72話 帝国の言い分
遠くから進軍している、帝国の人たちが見える。一歩また一歩と歩みを進めてくる。
気がつくと目の前に帝国の人たちが来ていた。
そして僕たちの目の前で止まる。ざっと見て30人くらいだろうか。
先頭には他の人たちとは別に、灰色の鎧に身を包む男性が立っている。頭はスキンヘッドでちょび髭を生やし、眼帯をしている。
「そなたたちは何者だろうか! 我々はこの森を調査しに参った!」
と先頭にいる男性がこちらへ問いかけてくる。
その問いに間髪入れずにロルエさんが話す。
「私たちはあなたたちがこの森を破壊する神託を受けここにいるわ! さっさと引き返しなさい!」
帝国の人たちがざわざわと動揺のようなものをあらわにする。
「その神託は本当に正しいものだろうか! 我々帝国はこの森を害する気などサラサラない!」
「嘘をつかないで! 私たちは見たんだからね!」
「もしかしたらそれは誤解・・・」
「では何の調査をしにきたのですか?」
とモクゴクさんが問いかける。確かに本当だとしたら何の調査なんだろうか? もしかしたらそこから目的が分かるかもしれない。
「・・・・・・」
帝国の男性が俯いて黙る。
「もしかして言えないことでもしようと?」
「・・・我々は確かに調査に来たのではない・・・」
「ほら! やっぱり! 早く引き返しなさい!」
ロルエさんが引き返すよう帝国へ促す。
「でも! 聞いてくれ!」
しかし帝国の人が話を続ける。
「今・・・帝国は例を見ないほどの不作で、食料が足りない・・・だからこの森からせめて少しでも食料を確保しようと!」
『・・・』
僕は何も言えなかった、この世界の農業のレベルも知らないし、災害も知らない、本当にそういう事もあるのかもしれない。
でもそれだと神託で見た光景はおかしくはないか? 本当に食料を取りに来たのであればこの森に火を放つ必要はない。
すると何かを考え終わったかのようにモクゴクさんが口を開く。
「・・・それ嘘ですよね?」
「嘘ではない! 本当の話だ!」
「本当に食糧難だったら、まず他国へ救援を頼むんじゃないですか? 周辺諸国は救援を断るなんて事ほとんどしないはずですが」
「断られたんだ!!」
モクゴクさんの質問に帝国の人がすぐに返す、焦りからなのか、本当のことを言ってるのか。
「断られたんですか・・・」
「そうだ!」
「では何故、自分に話が来てないんでしょうか?」
「・・・え?」
「申し遅れました、自分、秋桜国で宰相をやらせてもらってます、アキアナ・モクゴクと申します」
「ッ!!」
『え?』
え? 宰相? ていうことはモクゴクさんめちゃくちゃ偉い人!?
ロルエさんも驚いている。
「さて、もう一度だけ聞きます、この森へ来た目的は?」
この時のモクゴクさんはものすごく頼もしかったが、同時に怖かった。