
なるほどそっち系のやつか。しかし虹色の光でどうするんだろう。
異世界は不思議でいっぱいだ。
そんな雑談をしているうちに綿が食べられるというお店に着いた。
店の名前は読めないのでカールさんに聞いてみると、、、
【シルクジャネェード】
というらしい。
すごい店の名前だ、なんかすごい、いいと思う。
店の中へ入ると個室部屋に案内された。
個室部屋に入るとすぐに、ナイフとフォークと水そして初めて見る、ハイテクな棒が目の前に置かれた。
カールさんの方を見るとどうやらこの棒の前に手を出すと青い光が手を照らして、除菌? 殺菌のような事をしているらしかった。
モコにも水が置かれているところを見ると流石人気店のような気がする。
「食べられる綿を4つください」
カールさんがそう言うと、ウエイトレスさんはお辞儀をして下がっていった。
料理が来るまで時間があるから今度カールさんに質問してみよう。
「カールさんは結婚して何年になりますか?」
「そうですね、大体の8年くらいでしょうか。それとタメ口で大丈夫ですよ」
「なら自分もタメ口で大丈夫です! 奥さんは着いて来ないんですか?」
「妻は気分屋ですので行動が分からないんですよ…」
どうやら奥さんは気分屋で勝手にふらっとどっかに行っては帰ってくるらしい。
「アイちゃんは将来は何になりたいの?」
話を繋ぐために次はアイちゃんに話題を振ってみる。
「あ、あの、私は、商人になりたいです! お父さんを超える商人に、なりたいです!」
なんとも女の子とは思えない、強い意志を感じる言い方だ。
「そうかそうか頑張ってね」
「にゃおん」
モコからもエールが飛んでいく。
「ありがとうございます!」
カールは何故か涙目になっている。
やはり子供が自分を超えていくというのは感動するものなのだろうか。
「お待たせしました、こちら食べられる綿でございます。小皿のソースは酸味が強くなってますのでお好みでお付けください。」
とりあえず猫カラコンで食べられる事を確認する。
「モコ、食べても大丈夫だよ」
「にゃ」
そう置かれた食べられる綿は見た目はわたあめのような見た目をしているが、よく見ると繊維がびっしりとしている。
「いただきます」
「商会に幸あれ」
「にゃおん」
どうやらこちらの世界にもいただきます。という文化はあるらしいが人によって変わるらしい。
なんていうか・・・カールは正直だな。
アイちゃんはまだ考えてないらしくカールさんと同じ事を言っていた。
さぁそんなことはどうでもいい、早速食べよう。
ナイフとフォークでどう食べるのだろう?
とりあえずナイフで切ろうとするとステーキの繊維を切るように切れた。感触としてはほんとにステーキを切っている感じだ。
そのまま、切ったものを口へ運ぶと綿とは思えないほど柔らかくて、舌の上で旨みへ変わり、ジワーっと溶けていく。
うまい! めちゃくちゃうまい!
次は小皿のソースを付けてみよう。
おぉ! こっちのソースを付けたら、旨みも感じるが酸味のおかげで綿の甘みも感じるようになる!
なんだこれは! もう美味しいということしか言えない!
カールにアイちゃん、モコも満足そうに食べている。
至福のひとときであった。
食事を終え、カールさんと話しているとある事に気がついた。
「今日泊まるところがない!」
思わず口に出してしまった。
「それならいい所知ってますよ」
そう言われカールさんと共に店を後にしてついて行くと宿屋に着いた。
【蜘蛛の巣窟】
「ベッドなんかが蜘蛛の糸でできているらしいです、とても安くて人気なんですよ、ここ」
とカールから説明があった。なるほど蜘蛛か・・・まぁ異世界だからそんなこともあるか。
そしてカールもここに泊まっているらしい。
「じゃああっちのカウンターで受付できますので、私達はこれで」
「はい!ここまでありがとうございました! おやすみなさい」
カウンターで受付を済まし、部屋に行くと値段の割にはとてもいい部屋でベッドもふかふかであった。
当たり前のように、部屋の天井についている球体から灯りがついている。異世界すげぇ。
しかし何か忘れてる気がする。
「にゃおにゃおん」
そうだそうだ! モコファッションショーをしなければならなかった!
今夜は寝かせないぜ〜
次回はモコちゃんのファッションショーが始まります!
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