68話 クラエン大森林とエルフ
モコとキキョウに乗せてもらってから、3日が経過したが未だにどうやって助ければいいのかアイデアが出ていない。
そもそも映像で見たような黒い鎧に身を包んだ人達と対等に戦えるほど僕は強くないと思う。
モコとキキョウはまだしも、僕がいたら完全に足でまといになるだろうが精一杯頑張ってみよう。
せめて見た目だけでもと思い、アイテムボックスからオンバインさんに報酬として貰った刀を取り出す。
銘は確か猫刀日向と言ってたかな? 今思うと自分の名前が入った刀・・・めちゃくちゃかっこいい!!
かっこいいなと刀の刀身を眺めていると、 今走っている道が整備された道から突然砂利道に変わり、遠くに青緑に生い茂っている木が沢山生えているのが見える。恐らくあれがクラエン大森林だろう。
火の煙が上がっていないところをみると、どうやら間に合ったようだ。良かった。
「あと10分ほどでクラエン大森林に突入します。」
とサフィちゃんからアナウンスが流れる。
「ありがとう、サフィちゃん」
「そうそう、もっと褒めなさい、褒められるほど高機能になるのです、私は。」
やっぱり・・・自我あるよな? しかも高機能になるってどんなオプションがつくんだろう? ちょっと気になるな。
「サフィちゃん天才! 最高! 神!」
「ふっふ〜ん!。」
サフィちゃんの顔を見た事はないがドヤ顔をしているのが頭の中に浮かぶ。今度から暇になったら話しかけてみようかな?
「突入します。」
というサフィちゃんの声と共に森に入っていく。
森の中は、陽の光で木の葉が透けて光が綺麗な青緑色になり、見てるだけでも幻想的だ。
そして不思議と静かでモコとキキョウの走っている音すら地面に落ちている葉に吸収されているようで小さい音になっている。
しかも何かマイナスイオン? を感じるような気がするけどこれはプラシーボなのかな?
「目的地は前方300m先にあります。」
「分かった」
モコに乗りそのまま森の奥へと進んでいくと、木々がなく開けた場所に辿り着いた。
円形に花と草が生い茂っている不思議な場所。
見渡してみるとそこかしこに動物がいる。
猫、鹿や猪のような動物はもちろん、熊にオオカミまでいる。
さらに映像で見たドラネコの姿もある。映像で見た時よりも意外と大きいかも。
そして円形に開けている場所の中心には動物に囲まれている、耳の長い女性が動物と触れ合っていた。
その光景を眺めていると、女性と目が合う。
「だれ!?」
弓を片手にこちらを威嚇してくる女性。
「えっと、日向です、こっちはモコとキキョウです」
「がう」「がぉ」
「そうじゃなくて! ここになんの用!」
なんの用と言われても、なんて言えばいいのだろう?
『森の中で嘘をつかないこと』とニールちゃんの言葉を思い出す。
「えっと動物たちを助けに来ました」
女性は周りを見渡し数秒考えると口を開く。
「・・・嘘じゃないわね」
と言い、弓を下ろしてくれる。
「じゃああなたも神託を預かってきた人かしら?」
「え? 神託?」
あなたも? 神託? ということはこの人も神様にお願いされて来たのかな?
「そう神託、あの未来を変えに来たんでしょ?」
「はい! そうです!」
「じゃあこれで全員かしら? さっきもう1人いたんだけど森の形状を見てくるっていって、森の中へ入っていった奴がいるのよ」
僕達だけじゃなかったのか、とにかく一緒に守ってくれる人がいるなら心強い。
「とりあえず自己紹介するわね、私はエルフ族のロルエ・サイカラ・リンサタリ、ロルエでいいわ」
エルフ! 1度エルフ族の親戚のリンガル族のイケメンを冒険都市ロリングで見た事があったけど、生エルフだ! こちらもイケメンに負けず劣らず美人だ。
「あ、はいよろしくお願いします、ロルエさん」
「あなたはさっきヒナタって言ってたわね」
「はい! 日向と言います! そしてこっちはモコとキキョウです! モコ、キキョウ変身といてもらえる?」
「がう」「がお」
モコとキキョウが元の猫の姿になると、ロルエさんは驚いた顔をする。
「にゃん!」「みゃ」
「・・・・・・」
「ロルエさん?」
モコとキキョウに挨拶をされ、ロルエさんは身体をプルプルと震わせている。なにか失礼なことでもあっただろうか?
「か、か、か、」
「かかか?」
「可愛い〜♡ なんでそんなに可愛いの〜♡」
「え?」
「にゃ?」「・・・」
とロルエさんは先程の凛とした姿からは想像もつかないほど、モコとキキョウにデレデレになる。
モコは抱きつかれても大丈夫そうだが、キキョウの顔が凄い怖い。
もしかして集められた人って動物好きな人なのかな? じゃああと一人ももしかして・・・
「じゃあもう1人が戻ってくるまで待ちましょう」
「はい」
「モコちゃん、キキョウちゃんこっちにおいで〜」
もうデレデレで凄い、本当に最初に弓を向けてきた人なのかな?